トランプ氏、イラン核合意からの離脱を表明。国際協調体制、再び揺らぐ


8日、トランプ氏はかねてから批判し続けてきたイラン核合意からの離脱を正式に表明、「最高レベルの経済制裁」を科すと宣言した。
英独仏は直ちに“合意継続”を発表、イランのロウハニ大統領も対米非難を強めながらも当面は“米抜き合意”を維持したい旨声明した。

2015年、主要6ヶ国(米英独仏中露)はオバマ氏主導のもと核開発の制限と経済制裁の解除についてイランと合意した。
制裁解除後のイランは翌年に輸出が3割増、輸入も2割増となるなど、経済は徐々に正常化に向かいつつあった。とりわけ中国の動きは早く、合意直後の2016年1月には習近平氏が外国元首としてはじめてイランを訪問、エネルギー、インフラ、IT、金融など17分野において10年間で貿易総額を6千億ドルへ拡大するとの覚書を締結、独仏をはじめとする欧州勢も対イランビジネスを活発化させてきた。
人口8千万人を擁するイランは治安も比較的安定しており、成長ポテンシャルは高い。一方、中東情勢は依然として混迷の中にある。シリアにおけるイラン・ロシアVS欧州・米国との対立も深刻だ。パレスチナも極限状況にある。それゆえにイラン核合意は中東の安定に向けての所与の前提条件であり、拠り所の一つであった。

トランプ氏は、原油代金の決裁のためにイラン中央銀行と取引する外国銀行に対して180日間の猶予後に制裁を発動する、と言明した。日本は経済制裁中にあってもイランからの原油輸入を継続、全体の7%をイランに依存している。影響は避けられない。
更に、イラン核合意に対する強硬姿勢は「北朝鮮に向けてのメッセージである」とも言う。朝鮮半島情勢緩和への期待が高まる中でのトランプ氏からの言わば“冷や水”は、中東、東アジアの未来を再び不透明にするだけでなく、経済活動の萎縮、反米・対米不信の拡大、主要国の利害錯綜を招く。結果、高まるのは中国のプレゼンスである。であれば米国にとって決して“良いディール”ではあるまい。いずれにせよ世界が負担する代償は小さくない。

今週の”ひらめき”視点 4.30 – 5.10

代表取締役社長 水越 孝

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