行き過ぎたグローバリズムに対する過剰な政治的反動が世界を萎縮させてゆく


WTOにおける「市場経済国」の認定を巡って欧州委や米国と対立する中、中国は企業の海外投資を規制する方向に舵をきった。
500万ドルを越える海外企業の買収や外貨購入に対して当局との事前面談を義務づける。あわせて小口分散送金や中国本土発行カードによる香港の保険商品の購入を禁止する。これらは人民元の流出に伴う通貨の下落に歯止めをかけること、M&Aを個人資産の国外移転に活用する企業家の行動を封じることが狙い。

実際、中国企業による海外投資は今年に入って5割増のペースで続いており、金融機関を通じた資金の流出超過は16ヶ月連続、流出総額は5000億ドルを越える。と言え、今回の規制は単なる経済政策に止まるものではなく、汚職・腐敗防止運動とも脈を通じる多分に政治的なものである。それゆえに中国の国内情勢と景気回復に対する懸念を、世界により印象づける。WTOによる認定の可否はともかく、実体としての市場経済化はまだまだ遠い。

一方、29日、米ユナイテッド・テクノロジー傘下の空調大手「キヤリア」はメキシコへの生産拠点の移転を中止すると発表した。選挙期間中、一貫して同社の経営方針を非難してきたトランプ氏は「工場移転を阻止し、インディアナ州の雇用を守った」と高らかにSNSに投稿した。
民に対する政治のあからさまな介入が喝采を浴びる。いや、そんな時代は長くは続かない、はずである。

今週の”ひらめき”視点 11.27 – 12.01

代表取締役社長 水越 孝

 

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