カジノ法案、成立。問われているのは「賭博」の是非だけではない


カジノを含む統合型リゾード(IR)の整備を政府に促す議員立法が成立した。国会における中心的な論点はギャンブル依存症の問題であったが、そもそもIRを国家の成長戦略にどう位置づけるのか、まさに根本的な問題が置き去りにされている。

IRの成功事例として引用されるシンガポールであるが、IRがシンガポール経済の成長を牽引したわけではない。
金融、ICT、医療、教育、港湾に対する優先的な投資、徹底した規制緩和、政府・行政の効率化、英語教育の強化、、、これらを通じて国際的なビジネス環境を整備し、外資を呼び込むことに成功したことが背景にある。つまり、グローバル化による成長戦略がIRの成功条件となったということであり、観光だけが切り出されているわけではない。

シンガポールの場合、そもそも多民族、多文化、多言語国家でありグローバル化の基盤が確立していたことも有利であった。世界から投資を魅きつける国際金融都市のIRであるから意味があるのであって、そうでなければただの公設賭博場に過ぎない。

ホテル、会議場、レジャー施設が一体となった単体事業の破綻はリゾート法でいやと言うほど経験しているはずだ。投資対象国としての魅力や地域の活力をどうつくってゆくのか。問われているのはそこだ。
一方、シンガポールは成長の過程でアジア有数の格差社会を生み出した。はたして日本はどこを目指すのか。IRに内在する本質的な問いに答えることなく、事業のみが目的化され一人歩きする。

今週の”ひらめき”視点 12.11 – 12.15

代表取締役社長 水越 孝

 

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