行き場を失いつつある既存金融とウルグアイの仮想通貨にみるマネーの将来


大手銀行7グループの中間決算が出揃った。長期化する日銀のマイナス金利を背景に資金貸出による資金利益は7社すべてでマイナス、業務純益のプラスは消費者ローンが好調だった新生銀行と特別配当を計上した三井住友FGの2社のみとなった。メガバンク各行は決算に前後して国内店舗網の縮小、事務作業の効率化による業務量の削減を骨子とした構造改革案を発表、とりわけ「1.9万人」と数値を明示しての人員削減案を打ち出したみずほFGの“覚悟”は既存金融の「稼ぐ力」の後退を象徴する。

フィンテックの波がマネーのサプライチェーンを大きく変えつつある中、既存業界の構造転換は避けられまい。しかし、より本質的な問題は投資の受け皿が世界規模でなくなりつつあるということだ。国内企業の内部留保はこの4年間で100兆円積み増され、400兆円を越えた。米運用会社の資産規模も20兆ドルを突破、過去最高になった。世界の通過供給量は1京円、この10年間で7割増え、世界のGDPを16%上回るという(日経)。こうした中での株高、そして、不動産や仮想通貨相場の高騰。日米欧の金融緩和の限界が見えつつある今、その反動は量的にも質的にもコントロールが難しくなりつつある。

11月3日、ウルグアイの中央銀行がブロックチェーン技術を活用した法定デジタル通貨“eペソ”の試験運用をスタートさせた。中央銀行による仮想通貨の発効は欧州、中国、ロシアなど主要国が計画を表明しているが、人口344万人の南米の小国が世界に先駆けた点が痛快だ。導入の狙いは紙幣の印刷、運搬、警備費用の削減と資金洗浄や脱税の防止など極めてリアル、まさに実体経済そのものとして実験が行われる。そう、フィンテックの効用と可能性はまさにこのようなシンプルな領域にこそあるのかもしれない。

今週の”ひらめき”視点 11.12 – 11.16

代表取締役社長 水越 孝

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