【公立病院改革で新ガイドライン】変革・再編の契機となる可能性

2015年10月
理事研究員 早川 賢

総務省は3月に「公立病院改革の推進について」と題する通知(以下、新ガイドライン)を自治財政局長名で各都道府県首長宛てに発出した。新ガイドラインは、改革プランの策定と、病院機能の見直しや病院事業経営の改革に向けた総合的な取り組みを求めている。

公立病院は「病院の設置・設立がまずありきで、運営や採算性が二の次にされてきた」としばしば指摘される。以前なら補助金などで赤字を補填することができたが、最近では地方交付税も減額傾向にある。病院自体が単体で黒字化できなければ、経営状態が悪化するばかりとなっている。特に建て替え時期を迎えると、自治体の厳しい財政事情により、身動きがとれなくなる病院が増える傾向にある。

このような状況を受けて、新ガイドラインは改革プランの策定に合わせて、公立病院への「地方財政措置」を変更した。具体的には ①公立病院の再編・ネットワーク化を促すため国の財政支援を強化 ②公立病院の新設や建て替え・改修(医療機器の整備を含む)における都道府県の役割と責任を強化 ③病院の運営補助として毎年配分している地方交付税の算定方式の見直し―などである。

とりわけ影響が大きいのは、交付税の算定方式を従来の許可病床数あたりから稼働病床数あたりへ変更したことだ。病床の稼働率が低迷している病院にとっては、病床数の削減を求められたような状況になっている。対応が遅れれば経営状態の悪化、存続の危機に直面することになりかねない。

新ガイドラインは、中途半端な経営見直しでは状況を改善させられない厳しいものである。公立病院の変革・再編の契機となる可能性がうかがわれる。

この背景には、今や日本社会の基調となっている人口減少と高齢化の進展がある。国による財政健全化の取り組みに合わせて、自治体レベルでも医療提供体制に関する財政面からの改革が求められる。

総務省が7月に発表した人口動態調査で、国内の日本人は前年より27万人減少し、1億2616万人となった。1968年の調査開始以来、減少幅は最大を記録し、6年連続の人口減少となった。65歳以上が全体に占める割合は25.9%で、14歳以下(12.9%)の2倍を超えた。

こうした中、政府は「2020年度に基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒字化を堅持する」との基本方針を「骨太方針2015」に明記した。16年度からの3年間を「集中改革期間」と位置付け、18年度の基礎的財政収支赤字をGDP比マイナス1%程度とすることを“目安”として目標を設定した。

基礎的財政収支の対象経費を15年度一般会計の歳出予算でみると、社会保障費が32.7%で最も多く、2番目の地方交付税交付金等(16.1%)を大きく上回る。歳出削減は、社会保障費の実質的な伸びを、高齢化による増加分にとどめることが最大標的の一つとなる。

今後3年間の伸びを1.5兆円程度とするため、政府は ①医療・介護提供体制の適正化 ②インセンティブ改革 ③公共サービスの産業化 ④負担能力に応じた公平負担と給付適正化 ⑤薬価・調剤等の診療報酬と医薬品等に関わる改革―を掲げている。

株式会社共同通信社「Kyodo Weekly」2015年9月21日号掲載