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ヘルスケアニュース

医薬品流通市場の将来展望

(11-12) 2011年12月発行

新薬価制度(新薬創出・適応外薬解消等促進加算制度)を定着させるには、医薬品流通制度改革が欠かせない。
しかし、納入価交渉の現状を見る限りにおいては、このままで本当に変わることができるのだろうかと思えるような状態が続いている。

医薬品卸各社は、2010年4月の薬価改定以降の重点課題をそれ以前に拡大してしまった薬価差を改善することとし、大手医薬品卸の経営者が決算報告会等においてそのことを明言した。ところが、当初、そのように意気込んで臨んだ納入価交渉も医療機関側から「新制度が値上げにつながることは容認できない」との姿勢が示されたことで状況が大きく変わることとなった。事実、昨秋頃から納入価交渉の状況が怪しくなりはじめ、その後、一気に納入価が乱れる方向に向い、結果、医薬品卸各社の2011年3月期決算は当初予想を大幅に下回ることとなった。

現時点では、製薬企業側も医薬品卸側も新薬価制度を定着させるために明確な方針を打ち出し、行動を起こしてはいない。このままでは、医薬品卸だけではなく、長期収載品に大きく依存している製薬企業にとっても納入価交渉のしわ寄せを受け、経営を持続することが困難になりかねない。新薬創出加算制度の定着を促進させるには、製薬企業もそのために積極的に関与しなければならない状況と言えるのではないだろうか。これまでのようなマーケティング戦略では、自社の製品の売上を維持できにくくなるとも言えよう。

その一方で、東日本大震災が発生した際、医薬品卸各社は医薬品の安定供給のため、さまざまな対応を行い、速やかに被災地に医薬品供給を行うことができた。これは、これまでの災害からの教訓を踏まえた対応策を講じてきたことや、物流センターの整備・強化が進んだことによるものである。

しかし、医薬品卸各社がこれまで以上に安定供給の体制を整備するためには、新たな投資が欠かせない。その原資になるのが納入価交渉など日々の事業から得られる収益である。そのため、今後、医薬品卸としては医薬品の安定供給を行うために医薬品流通制度改革を実行することが必要不可欠である。

さらに、今後、世界の製薬業界は、これまでのブロックバスター狙いの研究開発から、オーファンドラッグや遺伝子疾患治療薬など、患者数が限定されるものの、高い有効性があり開発利益を着実に回収できる研究開発の方向に向ってその動きを強めることが予想される。このことは、結果として医薬品流通市場のあり方にも影響を及ぼすと考えられる。それは、製薬企業も医薬品卸もこれまでの大量販売のビジネスモデルから、きめの細かい対応を必要とするビジネスモデル、あるいは効率化を追求したビジネスモデルを構築しなければならないということでもある。製薬企業や医薬品卸においてもこれまでのマーケティング戦略のあり方に大きな影響を及ぼすことになるということでもあり、MRやMSの削減や欧米の医薬品卸のようにメーカー直販ということに発展する可能性もある。

関連資料

2011年版 医薬品卸企業年鑑

2011年版 医薬品製造受託市場の展望と戦略

2011年版 変わりゆく病院の購買・物流戦略

製薬業界でのタブレット利用状況調査結果

(11-10) 2011年10月発行

最近iPad(アイパッド)などのタブレット情報端末(タッチパネルやペン入力等画面の直接操作が可能な端末)やiPhone(アイフォーン)をはじめとするスマートフォンなどの携帯端末を用いて学術宣伝活動を行う製薬企業が増加する傾向にある。

そこで、矢野経済研究所では下記の調査要綱において、国内製薬企業のMRによる医師への学術宣伝活動状況についての調査を実施した。

【調査要綱】
1.調査期間:2010年11月~2011年3月
2.調査対象:東京都、近畿圏(大阪府、京都府、兵庫県)の病院勤務医・開業医1,561名
3.調査方法:当社専門研究員による郵送アンケート調査ならびに文献調査

タブレットやスマートフォンを使用したディテーリングについて

これまでにタブレット情報端末を使用した学術説明を受けたことがある医師は全体の15.7%であった(図1参照)。また、タブレット情報端末を利用した説明で受けた内容は、「自社製品に関する情報(製品パンフレット、添付文書、インタビューフォーム、各種改訂案内、論文、他)」が84.1%、「講演会などの動画コンテンツ」が20.8%、「自社ウェブサイトのコンテンツ、各種情報検索」が10.6%、「その他」が2.0%である。現状では、主にディテール活動の中心である自社製品説明の際にタブレット情報端末が利用されている(図2参照)。現状ではタブレット情報端末を利用した学術説明を経験した医師は少ないが、製薬企業におけるタブレット情報端末の導入は徐々に進展している。今後、製薬企業におけるタブレット情報端末を利用した学術説明が増加するものと予測する。

