三越伊勢丹、社長交代。百貨店は新たな業態として再生できるか


13日、三越伊勢丹ホールディングスは3月31日付けで大西洋社長が辞任、4月1日付けで杉江俊彦専務が昇格する人事を発表した。杉江氏は、従来の多角化路線を引き継ぎつつも、「成長事業の育成より構造改革を優先する」ことを表明、大西氏の社内コミュニケーション不足を指摘したうえで「中間管理職との対話を重視したい」との方針を語った。
後任未定のまま社長の辞任が報道されたのが6日、組合との対立がトップ交代の背景にあるとも伝えられるが、いずれにせよ正常でない内部の様相が推察される。

とは言え、従業員の不満を解消することで経営が再建出来るわけではない。
現在の苦境は、株高と訪日中国人による一時的な高額品需要の高まりに安易に便乗した営業戦略上の失敗である。言い換えれば、上質な中間層という本来の顧客に背を向けたことの反動である。ただ、それだけであれば売場改革と効率化で乗り切れる。問題は絶対的な供給過剰であり、かつ、需給ギャップはもはや量の問題として解決出来るレベルにないこと、言い換えれば、縮小均衡策の賞味期限は既に終わっているということである。

アパレルとの二人三脚で日本の消費市場を牽引した百貨店の使命はとうの昔に終焉した。今、三越伊勢丹ホールディングスに必要なことは本業そのもののイノベーションであり、成長機会を見つけ出すための柔軟な社内風土と資源の集中投下を可能にする意思決定力である。
ゆえに、新体制が取り組むべき優先順位は成長に向けてのビジョンの策定とそれを完遂する覚悟を表明することである。百貨店の再起を夢見る労使の馴れ合いなどまったく必要ない。

今週の”ひらめき”視点 03.12 – 03.16

代表取締役社長 水越 孝

 

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