“高等教育の無償化”議論を大学再編の契機に


“消費増税の使途変更”を問うた衆院選で、各党はそれぞれの「教育の無償化」を公約に掲げた。家庭環境や貧困によって進学を諦めざるを得ない子どもたちに社会が手を差し伸べることに異論はない。給付型奨学金の拡充も実現したい。しかし、誰もがタダで大学に通えることが望ましい税金の使途ではあるまい。
大学教育における根本的な問題は供給過剰による選抜機能の形骸化、教育品質の低下、そして、研究基盤の脆弱さ、にある。

基礎科学の国際競争力は“主要6カ国のTOP10%論文シェア”(科学技術振興機構)が参考になるが、この20年間で日本は競争力を大きく後退させた。日本は材料科学分野で▲8ポイント、物理学でも▲3ポイントのシェアダウン、一方、中国は材料で+30ポイント、物理で+19ポイントとシェアを向上させている。日本も数学・コンピュータ分野では+0.4ポイントと健闘したが中国の伸び率+20ポイントには及ばない。結果、2015年におけるこれら3分野における中国の論文数は日本の6.6倍、3倍、5倍となっており、基礎科学における日本のプレゼンス低下は明らかである。

産学連携の推進、知財の民間活用も重要だ。とは言え、短期的な成果への偏重はむしろイノベーションの芽を摘みかねない。教育機関としての役割と研究機関としてのビジョンを明確にしたうえで、長期的な視点に立って十分かつ適切な予算を配分すべきである。そのためには社会資本としての大学の再定義と研究活動の公正な評価システムの導入が不可欠である。

今週の”ひらめき”視点 10.29 – 11.02

代表取締役社長 水越 孝

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