“業界トレンド”ちょっと一言

矢野経済研究所は、住宅、建材、住宅設備機器、建設、不動産から各種工事、リビングサービスまで、幅広く”たてもの産業”を網羅いたしております。

”たてもの産業”の様々な分野を調査研究しております矢野経済研究所 研究員による業界トレンド、市場トレンドに関するちょっと一言コラムを、隔週水曜日の更新(※)にて発信いたします。

当コラムにご意見がございましたら、お気軽にご連絡ください。ご連絡はこちら

※事情により変動する場合もございます。

・住宅設備業界で女性主体の商品開発あるも、躯体を中心とした住宅設計は男性主体、女性の参画あるも専門家として
・住宅業界にも女性視点の商品開発の動き強まる、持家から賃貸住宅への拡がりも
・高まる単身女性比率、既存賃貸住宅の満足度向上を
・強まる主婦層の発言権、増える共働き世帯、新しい家族像のニーズの把握を
・住宅市場でも女性の地位の高まり必至

・日本人特有の新築偏重主義に変化
・仲介事業の今後の方向性として非常に注目される「リフォーム仲介」
・ファイナンスの問題あり、資金調達面の不安解消提案が必要
・「仲介×リフォーム×ファイナンス」によるコンサルティング仲介の充実を
・総合不動産会社はグループシナジーを発揮することで多くの可能性が

・二世帯住宅のニーズ高まる、これから住む親・子世帯にとって快適空間設計、経済的なメリットも
・二世帯住宅はそこに住むそれぞれの家族にとっての「心の余裕」
・ただしその後の中古住宅流通(ストック市場)には向かない
・ライフスタイルの変化や売却することを視野に入れるなら、建物の可変性、メンテナンスが重要
・住宅供給業者はこれらの点を考慮した商品開発に注力必要

・世界的に市場は、単一市場化に
・労働力のコスト競争で、進む海外移転
・住宅・建材業界は内需型、影響は少ない
・今までのハウスメーカーの高い収益率は
・今後生産拠点や施工現場の付加価値向上も住宅・建材業界に期待される役割

・2011年は、スマートハウスに関する商品・技術開発が活発化、実用化に向けたスピード上昇
・エネルギー消費に関する国民の意識の高まりによりスマートハウスの訴求力が高まる
・今の段階ではHEMS、太陽光発電、蓄電池を導入し、家全体のエネルギーマネジメントを図ることが共通要件に
・家電業界や自動車業界も住宅産業界以上に活発化な技術・商品開発、ただ普及には課題も多い
・これまでの電気製品の販売や開発手法を変えるかもしれないエポックとなる可能性も

・LED照明へのニーズが高まる、要因としては省エネ性と寿命の長さ
・省エネ・節電という社会的要請に応えることができ、ランニングコスト、ランプ交換頻度を低減できるというメリット
・一方でLED技術はまだ発展途上、省エネという観点であれば、Hf型蛍光ランプやセラミックメタルハライドランプが
・省エネを追求するという点では、LED以上の省エネ効果が得られ、かつイニシャルコストも安い光源も用途によっては存在
・LED照明の採用には、照明切り替えの目的の再確認が必要

・住宅市場の一次取得者層の主役は、団塊ジュニアから下の世代「ポスト団塊ジュニア」へとシフト
・「モデラート派」若年層の価値観や消費動向は、「団塊ジュニア世代」と比べても大きな違い
・手持ちのお金が多くない中、「家」に対して求める役割
・長期優良住宅の概念、長期固定ローン、リバースモーゲージ、資産価値のある中古住宅売買などはストライクの提案
・重要なのは、どうカタチにするか、問われる住宅業界、関連業界の手腕

・東日本大震災により混乱したものの、2011年の新設住宅着工量は834千戸程度に
・ほとんどの建築資材が新設住宅着工量に影響される中で、市場規模を拡大している建築資材は
・住宅一戸当たりの使用量が増加している建築資材は
・伸びている市場においても様々な商品・企業が競合し、新規参入を検討している企業も
・新設住宅着工量が80万戸前後でも「勝ち組」になるためには市場状況の把握と実行できうる戦略検討が必要。

・高齢者向け住宅の需要増、住み替え希望者に資金を円滑に供給する仕組みが必要となる可能性。
・金融に新たな役割が期待される。
・仕組みの活用には、中古住宅を適正な価格で評価する市場の存在が不可欠。
・中古住宅市場の活性化は、高齢者の住み替えと若年層の住宅取得を後押しするためにも重要な課題。
・わが国でもセカンダリーマーケットが住宅流通の主流になることは必然の流れ。

・新築から既築分野での市場成長に向けた準備が進む。「住宅ストック産業」が新築事業を上回る日もそう遠くない。
・どこかに「住む」必要がある生活者と、次の「住まい手」が必要な住宅。ここでのアンマッチが多くの機会損失を生んでいる。
・金額を含めた様々な制約の中で、生活者にとって最適な「住宅・生活提案」ができるサービスの提供が必要。
・ライフスタイルに見合った住宅・生活をフレキシブルに選べる社会を。ほんとうの「構造改革」は、「新・住宅ストック産業」の構築。
・ハード的な要望以外にも、ソフト的な要望が増えるなど、住むという価値観の変化がすすむ。

・今後増え続ける高齢者の住居供給が極めて重要な課題に
・サービス付き高齢者住宅整備により在宅ケアへの転換推進も
・住宅メーカーも注目、新たな土地活用提案の可能性
・提供されるサービスに対する対応事業者の問題は
・今後更に高齢者住宅事業の競争激化は必至

・大手企業は海外プロジェクトの受注に注力、政府も建設業の海外展開支援を
・ただし、建設業のグローバル展開は、一般的な製造業と比較し、高いハードル
・多くは、資金や設計・施行・技術などの各種ノウハウ提供に止まる現状
・国内同様の展開を目指すなら、海外現地での現場作業員集団の組織化が必要
・中小建設事業者は特殊なスキル・ノウハウが必要か

・新たな脚光あびる「中古住宅+リノベーション」
・まだまだ馴染みは薄いが、消費者の関心は確実に高まりつつある
・住宅ストックの有効活用は今後の重要課題のひとつ
・ようやく力をいれはじめた大手ハウスメーカー、大手入り乱れてのシェア争いへ
・リノベーションにより住宅選びの新たな価値領域の創出、地域の魅力が家選びの重要なポイントに

