対日投資基準、公表へ。国益はどこにある?


財務省は、外国人による対日投資の審査基準を改定し、8月を目処に公表すると発表した。原子力、エネルギー、航空宇宙、防衛関連企業やインフラ関連企業の株式を一定以上取得する際の事前審査基準を明確化し、技術流出を防ぐとともに、審査の透明性を高めることで対日投資の拡大を促す。
この5月の外為法改正で重要技術の海外流出に対する罰則は強化された。しかしながら、審査基準は公表されておらず、手続きの不透明さが対日投資の阻害要件であるとの指摘があった。政府は2020年における対日直接投資残高を2012年時点の倍、約35兆円に拡大させるとの目標を掲げており、その意味で、審査基準の公表は海外投資家の対日投資に対する懸念を軽減するものであり、歓迎したい。

とは言え、技術流出に対する過度な警戒は産業の活性化につながらない。先端技術を国内に留め置き、海外企業との提携に制約を課していては、そもそも企業はグローバル市場を勝ち抜けない。資本、技術、情報、人の移動に対する恣意的な国の介入は結果的に日本の国際競争力を抑制する。
一方、今回改定される新基準は企業買収や株式取得など対企業投資に適用されるものであり、かねてより懸念されている外国資本による森林等の買収を防ぐものではない。
安全保障という観点に立てば企業への投資だけが懸念事項ではない。守るべき国益とは何か、省益を越えた次元でその根本を問い直す必要がある。

今週の”ひらめき”視点 07.09 – 07.13

代表取締役社長 水越 孝

 

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