今週の"ひらめき"視点

ルノー、日産、経営統合問題。日産は統合交渉から逃げるな

ルノーが日産に再び経営統合を打診した。昨年11月、両社をバランスさせてきた“カリスマ”の突然の不在を受け、両社の主導権争いが表面化する。4月12日、ルノー、日産、三菱自は、3社のトップで構成される新たな会議体を設置、グループの最高意志決定機関とすると発表した。ルノーのスナール会長も合議体によるグループ運営への移行を支持、経営統合問題は棚上げされた、はずだった。

しかし、実際には上記会議の前後にルノー側からあらためて経営統合が提案されていた。日産経営陣はこれを拒否、あくまでも独立企業としての提携関係を維持したい考えだ。
一方、ルノーにとって統合は言わば悲願である。2018年9月、ルノーはカルロス・ゴーン元会長を通じて経営統合を日産に提示した。今年1月にも大株主である仏政府から日本政府に統合の意向が打診されている。そして、4月というタイミングでの再提案は定時株主総会を前にした日産への牽制であることは言うまでもない。
確かに現時点における2社のポジションは業績、技術力ともに日産が上である。しかし、だからこそルノーは破綻した日産の“将来”に投資したとも言える。議決権ベース43.4%の資本の意味は軽くない。

国交省、経産省は2030年度までに2020年度目標から3割の燃費改善を義務付けるとともに次世代低燃費車の普及目標を引き上げる方針だ。環境規制、次世代自動車では欧州、中国勢が先行する。2018年3月期の研究開発投資は日産が4,958億円、ルノーが3,800億円、2社を合わせてもトヨタに及ばない。フォルクスワーゲングループの研究開発投資は1兆5千億円を越える。
今、未来の競争優位の確立に向けて、自動車市場は新たな提携、再編の波の中にある。主役はCASEを牽引する大手ITや新興ベンチャーだ。そうした中にあって“仏、日本、それぞれの国益”などと言う議論に両社の利はない。競争に取り残された時、次の買収者はもはや自動車メーカーではないだろう。日産は未来を生き抜くための統合シナリオの構築をこそ急ぐべきだ。資本の問題は統合戦略を主導し、結果を残してゆく中でいずれ解消できる。


今週の”ひらめき”視点 4.21 – 4.25
代表取締役社長 水越 孝