今週の"ひらめき"視点

新型コロナ、試されているのは危機への対応力と未来の構想力

世界規模での新型コロナウイルスの猛威は企業業績に重大な影響を与えつつある。12日、トヨタ自動車は2021年3月期の連結営業利益が前期比8割減になるとの見通しを発表、経済界に衝撃を与えた。しかし、そもそも当期業績への影響を見極めることが出来ない企業も少なくない。5月6日までに決算短信を発表した上場企業の6割が2021年3月期の見通しを「未定」とせざるを得なかった。

中小企業の状況は更に深刻だ。外出自粛と休業要請が長期化する中、宿泊、飲食、サービスなど個人消費関連事業者の資金繰りが限界に近づく。帝国データバンクによると5月13日までに確認された新型コロナウイルスの影響による倒産は破産74件、民事再生13件、事業停止が55件でそのほとんどが自己破産の準備に入っている、という。
しかし、これは氷山の一角であろう。問題は法的整理に至る前の廃業である。

2017年、経済産業省は今後10年間で245万人もの中小企業経営者が70歳を越えると推計、そのうえで、こうした企業の休廃業によりGDP22兆円、雇用650万人が失われると試算した。
今、政府系金融はもちろん民間金融機関も返済据え置き期間を2年から5年に延長、最長返済期間を15年~20年に設定するなど新型コロナウイルス対策の特別貸付枠を拡充、中小企業の資金繰りを支援する。
しかし、後継者の不在率が6割を越える中小企業において、果たして高齢の経営者が新たな長期負債を背負う決断をするであろうか。

多くの医療関係者が「新型コロナウイルスの収束には1~2年はかかるだろう」と言う。「否、完全な終息はない」とする専門家もいる。いずれにせよ、もはや新型コロナウイルス以前の世界に立ち返ることはないだろう。働き方、消費行動、教育、サプライチェーン、金融、医療、移動、物流、、、すべての領域でデジタル・トランスフォーメンションが加速する。
上記した経済産業省予測は「2025年頃まで」に起こり得る事態として推計されたものである。今、新型コロナウイルスがその時間を一挙に短縮しつつある。構造変化の負の側面をいかに最小化出来るか、未来に向けての投資をどこまで維持出来るか、新型コロナウイルスは私たちにこの2つの課題を突きつける。


今週の“ひらめき”視点 5.10 – 5.14
代表取締役社長 水越 孝