今週の"ひらめき"視点

ドコモ、NTTの完全子会社へ。値下げと国内NO1の維持に目的が矮小化されてはならない

29日、NTTは上場子会社NTTドコモの完全子会社化を発表、NTTグループは再び統合に向かう。所管官庁である総務省もこれを容認、1985年以来、旧電電公社の民営・分社化に象徴される規制緩和を通じて、成長と競争を促してきた通信産業政策は大きな転機を迎える。

会見では、国内トップシェアでありながら低収益に甘んじるNTTドコモに対する不満と反省も伺われたが、「世界レベルのダイナミックな環境変化に対応したい」(NTT澤田社長)、「NTTの強力な資産を活用し、グローバル競争力を高める」(NTTドコモ吉沢社長)など、次世代通信技術で先行する欧米や中国勢に対する危機感が強調された。

とは言え、完全子会社化すれば直ちに勝てるわけではない。GAFAに対抗し得るプラットフォームを現時点で築くことは不可能だし、基地局市場もファーウェイ、ノキア、エリクソンの3社が8割を押さえる。米中対立によって生じるファーウェイの隙をつくことで一定のシェアがとれたとしても、5G世代における周回遅れを解消するには至らない。

本命はNTTネットワーク基盤技術研究所が手掛ける光技術による大容量、低遅延、低消費電力の次世代無線ネットワーク、IOWN(アイオン:Innovative Optical & Wireless Network)構想のグローバル展開か。5Gのその先を見据えたオープン・ネットワークの可能性は技術的にも市場的にも大きい。NTTドコモの運用ノウハウと技術はその実装に欠かせない。ただ、同じく完全子会社である地域会社を抱え込んだままの大所帯で、大胆かつ迅速な意思決定が可能であろうか。

会見ではグローバル市場における競争相手が “非通信会社” であることの脅威が語られていたが、そうであれば巨大な既得権を擁するオールNTTの再現はむしろ足枷ではないか。次世代IT市場を勝ち抜くためには身内のパズル合わせを越えた次元での経営資源の補完と再配置が必須である。そのためにもまずはNTT自身が、34.69%を持たれている “霞が関” から自由になることが肝要だ。そうあってはじめて本物の革新が期待できる。


今週の“ひらめき”視点 9.27 – 10.1
代表取締役社長 水越 孝