・建物の耐震性や耐久性、構造や工法などに再び関心が
・エコ意識の高まりとともに目立つようになった”家族とのつながり”
・住宅だけでなく価値観や生活意識そのものも大きく変化
・注目されるものの一つに家庭用蓄電池、無理せず節電・省エネ、さらには電力使用のピークカット
・住まい選択に伴うリスクを減らすには、数多くの情報に触れ、納得できる材料を自ら探すことが大切

・平成23年10月21日「平成23年度第3次補正予算案」が閣議決定、住宅エコポイント制度復活に。
・「この制度の復活は大変ありがたい」と住宅大手メーカー。
・住設機器各社もエコポイント復活を受けた戦略を検討。
・住宅関連業界は、力強い追い風になると期待。
・耐震性や省エネ・創エネなどをキーワードにさらなる商品開発やリフォーム事業に拍車が。

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“業界トレンド”ちょっと一言

2012年5月16日掲載

第15回:住宅における女性目線の商品開発

主任研究員 亦野 一彰 ※1

住宅業界にも女性視点の商品開発の動きが強まっています。外観デザインや動線計画、設備・仕様の採用に女性を意識する他、女性の意見を取り入れ家事時間の短縮や家族のコミュニケーションに焦点を置いた住宅も登場しています。

さらにこのトレンドは、持家から賃貸住宅へと拡がりを見せているようです。女性の社会進出が進むとともに、家族の中での主婦の発言権や決定権が強くなり、女性の意向に沿った商品を揃えることが受注獲得につながるとの供給サイドの判断によるものです。

すでに設備業界では、キッチンや洗面化粧台については女性が主体となった開発が行われるケースが多くなっていますが、躯体を中心とした住宅設計はあくまで男性目線が主体でした。確かに、これまでにもハウスメーカーとアメニティアドバイザーなどとのコラボなど、商品開発の動きはあったものの、あくまでも専門家としての知見に基づく参画であって、必ずしも女性だけの視点に基づく開発ではなかったのが実情です。

それが、ここへきて変化の兆しが出てきました。女性の発言権が強まる中で、決定に際してご主人の意見より奥さんの意見が通ることが多くなっているようです。そのことは、主婦層への訴求ポイントがなければ受注に結びつかないことの裏返しとなっています。

賃貸住宅にも変化が出ています。人口構成に占める単身女性比率が30歳代を中心に上昇する中で、既存の賃貸住宅では女性の満足度が低いと思われます。より多くの女性の入居が、一般の入居率や入居者の満足度向上につながるといえます。

また近年、購買力に余裕のある共働き家族をターゲットにした商品が目立っています。従来の家事の省力化時短といった観点だけでなく、新しい女性のライフスタイルや価値観を提案している点が注目されます。

共働き世帯が増えている背景には、もともと、フルタイムで働く女性が増え、結婚しても働き続ける女性が多いことが大きな要因と考えられます。このため、家計の補助として妻が働くという古いイメージの共働き世帯とは異なった新しい家族像が想定されます。

これらの層は、世帯収入も平均1,000 万円近くもあり、専業主婦世帯(平均600 万円)を大きく上回っています。また、ライフスタイルや家族、生活に関する価値観やニーズも異なってきたといえるでしょう。

住宅需要が減少している中で、業界各社は、共働き家族を付加価値の高い客層のひとつと捉えて取り組んでいます。共働き家族の共通のニーズは、家事の効率化、家族とのコミュニケーション、セキュリティなどの点が考えられるでしょう。

いずれにせよ、これからの住宅市場でも女性の地位が高まるのは間違いないと思います。

2012年5月2日掲載

第14回:「中古住宅×リフォーム」市場活性化のために

研究員 西田 覚 ※7

住宅ストック重視の政策が打ち出される中、「中古住宅×リフォーム」市場が注目されています。「中古住宅×リフォーム」とは、文字どおり中古住宅を購入しリフォームを施すことにより新築同様の住まい、または購入者にとって理想的な住まいを実現するものです。

これからの住宅市場の主役を担うポスト団塊ジュニア世代(1975~1980年頃に生まれた世代)、またはさらにその下の世代は多様な価値観を持っています。「住む」という観点からは、無理な予算は立てず自分たちの好きなように生活したい・住みたいという考え方が増えており、これまでの日本人特有の新築偏重主義に変化が生じております。まさに、今後の中古住宅市場の活性化の一躍を担う層として期待されます。

そこで、このような若年層の潜在需要を掘り起こし、「中古住宅×リフォーム」市場の拡大につなげるための重要なテーマとして挙げられるのは仲介時にリフォームを提案する「リフォーム仲介」です。

物件をさばくことに力点を置く仲介会社が多い一方、最近では仲介手数料を割引または無料にして、購入者にとって浮いた費用でリフォームを提案し収益を得るというビジネスを行っている事業者が見受けられます。仲介事業の今後の方向性として非常に注目されます。

もうひとつ、重要なテーマとして挙げられるのがファイナンスの問題です。中古住宅購入と同時に数百万円単位の費用をかけてリフォームする場合、住宅ローンと別個にリフォームローンを組む(2階建てローン)必要がでてきます。中古住宅購入検討者の多くは、予算ぎりぎりのラインの場合が多く、住宅ローンと比較して金利の高いリフォームローンを組んでまでリフォームしたいと考える消費者はそれほど多くないのが現状です。

そこで、仲介時におけるリフォーム提案の充実だけでなく、たとえば中古物件をいったん買い取って購入者が希望するリフォームを行った後で売却するというセット販売の選択肢も提案することで資金調達面における不安を解消することもできます。

「中古住宅×リフォーム」市場活性化のための様々なテーマがある中で、今後の事業の方向性としては、「仲介×リフォーム×ファイナンス」によるコンサルティング仲介を充実させ、真の意味でのワンストップサービスを図ることが求められるのではないでしょうか。特に、新築、仲介、リフォーム、管理、金融等の事業会社をグループに持つ総合不動産会社はグループシナジーを発揮することで多くの可能性を秘めていると思います。

