マーケットインを意識した開発を

2017年4月
理事研究員 稲垣 佐知也

国家レベルで様々な技術開発プロジェクトが行われている。国家プロジェクトであるが故に、商業的な成功を狙って行われる性格のプロジェクトはほとんどなく、基礎開発に関するものが多い。当然、マーケットを意識したモノにはなりにくい。
企業が単独でリスクを負えない開発であり、特定の企業の売り上げに貢献するわけには行かないため、基礎開発に特化せざるを得ない背景は理解できる。基礎開発を無視する訳でもなく、ノーベル賞を始めとした数々の開発関連の賞を受賞しているのは基礎開発を重視した結果であり、それなくして商業化も有り得ない。しかし、最も危惧されうるのは余りにも基礎的、学術的、技術的な開発に注力を置いた結果、実際にビジネスとしてなり得る商品開発には至っていないことが多い点である。つまり、開発することそのものが目的になっており、製品としての活用方法や想定されるユーザーなどが念頭に置かれておらず、マーケットを意識した開発になっていない。

例えば、米国では超最先端、先端、製品開発、商業開発と段階的にプロジェクトが組まれている。韓国でもWPM(World Premium Materials)という素材育成国家プロジェクトがあるが、単純にスペックのみを追求するのではなく、量産時の生産量、価格まで目標として掲げられ、世界市場である一定のシェアを獲得することが掲げられている。かつ、製品が開発されただけでは販路がないため、ユーザー企業もプロジェクト参与企業として参加している。つまり、実際に製品を使用するユーザーとともに開発を行っているのである。

米国でこのような話を聞いたことがある。ある日系企業の開発責任者が開発した部品をユーザー(最終ユーザーではない)へ売り込みに行ったところ、「最終製品は何を想定していて、誰にどうやって売っていくのか?」という質問を受けたという。こうした質問は別に珍しいわけではなく、米国の場合、どうやって実際に世の中に広めていくかを常に頭の中に念頭に置いて開発しているケースが多いという。マーケットインが常に意識されているため、技術開発だけに特化されている訳ではない。

日本はどちらかといえば「良いものが売れる」という考えであろう。そのため、最高のものを作ることを最優先する。繰り返すが、決してこれを否定するものではない。ただ、時には独りよがりにならず、マーケットの声に耳を傾け、作りたいものを作るのではなく、顧客が欲する製品を作って行くことも重要なのではないか。 世界では「売れたものが良いもの」という考えもある。独りよがりにならず、顧客が求める製品を忠実に作っていく。オーバースペックにならずに、バランスのとれた価格で販売することを想定した上で開発を進めていく。現在、半導体、液晶など、様々な分野で主要メーカーが日本から韓国、台湾、そして中国に取って代わられている(つつある)が、これは結果として顧客からスペックと価格のバランスが良い点、費用対効果が評価されてのことである。

様々な分野で高品質、高機能の製品を開発し続け、技術で世界をリードしていくのが日本であり、これが日本ブランドを生み出していることは事実である。しかし昨今のマーケットの状況を見ていて日本企業のシェアや存在感が低くなっている産業を見ていると、国家プロジェクトにおいても、製品によってはマーケットで販売されることを想定しつつ、開発を進めたり、企画していくべきではないかと考える。