図1.タブレットやスマートフォンで説明を受けた経験の有無

図2.タブレットやスマートフォンで説明を受けた内容

実際にタブレット情報端末を使用した説明を受けた医師にその印象を尋ねたところ、「わかりやすい」「見やすい」「インタラクティブ(必要に応じて色々なデータを呼び出せる)」などの利点(評価する点)を挙げる意見が多い。その他にも、「視覚に訴え理解が深まる」「情報量が多い」などが利点(評価する点)として挙がっている。これに対し、「操作に手間取る、時間がかかる」「資料が手元に残らないと記憶に残り難い」「コンテンツ内容が不十分(既にわかっていることが多い)」などが欠点(評価しない点、改善が必要な点)として挙がった。

医師との面会時間に対する制約が強化される状況下、タブレット情報端末を利用した学術説明は動画を含めて視覚に訴えることで理解度が深まり、かつ情報が迅速に得られるなどの利点も多く、効果的だと考える。一方、上述のように、操作や説明に時間が掛かる他、資料が手元に残らないこともあり記憶や印象に残りにくいなどの欠点も指摘されている。

タブレット情報端末を利用した学術説明の増加が予測される中、タブレット情報端末に適したコンテンツの開発とプレセンテーションに注力することで、より効果的な学術説明を実現できるのではないか。

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2011年版 医薬品卸企業年鑑

2011年版 医薬品製造受託市場の展望と戦略

2011年版 医薬品流通市場の未来図

DPP-4阻害薬の上市により、市場のパラダイムシフトが進行中

(11-08) 2011年8月発行

欧米型食生活の浸透、運動不足や社会的ストレスの増大、生活環境の変化などにより、日本では生活習慣病(慢性疾患)等の患者数がますます増加する傾向にある。中でも、糖尿病の人数は高い比率を占めており、糖尿病が強く疑われる人、可能性が否定できないいわゆる「隠れ糖尿病」の人はあわせて約2,200万人以上いると推定されており、今後も増加傾向は続くと見られている。

血糖値上昇抑制効果を持つ食品などによる疾患予防、自己血糖測定器による病態の診断、血糖降下薬による治療という疾患対応3相(予防・診断・治療)の市場は全体で約4,344億円にのぼるものと矢野経済研究所は推計している。
糖尿病市場において、特に注目を集めているのが、今までにない作用機序を持った新薬として、2009年末に上市された「DPP-4阻害薬」である。消化管ホルモンの一種であるインクレチンに作用する同薬は、低血糖リスクの少なさや高い効果が支持を受け、急速に売上を拡大させている。糖尿病市場全体に対して治療市場は7割以上の比率を占めているが、DPP-4阻害薬は治療市場を伸張させるのみならず、市場全体の成長を牽引している状態である。従来使用されていた既存薬が、ジェネリック医薬品の広がりなどの影響で縮小傾向である中、DPP-4阻害薬は、糖尿病治療薬における主要製剤として存在感を示しつつある。同薬の伸張により市場のパラダイムシフトが現在進行形で進んでいる最中であり、今後の動向が注目される。

このほか、検査・診断市場に関しては、自己血糖測定器において、血糖データの「見える化」を実現する技術開発や、それを実践する啓発活動が進んでいる状況である。過去の血糖データを簡易に確認するため、測定器と携帯電話を連動させたツールが発売されるなど、よりよい血糖コントロールを目的とした新しい製品展開が見られている。
予防(食品)市場は、参入している企業同士、あるいは食品に関連する企業と提携するなど、お互いの長所を活かした製品開発や販促活動を展開している。料理のレシピを紹介するウェブサイトと連動し、自社の低カロリー甘味料を使用した料理コンテストを開催するといった例も見られており、食を通じた健康的な生活を提案する取り組みが、各社で展開されている。

このように、糖尿病市場では「治療」の新たな形を探求する研究開発、またはそれに基づいた「QOL」の向上などの重要性が高まっており、マーケティング活動もそうした観点に立ったアプローチが求められている。

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2011年版 糖尿病市場の現状と展望

2011年版 健診・人間ドック市場の実態と展望

2011年版 オーダーメイド医療に関する市場動向調査

医療情報・管理システム市場の将来性

(11-06) 2011年6月発行

行政を含め、医療のIT化への関心は高く、マイナス成長が懸念される医療関連市場において、医療情報・管理システム市場は伸長が期待できる市場として注目されています。
医療情報・管理システムの市場規模は、中小規模及び一般診療所向け電子カルテ市場の拡大に加えて、電子レセプト請求に関する補助金の影響から医事会計システム・レセコンのリプレイスが進んだことにより微増しました。

多くの部門システムにおいてリプレイス中心の市場となっている中、電子カルテ市場における中小規模及び一般診療所の市場成長がキーポイントになる。医療情報システムの中核を担う電子カルテ市場は、400床以上の大規模施設でのリプレイス市場への移行しつつある中、件数ベースでの市場成長が見込まれています。また、未導入施設や一般診療所に対しては、現在注目のクラウドコンピューティングの発展が市場成長のキーポイントになると捉えられています。

電子カルテシステムやオーダリングシステムを導入する全国の医療施設の過半数が診療情報等の外部保存に関心を寄せていることが弊社アンケート調査から浮かび上がってきました。また、まだ程度に差はあるものの、「クラウドコンピューティング」について80%以上の施設で認知が進んでいることもわかって参りました。特に施設規模(ベッド数)の大きな医療施設になる程、「サーバーの仮想化」、「シンクライアント」をキーワードにかなり詳細なレベルで認知が図られていますが、クラウド・サービスの導入効果、懸念事項、採用可能性などビジネス面での重要因子についても施設規模などとの関係の中で一定の傾向が伺われております。

