公文書は誰のものか、本質を外したガイドラインに意味はない


政府は公文書管理の厳格化を目指したガイドラインを公表した。新指針は、行政の意思決定プロセスなど国民に対して説明する責務がある文書の保存期間を1年以上と規定し、重要文書の安易な廃棄を防ぐ、とする。一方、職員間の日常的な業務連絡や公表文書の写しといった文書は例外とされ、1年以内の廃棄も認められる。

何も手を打たないよりマシかもしれない。とは言え、新指針でも文書種別の区分けや保存期間に関する判断は当事者である各省の部課に委ねられたままである。実際の運用における懸念はまったく変わらない。むしろ、「厳しくなった新指針」のもとでの運用ゆえに、隠れ蓑は厚さを増したと言えるかもしれない。森友・加計問題への批判をかわすための“アリバイづくり”にも見える。

そもそも公文書とは誰のものであるのか、この本質を踏まえて設計するのであれば、公開・保存の原則、重要性判断に際しての非当事者の介在、第3者機関による検証、および、罰則規定は不可欠の要件である。
昨年、米大統領選に敗れたヒラリー・クリントン氏の私用メール問題とは一体何であったのか。それは、「政府高官が公務で交わした通信、書簡はすべてアメリカ国民のものであり、ゆえに将来の公開を前提に保存しなければならない」という連邦記録法に対する違反が問われたのである。原則に立ち返った議論を期待したい。

今週の”ひらめき”視点 11.05 – 11.09

代表取締役社長 水越 孝

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