今週の"ひらめき"視点

言論の自由は危ういのか、トランプ氏訪日にみるメディアの弛緩

3日、米トランプ大統領は国賓として訪英、一連の公式行事を通じて米英の特別な関係を強調した。しかしながら、必ずしも国をあげての歓迎というわけではなさそうだ。人種差別、女性差別、環境問題におけるトランプ氏への反発は根強く、英国民の4割が“国賓待遇に反対”との調査結果も伝えられた。労働党、自由民主党の両党首は歓迎晩餐会を欠席、市民による大規模デモも連日発生した。オバマ前大統領に用意されたウェストミンスター宮殿での演説もない。

これに先立つ5月30日、独メルケル首相は米ハーバード大学の卒業式で講演、自由を阻害する保護主義と単独主義を批判したうえで、「無知と偏狭の壁を打ち破り、嘘が真実で、真実が嘘にすり替えられる世界にあって軽挙を慎み、高潔であろう」と学生たちに呼びかけ、大喝采を浴びたという。名指しこそ避けたが、批判の対象は言うまでもない。

さて、5月25日からの日本の4日間、政府の相も変わらぬ対米諂い外交には嘆息するばかりであるが、それ以上に驚かされたのはメディア、とりわけテレビの異様な高揚ぶりだ。単なるイエロージャーナリズムなのか、あるいは大衆目線を装った洗脳であるのか、いずれにせよ薄っぺらではあるが大量に投下される同調圧力に息が詰まる。

国連の “言論と表現の自由に関する特別報告者” デビッド・ケイ氏は、「日本のメディアの萎縮と独立性への懸念」を新たな報告書にまとめた。報告書は今月24日から開幕する国連人権理事会に正式に提出されるという。メディアではない。問われているのはそれを受け入れる私たちの民度そのものである。


今週の”ひらめき”視点 6.2 – 6.6
代表取締役社長 水越 孝