※7 西田 覚(にしだ さとる)

生活産業事業部 研究員。マンション分野を中心とした調査・研究を行っている。
主な自社企画資料としては、「マンション管理の市場展望と事業戦略」「分譲マンション市場の徹底研究」「住宅設備機器市場の展望と戦略」他。

2012年4月18日掲載

第13回:見直される二世帯住宅

主任研究員 亦野 一彰 ※1

近年になって、高齢化社会の到来(親世帯)や、若年層の雇用・所得の困難さ、共働き・子育ての問題(子世帯)などといった親・子世帯両方のニーズが合致することで、二世帯住宅への注目度とニーズが再び高まっています。

東日本大震災によっても、私たちの住まい方に影響を与えるほどの大きなインパクトがあり、家族との絆が再認識され、二世帯住宅のニーズの高まりを後押ししています。

ただ、二世帯住宅には避けて通れない宿命があります。それは、近い将来に必ず親世帯がいなくなるということです。

二世帯住宅を建築する際、これから住む親・子世帯にとって快適であるよう設計します。快適というのは、生活空間を別々に分けることで親・子世帯が適度な距離感で気兼ねなく暮らせるようにするということですが、親世帯がいなくなった場合、その際の快適さが逆にアダとなってしまうということです。

ひと口に二世帯同居といっても、一緒に住むのが娘夫婦か息子夫婦かで、考え方がまったく違うと思います。息子夫婦と住む場合は、嫌でも顔を合わせるべったり型の同居が、娘夫婦となら完全分離の独立型の二世帯住宅が比較的うまくいくと考えられます。

例えば親子でケンカした時、実の娘なら腹をたててもすぐに修復できますが、嫁と姑の場合、いったんどちらかが爆発すれば、修復が難しい。そのため、仲直りのきっかけを逸さないように、共有空間をつくり、なるべくべったり同居できる間取りが理想といえます。

2世帯同居の最大の利点は、経済的なメリットです。一般に、建築コストは2軒別々に建てた際の7~9掛けで済むし、光熱費や水道料金など生活コストも遥かに抑えられます。また、ローンや税金面でもメリットがあります。

ただ、二世帯住宅はその後の中古住宅流通(ストック市場)には向かないと思われます。住宅取得を望むのは若い世代が中心で、二世帯住宅を希望する層が少ないためで、ニーズと合致させることが難しい作業となるでしょう。

住宅購入者は、将来のライフスタイルの変化や売却することを視野に入れるなら、建物の可変性を高め、メンテナンスをしっかりと行っておくことが重要になります。したがって、住宅供給業者はこれらの点を考慮した商品開発に注力する必要があると考えられます。

いずれにしても、二世帯住宅はそこに住むそれぞれの家族にとって「心の余裕」が生まれると思います。住宅ローンも親子で返済することで軽くなり、共働きなら子どもの世話を安心して親世帯に任せながら、ローン返済に貢献できます。祖父母のほうも孫と過ごすことで元気をもらい、孫も祖父母にも育てられることでストレスや悩みが分散すると思います。

2012年4月4日掲載

第12回:住宅・建材業界の将来と課題

研究員 佐藤 聡彦 ※6

最近、10年後に食べていける職業、10年後に食べていけない職業が話題になっております。これらの問題の背景には、市場のグローバリーゼーションがあります。世界的に単一市場化するなかで、自分の職業は生き残ることができるかということです。国内経済が成熟化し成長力が停滞しているなかでおきていることのひとつは、海外との労働力といったコスト競争です。付加価値を生みにくい業界・業種では、競争力のある人材を求め海外へ移転していきます。しかし、住宅・建材業界は、内需型の産業であるため外需型の産業と比較してこのような影響にうけることは少ないでしょう。また、顧客は日本人であるため、コミュニケーションを日本語でとらなければならず、日本人以外が担うことが困難なこともあります。少子高齢化による世帯数減少による市場の変化という懸念材料はあるにせよ、10年後に食べていくのが可能であると考えます。

しかし、今後懸念されるのが、住宅・建材業界のものづくりであります。事業プロセスの付加価値を示したものに、スマイルカーブと呼ばれるものがあります。横軸に製品企画・開発から調達、製造、販売、アフターサービスといった事業プロセス、縦軸に事業の付加価値を見た場合。製品企画・開発やアフターサービスといった前と後のプロセスの付加価値が高く、製造といったプロセスの付加価値が低いため、図で示すと口のスマイルのような形を描くので、スマイルカーブと呼ばれています。今まで、ハウスメーカーが高い収益率を維持してきたのは、製品企画・開発や営業といった付加価値の高いところに資源を多く投入し、コストをかけてきたことがわかります。ハウスメーカーがリフォームなどアフターサービスを強化しているのも、付加価値が高く収益率が高い理由からです。一方で、日本のものづくりは大事という意見もありますが、現在、生産拠点や施工現場で付加価値を向上させていくのは現実的ではないのが実状です。生産拠点や施工現場の付加価値をいかにあげていくかという課題が、住宅・建材業界にとって求められているではないのでしょうか。

経営発展をしていくためには、歴史的変化に適応し、積極的に革新を試み、社会的貢献を行なっていくことが重要です。いかに、変化し高度化する顧客のニーズに応えていくかといった、問題解決能力が必要とされております。そのためには、絶えず問題発見及び仮説を構築した上で、調査をおこない、インプリケーションを提示し、解決策を提示していくことがあげられます。

最近、マーケティングリサーチの業界では、インタビュー調査などフィールドワークによる、エスノメソドロジー研究によるディスコース分析が話題となっております。以上のアプローチから、日本のものづくり再興の視点により、住宅・建材業界にとって、生産拠点や施工現場の付加価値向上について考察していくのもいかがでしょうか。

※6 佐藤 聡彦(さとう としひこ)

生活産業事業部 研究員。住宅・建材・住宅設備機器分野を担当。メーカー、流通各社の事業戦略、販売戦略他、企業の成長戦略に関する調査研究実績をもつ。
主な自社企画資料としては、「住宅メーカーの展望と戦略」「建材市場の展望と戦略」他。

