【新たなxEV市場】無線充電と自動運転の融合

2016年5月
理事研究員 稲垣 佐知也

リチウムイオン電池(LiB)市場が拡大している。環境問題への取り組みとして各国政府・地域が排ガス規制を強化し、CO2などの排出量を削減するため、販売する自動車の一定数をxEV(HEV、PHEV、EV)※にする必要がある。各大手自動車メーカーが積極的に開発を進めている。

PM2.5問題で揺れる中国でも自動車への規制が始まり、2020年までに累計500万台(PHEV+EV)の普及を目標とする。15年はPHEVとEVを合わせた販売台数(生産台数)が約33万台となり、急速に市場規模が拡大している。

一方でxEV市場、特に純粋なEV市場の拡大には電動走行距離、充電インフラ、充電時間、価格など課題が残る。キーデバイスのLiBは高容量化、低価格化が進み、政府・自治体や自動車メーカーなどが充電インフラの整備を急いでいる。だがユーザーが満足しうるレベルには至っていない。

こうした状況で、一つの案としてワイヤレス給電(非接触型の無線充電)を考えてみたい。電気シェーバー、電動歯ブラシなどで既に使用されており、最近はモバイル機器向けに製品化され始めた。これが普及していけば、現在の課題が解決されるのではないか。

例えば、自宅、スーパー、コンビニ、交差点など、自動車が停車する可能性の高い場所に無線充電システムを設置する。常に充電できる環境が整えば走行距離、充電時間の懸念は解消される。無線による「ちょこちょこ充電」が完成すれば、必要最低限の電池を搭載すればよく、コスト削減につながる。電池を軽量化することでエネルギー効率、いわば〝電費〟も向上する。

これを実現するには膨大なインフラ整備が伴い、解決すべき点は多い。LiBも、充放電の繰り返しによる劣化を防ぐ「サイクル特性」の向上などが求められる。

もう一つの有力な次世代環境対応車として、燃料電池車がある。燃料電池は分散型電源としての利用も想定されており、活用度の広さでワイヤレス給電は劣ってしまうであろう。しかし燃料電池もインフラ整備が必要であり、莫大な投資が掛かる。水素を扱うため安全性への懸念も少なくはない。ワイヤレス給電によって走行距離、充電の心配がなくなれば、結構、快適な車社会ではないだろうか。

もう一つ、近年非常に注目されている技術として自動運転がある。自動運転とEVには一部のアプリケーションにおいて非常に高い親和性がある。空港内のシャトルバス、新都市交通、路面電車、都市内の宅配、タクシー、バスなどである。

これらの交通機関は既に一部で無人運行を導入している。概して短距離、決まったコースを走行しており、効率的な運用によって、高い電費による消費電力の削減、24時間運行が可能となる。無人であるため人件費など相当のコスト削減と、サービス価格の低下が期待できる。

ガソリン車並みの長距離を電動走行するには、電池の大幅な性能向上が必要であり、5~10年単位で解決されるものではない。「無線充電」と「自動運転」技術との組み合わせにより、新たなxEV市場を形成できるのではないかと考える。

※EV:電気自動車 HEV:ハイブリッド電気自動車 PHEV:プラグインハイブリッド電気自動車

株式会社共同通信社「Kyodo Weekly」2016年4月4日号掲載