高度な価値を適切な対価で取引するマーケットの創造こそ、最良のデフレ対策となる


労働需給がタイトになる中、小売業界も営業時間の短縮に動き出した。阪急阪神百貨店、イオングループ、ルミネなど大手流通や有力商業ディベロッパーが平日の閉店時間を30分から1時間程度早める。人手不足を背景とした営業時間の見直しは外食産業が先行してきたが、ここへきて小売も追随する。

売上効率に対応した営業時間の短縮に異論はない。働き方改革という時代の要請もある。しかしながら、プレミアムフライデーに象徴されるように「残業時間を減らし、平日の終業時間を早めることで消費の活性化をはかる」ことが政策の流れである。都市部の小売事業者にとってはむしろチャンスであって、横並びの時短が結果的に消費機会を奪うのでは本末転倒である。ECへと購買行動が流れるのは当然である。一方、そのECもまた物流業界の人手不足が成長の足かせになりつつある。

とは言え、原因を人手不足にのみ帰すことは出来ない。そもそも「売れない」のは営業時間帯の問題ではあるまいが、遅い時間帯の通常営業や指定時間配送といった高質なサービスが当然のごとく無償で提供され続けてきたこと、逆に言えば、便益に相応の対価を提案できないほど差別化要件を失ったサプライサイドの劣化を指摘したい。
1人当り生産性を高め、国全体の成熟度を維持するためにも本来的な価値の問い直しが必須である。製品やサービスの不断のイノベーション、そして、それを正当な対価をもって受容する創造的な市場への脱皮が急がれる。

今週の”ひらめき”視点 03.05 – 03.09

代表取締役社長 水越 孝

 

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