2012年3月21日掲載

第11回:大手ハウスが注力する「スマートハウス」

主任研究員 亦野 一彰 ※1

2011年は、スマートハウスに関する商品・技術開発が活発化し、今住宅業界でホットに注目されています。

以前から次世代を牽引する住宅像として期待されてきましたが、実用化はまだ先の話という認識が一般的でした。しかし、東日本大震災以降、実用化に向けたスピードが上昇し、各社が次々と関連商品を市場に投入しはじめ、夢の技術から一気に住宅市場の主役へと駆け上がった感があります。福島第一原発事故に伴うエネルギー危機によって、エネルギー消費に関する国民の意識が高まり、省エネに貢献でき、万が一の場合への備えにもなるスマートハウスの訴求力が高まったということだと思います。

スマートハウスとは、IT(情報技術)を使って家庭内のエネルギー消費を最適化する住宅で、太陽電池や蓄電池などのエネルギー機器と家電や住設機器を制御し、二酸化炭素の排出を削減するものです。従来の省エネ住宅とスマートハウスの違いは、家庭のエネルギー消費を自動的に最適化するHEMSなどの技術を導入し、「賢さ」を備えていることです。

スマートハウスをめぐる技術や発売された新商品をみると、今の段階ではHEMS、太陽光発電、蓄電池を導入し、家全体のエネルギーマネジメントを図ることがスマートハウスの共通要件になりつつあるようです。

住宅業界では、大手ハウスメーカーが先行して研究開発を進めています。2011年度から、商品にHEMSや蓄電池を標準搭載した住宅商品が登場しました。これまでは太陽光発電をはじめとした「創エネ」と、躯体性能のアップや各種設備を通じた「省エネ」が住宅開発においてクローズアップされたが、今後の環境住宅は「エネルギーをいかに有効活用するか」が業界共通の課題になると思われます。

スマートハウス市場に注目しているのは住宅産業界だけではありません。家電業界や自動車業界も住宅産業界以上に活発化な技術・商品開発を進めています。

ただ、スマートハウスの普及には課題も多いようです。例えば、エネルギーを制御するHEMSと家電などを接続する規格の統一問題。経済産業省は電機や住宅、自動車など各業界の国内有力企業に呼び掛け、規格を統一する合意をようやく取り付けた段階です。

いずれにしても、スマートハウスが普及すれば、家庭やオフィスで様々な電気機器を連携させ、効率的な生活を実現する消費者が増えるでしょう。それは、これまでの電気製品の販売や開発手法を変えるかもしれないエポックとなる可能性も秘めていると思います。

2012年3月7日掲載

第10回 : 過熱するLEDブームのなかで

上級研究員 大岡 一郎 ※5

昨今の建設市場において、大きな注目を集めているものの一つに、LED照明があげられます。その需要規模は、近年の省エネ気運の高まりを追い風に急速に拡大していたのですが、東日本大震災に伴う電力需給逼迫問題によって、そのスピードは一層加速しています。

LED照明へのニーズが高まっている要因として、省エネ性に優れていること、寿命が40,000時間と長いことがあげられます。省エネ・節電という社会的要請に応えることができ、なおかつランニングコストおよびランプ交換頻度を低減できるというメリットにより、企業・家庭を問わず多くのユーザーに採用されるようになっています。

しかしながらLED技術はまだ発展途上の技術であり、現時点においてはHf型蛍光ランプやセラミックメタルハライドランプといった、省エネ効率、コストパフォーマンスのいずれにおいてもLEDより優れているものがあります。そういったものがあるにも関わらず、昨今の話題の大きさにより“省エネ照明 = LED”というイメージが浸透したために、「とにかくLEDを採用したい」と考えるユーザーは多いようです。こうしたユーザーに対して、「省エネという観点であれば、Hf型蛍光ランプやセラミックメタルハライドランプの方が適している」と提案する事業者もいる一方で、より高単価で利益率の高いLEDをそのまま販売している事業者も少なからず存在しているのが実状です。

もちろん、ランプ交換に多大な手間・コストが掛かる場合には、長寿命であるということでランプ交換の手間が省けることが大きなメリットとなるでしょう。社会的な注目の高さから、企業の環境配慮対策のシンボルとしてアピールしやすいというメリットもあります。しかしながら、省エネを追求するという点では、LED以上の省エネ効果が得られ、かつイニシャルコストも安い光源も用途によっては存在します。それらを採用することによって浮いたコストを、他の省エネ設備に充てたほうが、省エネ行動全体としては有効なものとなるでしょう。

LED照明を採用する前に、「何を目的に照明を切り替えるのか」について再確認することが必要なのではないでしょうか。

※5 大岡 一郎(おおおか いちろう)

※5 大岡 一郎(おおおか いちろう)

生活産業事業部 上級研究員。住宅設備機器・装備品関連などを中心に幅広い市場調査に従事。

主な自社企画資料としては、「照明市場の展望と事業戦略」「住宅設備機器市場の展望と戦略」「家庭用・オフィス用家具マーケットの展望と戦略」他。

 

2012年2月22日掲載

第9回 : ポスト団塊ジュニア世代の住宅ニーズ

 主任研究員 亦野 一彰 ※1

住宅市場の主役は依然、一次取得者層ですが、数年前までボリュームゾーンだった「団塊ジュニア世代」も40代に入ろうとしています。いまの一次取得者層の主役は、団塊ジュニアから下の世代、つまり「ポスト団塊ジュニア」へとシフトしつつあります。この世代は、1975~1980年頃に生まれた世代で、少なからずその上の「団塊ジュニア世代」と比べても、生き方や生活観、消費に対する感覚は大きな違いがあるようです。

「ポスト団塊ジュニア」から下の世代は、「団塊ジュニア世代」とは違い、その価値観や消費動向が異なることが多方面で指摘されてきました。具体的には、団塊ジュニア世代から下、これからの一次取得者層となる「モデラート派」の若年層には、次のことが言えるでしょう。

①所得が伸びない環境を前提に節約する生活をし、貯蓄に励む
②仕事に関しては世俗的な成功よりも仕事を通じて一個人としての成長に重きを置く
③家については、老後の住居費を心配しなくていい「将来の安心」を求めている
④持家は重視するが、新築ではなく中古でも構わない
⑤生活するなかで必要なのは自動車というよりは家電や食糧などの生活必需品
⑥周囲と頻繁にやりとりがあるよりは、他者に気を使わないで暮らせた方がベター