財政的方向性として医療費削減がうたわれる中、チーム医療・クリティカルパス、遠隔医療・病診連携などの地域医療の進展と医療における大きな変革に際しITは不可欠なツールであり、医療施設側の大きな期待を背景として、直接的に医療に貢献するシステムなど企業に求められるソリューションは更に増していくことが見込まれております。

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2010~2011年版 医療情報・管理システム市場の将来展望

医療衛生用品市場の市場要因と課題

(11-04) 2011年4月発行

わが国の医療衛生用品市場は、高齢化の進行、在宅医療の拡大、原材料価格の高騰を始めとする社会的、経済的要因がその需要形成と市場動向を左右する。たとえば、高齢化の進行とそれに伴う介護市場や在宅医療の拡大は、大人用紙おむつ市場の伸長と密接に関連している。また、施設から在宅へという治療・介護の流れの加速は、コンシューマー向けチャネルの拡大という市場状況を牽引してきた。感染症対策は、新型インフルエンザの発生・流行などを背景として近年注目度が急速に高まりをみせた市場要因の1つであり、医療用マスクやガウンなどディスポ製品の需要動向に直結している。原材料価格の高騰も(上昇の程度にもよるが)得てして市場に強い影響を与える因子となることが少なくない。近年では、様々な衛生用品の原材料である綿花の価格上昇に多くの関心が寄せられている。

新型インフルエンザの発生にみられるように短期間に強く広範囲に市場へインパクトを与える要因がある一方で、長期にわたり市場の傾向あるいは市場環境的に捉えられてきたのが、医療機関および介護施設における経費節減の動きにつながる恒常的な製品価格低下の流れである。医療衛生用品は、一般に汎用度が高く、製品のコモディティ化が進んでおり、価格が差別化要因とされるケースが少なくない状況にある。既存汎用製品については、価格の維持・向上が大きな課題となっている。

今後の需要形成の方向性を見るうえで、引き続き上述の市場要因は注視されていくと考えられる。

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'10~'11年版 医療・衛生用品の市場実態と製品別需要動向

ヘルスケアニュース

新薬創出・適応外薬解消等促進加算制度により業界再編の可能性も

(11-02) 2011年2月発行

2010年4月より2年間の試行措置として、日本製薬団体連合会がその実施を望んでいた新薬創出・適応外薬解消等促進加算制度(以下、新薬創出加算制度)が実施された。新薬創出加算制度とは、後発医薬品が上市されていない新薬のうち、一定の要件を満たすものについて後発医薬品が上市されるまでの間、市場実勢価格に基づく薬価の引き下げを緩和する制度である。

しかし、製薬企業側としては、その代償も大きなものとなった。新薬創出加算制度を導入するに当たり、未承認薬を早期に上市させる制度も加わることになったからである。さらには、これまで製薬企業のドル箱となってきた特許が切れた新薬である長期収載品を速やかにジェネリック薬品に移行させるということにもなった。同制度が定着できるかどうかについては、製薬企業、医薬品卸、医療機関・調剤薬局が、特に納入価格交渉の場においてどのような対応をするのか、業界内外から注目が集まっている。

この新薬創出加算制度が試行から恒久的な制度に移行したとすると、新薬上市の目処が立たない状態、あるいは新薬創出加算品目を持たない製薬企業にとっては、市場からの退場を余儀なくされることになる。長期収載品に依存する従来型の企業は、研究開発投資の増大を迫られ、国内企業にとっては、国内だけしか売れない新薬では、自社の収益を確保することが困難になる。

特許期間中の新薬の薬価を守り、利益を確保したいとする先発メーカーは、新薬創出加算という制度を試行的ではあるが手に入れることができた。これを恒久的なものとするため、医薬品卸による納入価格交渉が製薬企業にとって有利に働くよう切望していたが、すでに前半で苦戦している。

こうした状況には、価格競争がエスカレート、もしくは医薬品卸が得意先である医療機関や調剤薬局の要望通りの価格提示をするということが背景にあり、結果、医薬品卸からの製薬企業に対する支援要求が拡大している。外資系企業については、多額の支援要求に応えることができる明確な理由を本社に伝えることが容易ではないことから、そのほとんどが対応できないと予想される。自社のドル箱である新薬の価値を毀損することになるような対応を医薬品卸が行うこととなれば、製薬企業としては態度を硬化させることになる。また、新薬創出加算品目に関しては、特定の物流業者との契約を行うことで直販を行うことも有りうる。

今後、わが国を取り巻く経営環境は、これまで以上に厳しさを増すことが予想される。厳しい状況の中で勝ち残ることができれば、その製薬企業にとっては、国際的な規模で成長の可能性が増大することになる。製薬市場における業界再編の可能性もあり、製薬企業各社は、待ったなしの状況に追い込まれている。

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2011年版 製薬市場の10年展望