グローバル人材になる!?

2013年2月
主任研究員 瀬戸 鋼一

日本企業の海外進出が益々盛んになっている昨今、グローバル人材の必要性が頻繁に訴えられている。では、グローバル人材とはどのような人材か?

産学人材育成パートナーシップグローバル人材育成委員会という、産官学連携の共同体の発表した報告書によると、「グローバル化が進展している世界の中で、主体的に物事を考え、多様なバックグラウンドをもつ同僚、取引先、顧客等に自分の考えを分かりやすく伝え、文化的・歴史的なバックグラウンドに由来する価値観や特性の差異を乗り越えて、相手の立場に立って互いを理解し、更にはそうした差異からそれぞれの強みを引き出して活用し、相乗効果を生み出して、新しい価値を生み出すことができる人材。」というのがその人材像、つまり定義の一つとなっている。

重要なポイントを全てカバーしているように思われる。但し目標としてはそうであるとして、ビジネスマンとしての我々は、ここでは単に海外企業や海外出身のビジネスパーソンとも普通にビジネス上必要なコミュニケーションがとれる人、というふうにイメージして頂きたいと思う。(もちろんコミュニケーションのツールは英語を始めとした外国語である。)

ちなみに筆者は、この矢野経済研究所という市場調査会社において、様々な海外関連の業務に携わらせて頂いている。様々な業務とは、海外市場の調査に始まり、海外のクライアントとの日々の折衝、企画書や報告書の翻訳、英語版ウェブサイトの管理、等々である。特に海外市場調査において、クライアント様の海外進出のサポートも行っている。このような背景もあり、このコラムにおいては、特定の産業分野や製品の分析ではなく、先にイメージした、「グローバル人材」になるヒントを提供したいと考えている。

外国語ができなくても誰でもグローバル人材になれる!?(英語が嫌いだから海外ビジネスも嫌いなひとへ)

弊社にも、英語は決して得意ではないが、ひとりで平気でロシアや東南アジアなどの海外に出かけて取材をして帰ってくる研究員もいる。せっかく海外に行ったのだから、夜は地元のバーなどにも繰り出し、片言の英語で盛り上がっているようだ。旅行の手配は旅行会社にもちろんお願い出来るし、現地では通訳を雇う。自分で頑張ってeメールも英語で書くが、込み入ってわからないときは(私を含め)誰かに助けを求める。

彼の特徴は、1)自分で出来ることは自分でやる、2)言うべきことははっきり言う、3)人を属性(外国人、日本人の違いも含む)のみで判断しない、4)助けが必要な時は素直に求める、(逆に人も助ける)、などである。

これらのことを意識すれば、英語ができなくてもグローバル人材である。英語がペラペラに聞こえる日本人も、ほとんどの場合ネイティブとはずいぶん差があるのである。まずは語学力など気にせず一歩踏み出して海外ビジネスにトライする意識を持って頂きたい。

英語力はゼロか100ではない(仕事で英語が少しは必要なひとへ)

とはいえ、効率や経済性を考えると、最低限の英単語や英語表現、更にはそれ以上のことを身につけるに越したことはない。楽天やユニクロのファーストリテイリングが英語を社内の公用語にしたことはよく知られている。素晴らしいと思うが、現在どのような状況なのか個人的にも興味がある。

但し、弊社を含め多くの日本企業では、そこまでは必要ないかも知れない。現実的に考えて、全員が英語で会議を行うことは極めて困難であるし、すぐに必要もないだろう。一方、簡単なeメールの読解くらいはほぼ全員が出来たほうがいい企業も多いはずである。要するに、どのような業務でどの程度英語が必要かきちんと整理し、必要なレベルの英語力を身につければよい。