現代の若年層は、「家」に対してかなり基本的な役割を求めていると思われます。裏を返せば、彼らにとって必要な住宅とは、家族を育てるにふさわしく、老後の備えになるものです。ただ手持ちのお金は多くはありません。所得の伸びも期待できないため、金利の変動に振り回されるよりは、毎月の返済額が一定したローンや資金計画の提案が今以上に求められます。これは、新築住宅のみならず、中古住宅などに対しても同様です。

そうしたローンの返済によって家が最終的に文字通りの資産になり、それが購入時点で明らかにされ、納得できるなら住宅取得に向けた彼らの心を大きく動かすことができると思います。

長期優良住宅の概念やフラット35といった長期固定ローン、リバースモーゲージ、資産価値のある中古住宅売買など、いまの住宅業界で必要とされている要素は、この「モデラート派」にはストライクの提案といえるでしょう。 重要なのは、それをどう実際のカタチにするかです。それは、今後の住宅業界および関連業界の手腕にかかっているといえるでしょう。

2012年2月8日掲載

第8回 : 建築資材の市場と新設住宅着工量

主任研究員 山本 真一 ※4

昨年の東日本大震災が日本の産業・経済にもたらした影響は甚大なものであり、この影響は2012年以降も継続していると言えます。当然のことながら、住宅産業にも多大なる影響を与えることになります。しかし、何が変わって何が変わらないのかも見極める必要があります。(この件につきましては「東日本大震災が住宅・建材市場に与える影響」をご一読ください)

さて、2011年の新設住宅着工量は東日本大震災で大変な混乱を招いたものの、結果的に834千戸程度に落ち着き、2010年と比べると若干の増加になりそうです。弊社の予測より若干多かったとはいえ、今年あるいは来年にこの新設住宅着工量が、かつてのように百万戸を超えると予測することは、もはや現実的ではありません。

そして、ほとんどの建築資材の需要量がこの新設住宅着工量に影響されています。建築資材メーカーの業績報告においても必ずと言ってもいいほど、この新設住宅着工量のことが業績と連動させるような形で触れられています。

しかし、新設住宅着工量が低迷する中でも、市場規模を拡大している建築資材は存在します。住宅一戸当たりの使用量が確実に増加している断熱材もそのひとつです。また、住宅の建築工法の変化により伸びている商品もあります。“筋交い”“根太”“床下換気口”“ワラ床畳”などを使用する現場は減少傾向にありますが、これに変わる建築資材の市場は伸びています。

そして、この伸びている市場においても様々な商品・企業が競合し「勝ち組」と「負け組み」が存在しています。また、この伸びている市場に新規参入を検討している企業も存在しています。新規参入を検討しているのは何も国内メーカーや国産商品に限ったものではありません。

逆に、全体の市場規模が小さくなったものの、撤退企業が多くなったことにより売上を伸ばしている企業も存在しています。

新設住宅着工量が80万戸前後でも「勝ち組」になるための方策は、まずは市場の状況を的確に把握し、実行できうる戦略を練ることにあります。

※4 山本 真一(やまもと しんいち)

※4 山本 真一(やまもと しんいち)

生活産業事業部 主任研究員。建材メーカーを経て1985年に矢野経済研究所に入社、入社後は主に住宅・建材関連の調査業務に従事する。

主な自社企画資料としては、「プレカット工場の現状と展望」「エンジニアリングウッドの現状と展望」「住宅用パネルの現状と展望」や断熱材、床材、内装材、外壁材、屋根材に関する資料など。

 

2012年1月25日掲載

第7回 : 高齢者住宅需要と中古住宅活性化の相関関係

生活産業事業部 主任研究員 亦野 一彰 ※1

今後、高齢者向け住宅の需要増が予想されるなか、住み替え希望者に資金を円滑に供給する仕組みが必要となる可能性が高まっています。

日本の住宅金融は、長年にわたり国民の新築住宅の取得を支援してきましたが、住宅のあり方が変化するなか、金融に新たな役割が期待されます。例えば、高齢者の住み替え資金を確保するためには、既存の住宅を担保に融資を行い、その住宅を処分して借り入れの返済に充てるリバースモーゲージという仕組みがあります。イメージとしては住宅ローンの逆バージョンです。

自宅を抵当に入れて年金または一時金を受け取り、返済は毎月行うのではなく、本人が死亡した時点で担保となっている自宅をローンの貸し手が売却することにより返済される仕組みです。収入や現金が少ない高齢者でも、持ち家があれば生活のための現金を得ることができて、生存中の返済がいらないことから注目を集めています。

住宅ストックを金融資産化する視点は、高齢者の生活資金の確保のためにも重要です。ただし、この仕組みを活用するには、中古住宅を適正な価格で評価する市場の存在が不可欠となります。また、適切な維持管理や、耐震性の向上、省エネルギー化、バリアフリー化の推進に向けたリフォームやリノベーションが重要課題です。

国内の住宅市場における中古住宅のシェアはいまだ少なく、7~9割が主流の欧米と比較すると、品質への不安感などを背景に著しく低くなっています。流通市場で適正に価値を評価された中古住宅が少ないことは、若年層の住宅取得が進まない一因とも考えられます。政府も近年、中古住宅の品質確保や透明性を高める取り組みを進めています。

中古住宅市場の活性化は、高齢者の住み替えと若年層の住宅取得を後押しするためにも重要な課題です。また、住宅産業を中心に、既存ストックのリノベーションや再販事業という新たなビジネスモデルを拡大する可能性もあります。

政策、産業、金融が中古住宅市場の活性化を軸に結びつくことで、個人の生活基盤が一層安定し、金融の新たな社会的な役割が拡大することが期待されます。

今後、少子高齢化で空き家はさらに増える見通しです。また、中古住宅でなければ住めないエリアや購入できない物件が増え、結果的にセカンダリー市場の拡大につながることが期待されます。中古住宅が流通するかどうかは各国の文化の違いによるのではなく、ストック数が世帯数を上回っているかどうかという供給ステージの違いにより、遅かれ早かれわが国でもセカンダリーマーケットが住宅流通の主流になることは必然の流れになると思います。

