【日本経済】失われた20年の激変と示唆

2016年4月
取締役 矢野 元

格差問題が日本でも大きく取り上げられるようになって久しい。2012年の相対的貧困率は16.3%となり「6人に1人が貧困」とのフレーズがセンセーションを巻き起こした。

トマ・ピケティ氏が主張したように「貧富の格差が広がる」ことは日本を含めて世界的な動向なのだろう。当面の日本においては、大衆の貧困化が深刻な問題であると思われる。

象徴的な数字として、1世帯当たり平均所得金額を見てみよう。ピークは1994年の664万円。これが2013年に529万円となった。約20%も下落している。また「平均」よりも実態に近い中間値では、94年で545万円、13年で415万円と、約24%も下落している。

すなわち、所得の水準が大勢として下方にスライドしただけではなく、所得が低い世帯の割合が増加している。つまり、ダブルパンチである。

このマグニチュードは侮れない。粗い計算だが、課税後の世帯当たり可処分所得では約110万円も下がったことになる。全国の世帯数は95年の4077万が13年に5011万となり、主に高齢・単身世帯が増えていることを考えても、約20年間の累計は巨大なベクトルである。

原因は多様に説明し得る。この20年間に中国は「世界の工場」となり、かつて日本国内にあった生産機能の非常に多くが中国など海外へ出てしまった。グローバルなバリューチェーンにおける日本のポジションは劇的に変化した。

しかし国内における経済の基礎的な要件を、われわれはもっと深刻に受け止める必要がある。つまり人口問題である。

94年から13年にかけて、日本の総人口は1億2400万人から1億2700万人へ微増した。しかし、その内容は激変している。15歳から64歳までのいわゆる労働人口は8700万人から7900万人と、800万人も減少する一方、65歳以上の高齢世代は1700万人から3200万人となり、1500万人も増加している。

14年の国内全就業人口が6400万人、その最大セグメントである自動車関連就業人口が550万人に「すぎない」ことを思えば、この変化がいかに巨大であったかが分かるだろう。

しかもこれは「一過性の過去」と片付けるわけにいかない。このトレンドはまだまだ続く。

さらに15年から30年にかけて、労働人口は7700万人から6800万人へ900万人も減少し、高齢人口は3300万人から3700万人へ400万人の増加が見込まれる。

これだけの規模で、国民経済における付加価値創造基盤に構造的変化が起こったことは、世界でも初めてではないだろうか。いずれ、中国がさらに桁外れな規模で同じ問題に直面することになるだろう。

ここまで構造的に変化すると、ある意味では、もはや別の国になったものとして対処する必要があるかもしれない。さらなる高齢化・貧困化・弱小化が進むなら、戦後復興を通じて獲得してきた、核家族化や高福祉社会化などの「進歩」を根本的に見直さなくては間尺に合わなくなってしまう。これは社会基盤を含めた大掛かりな変革の必要性を示唆する。

新たな「日本列島改造」が迫られているのではないだろうか。

株式会社共同通信社「Kyodo Weekly」2016年3月7日号掲載