例えば、1)eメールを読めるレベル、2)簡単なeメールを書けるレベル、3)自分の業務に関連する分野は英語で読めるレベル、4)簡単な会話ができるレベル、5)ビジネス文書を英語で読み書きできるレベル、6)英語で商談が出来るレベル、など、(会話力を身につけるにはそれなりの工夫や支援は要ると思われるものの、)具体的に各自に必要なレベルを設定して、OJTで実施していけば良いだろう。

シンガポール、香港などのノンネイティブと話す(基礎英会話を勉強中のひとへ)

アメリカ人やイギリス人など、英語のネイティブと会話をした場合、当然ならが相手の話がわかっても同様の表現力で発言することは困難である。特に、会話の機会が少ない我々日本人にとっては悩ましい問題である。つい絶望したりする。ところが、ネイティブではないが英語がうまい香港人、シンガポール人は、確かに流暢だがアメリカ人やイギリス人と同様の語彙力や表現力が必ずしもあるわけではない。注意深く聞いていると、使っている単語やフレーズは極めて基礎的なものである。日本の中学レベル、プラスアルファーくらいに思われる。

学校での教育システムの違いだけでなく、恐らく中国語の思考回路と英語のそれが近いため、彼らは流暢な英語を話すと考えられるが、非常に上手に基礎的な表現でまとめている。膨大な量の単語を暗記するのも良いが、是非積極的に英語がうまいアジアの人々ともコミュニケーションをとってみて頂きたい。ネイティブではなく、語彙力も限られている我々日本人には参考になるはずである。

会議が理解できないときこそ発言する(ビジネスで英語の会議へ参加するひとへ)

少し会話が出来るようになると、英語で行われる会議に出席する必要も出てくるだろう。ただ、日本語でも退屈な会議を英語でとなると集中力を保つのも困難で、更にいろいろなアクセントを持つ人が集まれば、内容を理解するのも困難になる。

結局何の会議かわからないまま終わる前に、(タイミングを見計らう必要はあるが、)わからないことは質問する、自分の意見をまず言う、など、臆せず会議の主役級になることを目指したい。自分のした質問に対する答え(発言)なら、内容が想像できるので理解できる可能性が格段に高まる。そもそも英語なので、多少わからなくても、「得意な人こそが、わかるように喋るべきだ、」くらいに思ってもいい。そのように積極的に参加する人には、経験的には、海外の多くの人は親切に対応してくれる。気軽に基本的なことを聞ける状況ではない場合もあるが、何も喋らず、何もわからなかった会議にだけはしたくない。「わからなくなりそうだったら発言する、」ことを心がけて頂きたい。

海外留学・海外駐在をしただけではだめ(英語で商談・交渉をするひとへ)

最後に、「グローバル人材」なることは、コミュニケーションを上手にとることが最終的な目的ではない。ビジネスとしての成果を残すことが目的である。重要な商談や交渉であれば、レベルの高い通訳を利用するほうがいいこともあるかも知れないが、通訳のプロセスにおける意味の欠落を少しでも防ぐため、また相手との信頼関係を築く上でも、直接英語でコミュニケーションをとることがやはり理想である。(もちろん、それが必要な立場の人の場合である。)

筆者自身も数年の海外生活で、英語でのコミュニケーションに多少は慣れたが、日本に居て、日々使わないと同じレベルを維持するのは困難と感じる。もちろん更に力をつける必要も痛感している。

アメリカに3年住んでもほとんど片言しか喋れない人もいるし、海外経験がなくても十分ビジネスレベルの英語を操る人もいる。自分はまず、英語や他の外国語を使って、どのような業務を行うべきなのかという目標を持って、世界とのビジネスにひとりでも多くの人が参加し、経済全体の活性化に結び付けばと願っている。

研究員紹介

瀬戸 鋼一(主任研究員)

海外関連業務を幅広く担当。海外クライアントからの依頼案件の調整、調査報告書等、社内外文書の英語化、海外市場調査等に携わる。近年は、東南アジア市場に関する調査、世界各地の自動車リサイクル関連の調査を実施。