2012年1月11日掲載

第6回 : 「住宅の窓口」の担い手は

生活産業事業部 主任研究員 菅原 章 ※3

謹んで新年のお慶びを申し上げます。本年もよろしくお願いいたします。

旧年は大震災という大きなインパクトがありました。住宅産業も、建材や設備関連の生産拠点が直接的な被災を受け、一時期サプライチェーンが混乱したり、住宅やリフォームの需要が大きく落ち込んだりと、震災の影響を受けた1年でした。その一方で、仮設住宅建設をはじめ、震災からの復旧を早期に実施した「底力」を見せることができた1年ともいえます。

今年は、住宅産業も震災復興の一役を担うことに加えて、建築需要の回復と、消費税増税前の駆け込み需要といったものが期待できそうです。ただし、消費税増税の有無及びその開始時期については、政治決断が見通せないため、その思惑に振り回されることになりそうです。

仮に前回の税率変更の時と同じように、増税をひとつの境として、駆け込み需要と需要の冷え込みを繰り返した場合、特に需要冷え込みが現在の80万戸以下の水準となると、更なる住宅産業の地図も塗り替えられる可能性もあります。特に首都圏以外のエリアでは、人口減少がより顕著になり、そのダメージの大きさを懸念せざるを得ないところです。

第3回のところでも「中古住宅+リノベーション」が注目市場として捉えていますように、国土交通省でも「中古住宅・リフォームトータルプラン検討会」にて中古住宅とリフォーム市場の活性化のため、従来からある商慣習や施工上の課題点などをクリアにしながら、新築から既築分野での市場成長に向けた準備が行われています。したがって、既築事業すなわち「住宅ストック産業」が新築事業を上回る日もそう遠くないといえます。

前書きが長くなりましてすみません。さて、今回のコラムでは、私自身が常々考えていることとして、住宅に関する様々な相談窓口として、「誰が一番生活者に近い位置にいるのか?」ということを書きたいと思います。

先祖代々受け継ぐ家に住んでいるのであれば、建築した工務店なのかもしれません。同じように、ハウスメーカーで建てた家であれば、そのハウスメーカーに相談するのが一番家のことがわかっているのかもしれません。しかし、転居するために賃貸住宅を探さなければいけなくなるかもしれないし、諸事情で手放すこともあると思います。住宅そのものと、ライフスタイルは、それぞれケースバイケースであります。したがって、建物(ハード)である住宅のために必要な人材(事業者)と、ライフスタイルのサポートのために必要な人材(事業者)は別である可能性が高いと思います。しかし、どちらにせよ次のライフステージでもどこかに「住む」必要があり、住宅も次の「住まい手」が必要であり、ここでのアンマッチが多くの機会損失を生んでいるような気がしてならないのです。

「こう住まいたい・生活がしたい」という夢の部分と、「損得勘定」の部分、「現実」の部分、それとこういった具体的な「イメージがない」という部分が混在しているのが「住まう(住宅)」という分野です。金額を含めた様々な制約の中で、それぞれの生活者にとって最適な「住宅・生活提案」ができるサービスが提供できないでしょうか。

例えば、「住宅投資」という言葉は色々な意味で使われますが、生活者にとっては失敗する可能性のある「住宅投資」にならないようにしなければならないのに、今の住宅産業はリスクを生活者側に背負わせている気がします。投資ではなく、ライフスタイルに見合った住宅・生活をフレキシブルに選べる社会にすることができれば、新築・既築ではない「新・住宅ストック産業」ができると思います。これが本当の「構造改革」ではないでしょうか。

「新築マンションがいい」、「今の家で住み続けたい」、「あの街に住みたい」というハード的な要望以外にも、最近は「同じ趣味を持つ仲間と住みたい」、「異文化に触れたい」、「自給自足の生活がしたい」といったソフト的な要望が増えるなど、住むという価値観がどんどん変化しています。色々な夢があり、それを形作るのが住宅産業なら、人々の夢の輪を繋ぐことができる住宅産業に変わっていければと考えています。

今後も、そのために何をしなければいけないのかを考えていきたいと思います。

※3 菅原 章(すがわら あきら)

※3 菅原 章(すがわら あきら)

生活産業事業部 主任研究員。住宅リフォームを中心とした住宅のアフターマーケットの調査・研究を行っている。公的機関における受託調査などの経験も多数有り。

主な自主企画調査資料としては「住宅リフォーム市場の展望と戦略」「拡大する収納ビジネス市場の徹底調査」「各種パイプの需要動向と中期展望」他。

 

2011年12月28日掲載

第5回 : 「サービス付き高齢者向け住宅」がスタート

生活産業事業部 主任研究員 亦野 一彰 ※1

改正高齢者住まい法(高齢者の居住の安定確保に関する法律)が今年10月20日に施行されました。これにより、今まで聞き慣れていた高齢者向け賃貸住宅の「高齢者円滑入居賃貸住宅(高円賃)」、「高齢者専用賃貸住宅(高専賃)」、「高齢者向け優良賃貸住宅(高優賃)」の3つの住宅制度が廃止され、新たに「サービス付き高齢者向け住宅」の制度がスタートしました。

サービス付き高齢者向け住宅に一本化された背景には、高齢者を取り巻く現状に待ったなしの状態が迫っているためです。日本は世界に先駆けて急速に高齢化が進んでおり、特に単身者や夫婦のみの世帯が急増しています。そこで今後増え続ける高齢者の住居を供給することが極めて重要な課題となっています。

また、特別養護老人ホームの入居待ち問題もあります。厚生労働省の発表によると、現在特養には42万人の待機者があり、そのうち24万人が要介護度1~3の低い層です。特養は要介護度の高い高齢者を優先するため、介護度の低い高齢者がなかなか入居できない問題を抱えており、早急に受け皿となる住宅整備が求められている現状があります。

国土交通省は、今後10年間で60万戸のサービス付き高齢者住宅を整備する方針を打ち出しています。サービスが受けられる高齢者向け住宅の供給を促すことで、入院・入所から在宅ケアへの転換を進め、医療・福祉の負担が急増することを抑える狙いもあるのです。

土地活用や建築請負として住宅メーカーもサービス付き高齢者向け住宅に対して注目しています。住宅建設が原則としてできない市街化調整区域にも医療・福祉施設と同様に建設可能なこともあり、新たな土地活用提案の可能性が広がるといった期待もあります。

