商工中金の不正問題にみる中小企業金融の課題と可能性


政府系金融機関の商工中金が国の制度融資で不正を行っていた問題で、金融庁は、24日、本店などへの立ち入り検査を実施した。不正の背景や経営陣の関与の有無などを調べ、原因の解明を図る。
不正の内容は大きく2つ、①制度金融を必要としない企業に数字を改ざんして貸し出した、②経営不振など他の事由による資金需要に制度金融の枠組みを当てはめた、ということである。一言で言えば、ノルマに追われた職員や支店が自分の業績アップのために制度金融を不正に利用した、ということである。
ただ、問題の背景には制度金融における手続きの不透明さと本当に支援を必要とする企業にとっての“使い勝手の悪さ”がある。災害など一時的かつ急激な外部環境変化を受け止める余力は中小企業にはない。したがって、公的なセーフティネットの意義は大きい。とは言え、運用方法も含めて制度自身が曲がり角にきているとも言える。

一方、中小企業金融の主役は地銀、信金、信組といった地域金融であり、会員出資による非営利組織である信金が担う役割は大きい。しかし、その信金の平均預貸率は50%にとどまる(2016年3月)。気仙沼、石巻、あぶくま、など東日本大震災被災地域の信金が平均を下回るのは“貸し出し先が戻らない”ことが要因であろう。止むを得まい。ただ、まさに制度金融の対象であるこうしたエリアを除けば、地域のお金を地域へ再投資する役割を担う信金の預貸率が5割では物足りない。
トップは西武信金で76%、その西武信金はこの4月から“ららぽーと立川立飛”に100㎡の売場面積を借り、将来性の高い融資先に対して低負担で出店機会を提供する事業をスタートさせた。
今、地域金融に求められるのは、地域金融自らが汗をかいて“貸せる会社”を創り出し、それを長期的なスタンスにたって支援、育成することにある。貸し出しリスクのない会社など限りがある。新たな資金需要の創出に自らが当事者として参画してゆかない限り、自らが再編の対象となるリスクを背負うことになる。

今週の”ひらめき”視点 05.21 – 05.25

代表取締役社長 水越 孝

 

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