スマホの光と影

2016年7月
理事研究員 野間 博美

全国大学生活協同組合連合会が2月にまとめた、2015年生活実態調査(対象9,741人)によると、大学生の本離れが一層進んでいることが分かった。それによると、大学生の1日の読書時間は平均28.8分で、前年調査と比べ2.9分短くなった。読書時間が「ゼロ」は45.2%と前年比4.3ポイント増え、これまでの「ゼロ」の割合を更新した。

一方、1日のスマートフォン(スマホ)利用時間の平均は155.9分(男子148.6分・女子164.7分)であった。スマホを持たない、または利用しないは、2.3%(男子3.0%・女子1.6%)とかなり少なく、多くの学生の必携品となっていることを裏付けた。

過去のデータをさかのぼると、読書時間「ゼロ」の割合が40%を超えたのは2013年で、40.5%であった。14年は40.9%、今回(45.2%)の増加率は高い結果となった。13年ごろはスマホの普及が一段落したタイミングでもあり、スマホの普及が大学生の読書時間と関連している可能性は高いと思われる。

実際、空き時間を過ごす象徴的な場所である電車の中で、スマホを利用している人は、見るからに相当な割合に達している。

かつての電車の中は、新聞を読む人、読書をする人、ゲームをする人、雑誌を読む人、おしゃべりをする人など、各人がさまざまな方法で時間をつぶしていたが、今やスマホがその多くの時間を奪っていると思われる。

一方、有史以来、今ほど人類が大量のテキストを消費している時代はないと言われる。最近では動画のコンテンツが増えてはいるものの、インターネット上のコンテンツの多くは依然テキストが中心であり、スマホでも同様である。会員制交流サイト(SNS)でのコミュニケーションや、ブログ、ホームページの閲覧など、われわれは日々テキストを追い続けていると言っても過言ではない。

従って、読書時間が減少していても、その分他の媒体でテキストを読んでいるから「読む」能力は劣っていないという意見もあろうが、私はその意見にはくみしない。

本を読む行為は恐ろしく神経を使う行為であり、プロが真剣につくり上げた文章を真剣に読み解くことは、ネット上のコンテンツをざっくり把握する、という行為とは全く異なるものであると考える。「本を読む」という行為を通して、われわれは感性や能力を磨き、知識を吸収してきたのである。

「読書」という時間を過ごさない人が今後増加していくことによって、将来世の中がどう変化するのかは全く想像がつかないし、あるいは全く何も変わらないのかもしれない。

言うまでもなく、スマホの登場は社会に大きな変革をもたらした。手のひらにインターネットを保有でき、それを持ち運べるようになったという変化は、ネットの登場以上のインパクトということができるかもしれない。しかし、検索で瞬時に分からない情報を調べられるようになった結果、考える、覚えるといった能力が衰える可能性もある。

スマホが持つ、光と影の効能を考慮しながら、適切な距離感で付き合っていくしかなさそうだ。

株式会社共同通信社「Kyodo Weekly」2016年6月6日号掲載