一方、最も気を付けなければならないのは提供されるサービスの中身です。法律で義務付けられているのは、安否確認と生活相談のみ。訪問介護や訪問診療など介護や医療は原則として外部のサービスを利用し、この点は通常の在宅介護と変わりません。

また、2012年4月の介護保険制度の改正では、在宅高齢者を支援しようと、1日に何度も利用者を訪問して短時間介護・看護をする「24時間対応サービス」が導入されます。サービス付き高齢者向け住宅が機能するのに欠かせない仕組みですが、対応できる事業者がどれだけいるかは不透明です。介護事業所などを併設して住宅の複合化を進めたり、外部のサービスや地域社会との連携を強化したりしないと、安心して暮らせる住宅にはならないと思われます。

いずれにしても、サービス付き高齢者住宅の登場によって、今後はさらに高齢者住宅事業の競争が激しくなるでしょう。運営や管理会社のM&Aや事業譲渡も増えてくると考えられます。

2011年12月14日掲載

第4回 : 建設業のグローバル展開の難しさ

生活産業事業部 主任研究員 品川 郁夫 ※2

昨今、あらゆる産業においてグローバル展開は避けて通れないものとなりつつあります。建設業も例外ではないようで、大手企業などは海外プロジェクトの受注などに注力しています。また、政府においても中小建設業者の海外展開を支援など、建設業の海外展開支援を行っています。

しかしながら、他の一般的な製造業などと比較し、建設業のグローバル展開はかなりハードルが高いと言えるのではないでしょうか。おそらく現状の建設業の海外展開スタイルは、実態として、資金や、設計・施工・技術など各種ノウハウの提供に止まっているプロジェクトが多く、国内に近いスタイルでの展開はほとんど見られないのではないかと思います。むしろどちらかと言えば、総合商社や大手デベロッパー、あるいは建設コンサルタントに近い立場での展開が主体と言えるでしょう。

これはやはり建設業という産業特性によるものだと考えられます。すなわち、建設業は地場産業であり、これは国内外問わず同様であるということです。建設現場で実際に作業する作業員はその地域の住民が主体であり、いくら優れた建設業者であってもこれら作業員を確保できなければ工事を行う事は一切できません。また、どんな作業員でも良いかと言えば決してそうではなく、一定以上の経験・技術力を持っている作業員の集団が必要となります。加えて、建設物を構成する資材などは、その地域ごとに文化・風土を反映して異なっており、必要となる施工能力が異なることも少なくありません。

以上のようなことを背景として、ゼネコンやサブコン、あるいは専門工事業者が、国内に近い形で、海外現地においても現場作業員集団(もしくはそれらを束ねる事業者)を自ら組織化できない限り、国内と同様のスタイルで建設業をグローバル展開していく事は困難と言えるでしょう。

この点、製造業における海外生産拠点に通じるものがありますが、やはり規格化・工業化された生産現場と、物件ごとに様々な諸条件が全く異なる建設現場では、現地作業員の確保の難しさには大きな開きがあります。これはなかなか難しい問題であり、短期的にクリアできる問題ではありません。それこそ現地に根付いて長年生活を行いながら地道にネットワークを構築していくほか、有効な手立てはありません。

それまでは現在のスタイルのように、実際の現場力については、現地で作業員を取りまとめている建設業者の力を借りつつ、設計、エンジニアリング、施工管理ノウハウなどを提供するスタイルでの展開が主体となります。したがって、中小の建設業者になればなるほど、特殊なノウハウ・スキルを有していない限り、グローバル展開のハードルは高いものとなるでしょう。

※2 品川 郁夫(しながわ いくお)

※品川 郁夫(しながわ いくお)

生活産業事業部 主任研究員。建設・不動産、建築資材などを中心に幅広い市場調査に従事。近年はストック市場を中心に調査を実施している。公的機関における受託調査などの経験も多数有り。

主な自主企画調査資料としては「ビルリニューアル市場の展望と戦略」「ビル管理市場の実態と展望」「空調衛生設備業経営総覧」「住宅設備機器市場の展望と戦略」「物流市場の現状と将来展望」他。

 

2011年11月30日掲載

第3回 : 中古住宅の再生市場が業界にもたらす影響

生活産業事業部 主任研究員 亦野 一彰 ※1

「中古住宅+リノベーション」が今、新たな脚光を浴びてきています。新築住宅に比べ、割安でしかも好立地などの理由から、若年層を中心に中古住宅購入ニーズが高まり、自分好みにリフォームをする購入者が増えているのが一つのトレンドです。一方、省エネ、エコ、高齢化といったファクターがきっかけで、この新たなトレンドが起こってきているともいえます。

ただ、中古住宅を買ってリノベーションするという住宅取得方法の認知度はまだまだ低く、住宅購入者にとっては馴染みが薄いのが現状です。しかし、リノベーションの内容を提示されると、魅力的であると考える消費者は確実に多くなります。つまり、中古住宅の流通活性化には、美観の向上や品質不安の払拭が求められているのです。

住宅業界にとって、住宅ストックの有効活用が今後の重要な課題の一つです。スクラップ&ビルドという従来の事業モデルを見直し、どのような新しいモデルを確立できるかが、住宅各社の今後の成長に大きく影響すると思われます。

中古住宅を自ら買い取り、再生販売するリノベーション業者にとっては、新築分譲に比べて少額ですむ資金負担や手離れの良さがメリットです。分譲業者にとどまらず、不動産流通の新ビジネスとして取り組む仲介会社や、需要が伸び悩む新築に代わる受注手段に期待する建設会社、設計事務所など、この市場に新規参入する企業は後を絶ちません。

ようやく大手ハウスメーカーでも自社施工の住宅を買い取り、リフォームして再保証を付与した上で販売するビジネスモデルに力を入れつつあります。今後は、大手入り乱れてのシェア争いが本格化していくと思われます。

リノベーションにより、住宅選びの新しい価値領域ができ、注文住宅・新築分譲・中古流通・リフォームという枠組みが崩れ、新しい住宅取得領域が生み出されました。この新たな住宅取得領域によって、消費者は住宅を購入する際、立地(土地)を最優先し、外観や建物内部の美観はもちろん、間取りや部屋の配置すらあまり気にせずに済むのです。そして、住み替えの動機が街並みや居住環境など、地域の魅力が家選びの重要なポイントとなるでしょう。

