長引く低金利、縮小する営業基盤。地銀の再編は最終局面へ


金融庁は、地方銀行106行のうち約4割の40行が3期以上連続で赤字となった、と発表した。人口減少や低金利で収益が悪化する中、有効な打開先を打ち出せない地銀の苦境があらためて浮き彫りになった。実際、銀行の収益力は急速に低下しつつある。全国銀行協会がまとめた2018年3月期の決算データによると、国内116行の業務粗利益は手数料収入と外国為替売買を除くすべての科目で前年を割り込んだ。結果、業務粗利益の合計は10兆12億円、前年比6072億円、5.7%の減収となった。こうした収益環境の悪化に加えて、地方における急速な需要縮小が地銀を追い込む。

低金利による利ざやの減少は手数料収入への依存度を高める。この春、多くの銀行が振込や両替の手数料の値上げに踏み切った。法人向けでも様々な「仕組み」を活用した融資を提案することで手数料収入増を狙う。金融庁から業務改善命令を受けた東日本銀行の「不明瞭な融資手数料の徴収」はその一線を越えたということである。
一方、借り手不足を補うためプライベートバンキングやカードローンなどリテール事業も強化される。スルガ銀行の投資不動産をめぐる不正融資は、まさに積極的なリテール部門における“行き過ぎた需要創出”の結果である。

こうした中、地銀の再編は最終ステージへ向かいつつある。従来は、同一商圏における下位行同士の統合または隣接地域における広域統合が主流であった。しかし、ここへきて、“メガ地銀”化や特定地域における寡占化への動きが顕在化しはじめた。象徴的な事例が、ふくおかFGと十八銀行の統合問題である。ふくおかFG傘下の親和銀行と十八銀行の統合が実現すると長崎県内でのシェアは7割に達する。現在、公正取引委員会で審査中であるが、公取委と金融庁との見解は対立する。
健全な競争が制限される企業統合は排除されるべきか、縮小する地方にあって体力のあるうちに経営基盤強化をはかるべきか。フィンテックの進展が既存金融の競争優位を脅かしつつある中、問われているのは地方金融の未来そのものである。

今週の”ひらめき”視点 7.15 – 7.19

代表取締役社長 水越 孝

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