今週の"ひらめき"視点

国連総会、米の孤立、鮮明に。日米は2国間物品貿易協定(TAG)に向けて協議スタート

5月、米国はイラン核合意から一方的に離脱、対イラン経済制裁を再開、11月には原油を対象とする第2弾の制裁を発動する。こうした中、24日、EUのモゲリーニ外交安全保障上級代表は「イランとの貿易を継続、促進するための特別目的事業体(SPV)を設立する」と発表した。イランとの貿易を合法的に行なえる体制をEU内に整えることで、核合意に関する国際的な枠組みを維持する。イランのザリフ外相も同席した会見で、同氏は「SPVは欧州の企業だけでなく他の国々にも開かれるだろう」と発言、米国と一線を画すEUの姿勢を明確にした。

翌25日、トランプ氏は国連総会で「グローバリズムの拒絶」、「米国第一主義の推進」、「貿易不均衡の是正」を明言するとともに、“歴代大統領より多くの成果を成し遂げた”と自賛した。会場からは失笑も漏れたが、トランプ氏の自国至上主義と国際社会を軽視する姿勢への懸念と反発が目立った。とりわけ、中国、ロシア、中東、欧州との対立が顕在化、仏のマクロン大統領は「我々の価値の普遍性を攻撃するために、国家主権を利用すべきではない。そのような国家主義者に主権の理念を委ねることはない。我々は強者の掟を信じない」と言い切った。

トランプ氏はその前日、対中制裁関税の第3弾を発動、中国からの輸入品2000億ドル分に10%の追加関税を課した。中国も600億ドル分の米国製品を対象に直ちに報復関税でこれに応じた。米中貿易戦争は中国をして「首にナイフを突きつけられている」(王受文商務次官)と言わしめる段階まで来た。今度は日本が矢面に立つ。体裁はTAGである。しかし、交渉の土台とすべきは主権国家としての普遍的な価値そのものである。


今週の”ひらめき”視点 9.23 – 9.27
代表取締役社長 水越 孝