中古住宅市場の活性化は、高齢者の住み替えと若年層の住宅取得を後押しするためにも重要な課題です。また、住宅産業を中心に、既存ストック市場での新たなビジネスモデルを創出する可能性もあります。

現在、郊外の戸建てに住んでいる私も、将来子供たちが独立し、夫婦二人になった時には、もっと住環境や立地のよい築15年~20年くらいの小ぢんまりとしたリノベーションマンションに住み替えるのも十分にありかなと思っています。

2011年11月16日掲載

第2回 : 震災の影響による住宅や住意識の変化

生活産業事業部 主任研究員 亦野 一彰 ※1

東日本大震災の影響で、被災地や液状化被害のあったエリアなどで地下が大きく下落しました。都心でも地震による揺れや停電でエレベータが止まり、高層マンションなどの居住者の生活に支障をきたしたことは記憶に新しいところです。

震災の影響による住宅の変化では、建物の耐震性や耐久性、構造や工法などに再び関心が向かう傾向にあります。また、エコ意識の高まりとともに目立つようになったのが家族とのつながりではないでしょうか。私自身も、地域や近隣同士の支えあいやコミュニティの役割を再認識しました。最近、二世帯同居が見直されているのも関係がありそうです。

震災を機に、住宅だけでなく価値観や生活意識そのものも大きく変化していると思われます。特に、電気や設備に頼りすぎず適度な電力で生活することや、日本の暮らしの知恵や工夫、自然を生かして暮らすことがより重要になったように感じられます。

住宅購入者の意識の変化には、主に以下の点があげられます。
① 住宅の耐震性をより重視
② 湾岸の埋立地は要注意、台地・地盤を重視
③ 職場からより近い立地に注力
④ 高層マンションの人気にかげり
⑤ オール電化に対するリスク意識

これからの住宅に搭載されるアイテムとして、注目されるものの一つに家庭用蓄電池があります。太陽光発電システムや家庭用燃料電池(エネファーム)などで生み出された電力や、割安な深夜電力を貯めておくことで、省エネや節電、災害時の電力活用などに役立つものです。最近、ハウスメーカーなどの商品にも導入されるケースが増えてきました。

家庭用蓄電池に期待されるのは、無理せず節電・省エネすることであり、さらには電力使用のピークカットにあります。太陽光発電システムなどの創エネ設備やHEMS、さらにはそれらを備えたスマートハウスと組み合わせることで、エネルギーを無理なく効率よく使いながら生活できるというわけです。

東日本大震災は、忘れかけていた不安が現実に起きてしまい、ブームや立地などのイメージだけで住まい選択をすることの善し悪しや住宅取得の難しさについて改めてクローズアップされる機会になったと思います。住宅を取得することは必ずしも資産を持つことにならず、それにはリスクが付き物です。リスクを減らすには、数多くの情報に触れ、その中で後々後悔しないで済むよう納得できる材料を自ら探すことが大切だと思います。

2011年11月2日掲載

第1回 : 住宅エコポイントの復活に住宅関連業界が期待

生活産業事業部 主任研究員 亦野 一彰 ※1

政府は10月21日、2011年度の第3次補正予算案で、今年7月末に終了した「住宅版エコポイント」を再開する費用として1,446億円を計上しました。
省エネ住宅を新築する場合、被災地は1戸当たり最大30万円相当、その他の地域は同15万円相当を付与。省エネや耐震化のリフォームは地域を問わず、最大30万円相当とし、獲得ポイントの半分は被災地の物産品や義援金などに利用を限定する、というものです。先日、ある住宅大手メーカーの取材でも「この制度の復活は大変ありがたい」とおっしゃっていました。

ここ最近の住宅取得支援策のなかでも、特に目をひくものが環境対策関連の補助制度です。その筆頭は住宅エコポイントで、予想以上の成果を残しています。住宅エコポイントをきっかけに、実際に住宅取得へと動いた消費者もあり、30万ポイントという直接的な経済的メリット以上の需要効果があったと思われます。

たしかに、2010年度の住宅市場は、住宅エコポイントや贈与税非課税枠などの効果により、大手各社の受注が概ね好調に推移しました。しかし、2011年3月11日に起こった東日本大震災の影響により、住宅・不動産業界では消費マインドの低下や部資材不足といった不透明感の強い今後の市場に懸念を募らせました。今年度については、前年の勢い維持への期待感が強いものの、大震災後の影響や景気の不透明感を理由に慎重に見る企業が多かったのも事実です。そうした中、今回の住宅支援策は明るいニュースとなりました。

この第3次補正予算案を受け、住設機器会社でもエコポイント復活を受けた戦略を検討している企業は多いと思われます。旧制度は省エネルギー基準を満たした新築住宅のほか省エネやバリアフリーを目的としたリフォームも対象だったため、住設機器業界には売り上げを大きく伸長させる効果がありました。新制度は対象などが多少変わる見通しですが、住宅関連業界では、力強い追い風になるとの期待が広がっているようです。

将来的な住宅着工の供給予測は、基本的には人口・世帯数の推移が大きく影響しますが、短期的には国内の景気動向や金利の変動、そして政府の税制政策や優遇措置が実際には左右されます。来期は、今回の住宅エコポイントの復活が、東日本大震災以来顕著となったエネルギー問題の解決にも少なからず貢献し、業界各社は耐震性や省エネ・創エネなどをキーワードにさらなる商品開発やリフォーム事業に拍車がかかるものと思われます。

※1 亦野 一彰(またの かずあき)

※1 亦野 一彰(またの かずあき)

生活産業事業部 主任研究員。20年以上、住宅、非住宅、不動産開発関連の調査研究に従事。企業調査から商圏、消費者調査まで幅広い調査経験をもつ。

主な自主企画調査資料は「住宅トレンドの徹底分析」「戸建て住宅市場の徹底研究」「高齢者住宅市場の徹底研究」「健康・エコ住宅市場の徹底研究」「中古住宅市場の徹底研究」「建設8大市場の展望と戦略」他。

 

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