「人口1億を前提とした社会」の維持に黄信号、問われるのは“本気の覚悟”である


10日、国立社会保障・人口問題研究所(厚労省)が2065年までの将来推計人口を発表した。推計の前提となる合計特殊出生率は前回の1.35から1.44へと若干改善、1億人を割り込むのは2053年、前回推計値より5年遠のいた。しかし、それでも現在(2015年)から50年後、2065年には今の3割減、8808万人となるという。

出生率の改善は朗報だ。しかし、政府目標の「希望出生率1.8」とは大きな開きがあるし、そもそも合計特殊出生率における人口置換率は2.07である。昨年、政府は「人口1億人の維持」を国家ビジョンとして表明、ようやく人口問題を政策の重要テーマと位置づけた。しかし、2.07をはじめて割り込んだのは1974年であり、将来の人口危機は既にその時から始まっている。つまり、40年を越える政治の無策と楽観、先送りの積み重ねがこうした事態の背景にあると言え、ゆえに「1億人維持」という政治の言葉にどこまでリアリティがあるか、はなはだ疑わしい。

4月1日、静岡市は政令指定都市ではじめて、その目安とされる人口70万人を割り込んだ。過疎への流れは今や地方の中小都市や中山間地域に固有の問題ではない。もしも1億人を前提とした未来を本気で目指すのであれば、もはや移民の受け入れや非嫡出子の問題を含む家族制度改革に踏み込まざるを得ないということだ。
とは言え、夫婦別姓すら棚上げされる状況にあって、そこまでの“覚悟”を今の政治に期待するのは現実的でない。であれば速やかに目標を変更し、8-9千万人を前提とした社会の制度設計に着手する必要がある。

今週の”ひらめき”視点 04.09 – 04.13

代表取締役社長 水越 孝

 

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