今週の"ひらめき"視点

ジャパンディスプレイ、台中連合の傘下へ。国主導のオールジャパン戦略の限界

官民ファンドINCJ(旧産業革新機構)のもとで経営再建をはかってきたジャパンディスプレイ(JDI)は、3日、台湾中国連合3社から最大800億円規模の金融支援を受け入れることで合意した(同社のリリースでは正式合意は週明け以降になるとのこと)。JDIはあわせてINCJによるリファイナンスを実施、総額で1,100億円の資本増強を行う。これによりINCJの議決権は25%から半減、代わって台中勢が5割弱を押さえ筆頭株主となる。国の支援を背景に“オールジャパン”としての復活を期待されたJDIであるが、今後は外資企業として再建の道を歩む。

かつて世界シェアの過半を押さえ、「液晶王国」と呼ばれた日本であったが、2000年代に入ると韓国、台湾勢が台頭、一気に国際競争力を失う。2012年4月、経産省はソニー、東芝、日立の中小型液晶ディスプレイ事業の戦略的統合を主導、産業革新機構を通じて2,000億円を出資、JDIを発足させた。しかし、それ以降、国策会社であるにも関わらず、否、であるがゆえにと言うべきか、「だらしない」経営が続く。
2014年には上場を果たすが赤字体質は常態化する。産業革新機構は2016年から2017年にかけて750億円、2018年にも200億円の追加資金を投じる。しかし、結局、自主再建の道筋を自ら描くことは出来なかった。2019年3月期の業績見込みについて同社は「売上は前期実績7,175億円から10%減、営業損益は200億円超の赤字」としたうえで、「通期最終利益の黒字化は困難と判断」とコメントしている(2019年2月14日付け、3Q決算の説明資料より)。

スマートフォン向け需要の急減、米アップルの不振、有機ELへのシフトなど、競争環境に劇的な変化があったことはその通りである。とは言え、市場構造変化の見誤りと対応の遅れは、すなわち経営者の失態そのものである。要するに、責任をとらずに済む者たちが主導した「選択と集中」戦略が、変化を起こすことで競争優位を獲得した海外勢に敗北した、ということである。


今週の”ひらめき”視点 3.31 – 4.4
代表取締役社長 水越 孝