世界の実体経済、不確実性高まる。最大リスクは中国構造改革の遅れ


19日、トランプ氏は米中貿易交渉の順調ぶりをアピールするとともに3月1日を期限とした協議の延長可能性を示唆した。輸入拡大や市場開放については中国が譲歩する形で交渉が進展、一方、国営企業の優遇、技術移転問題、知財侵害等における対立は依然厳しいという。
JPモルガンが発表した最新のグローバル製造業購買担当者景気指数(PMI)によると11月のPMIは52.5、12月が51.5、1月には50.7へ低下した。低下は9ヶ月連続、2016年10月以来の最低レベルである。世界の実体経済の不確実性は高まっており、米中貿易戦争に伴う中国経済の減速が懸念材料であると指摘する。

しかし、中国経済の低迷は米中問題が主因ではない。米中問題の本質はむしろ“政治”であって、根本的な課題は中国経済そのものの脆弱さにある。2017年8月、国家発展改革委員会は海外直接投資の抑制に舵を切る。当局の狙いは緊急対策としての“民間資産の海外移転の押さえ込み”にあった。つまり、既にその時点で対内直接投資と対外直接投資のアンバランスが看過できない水準になっていた、ということである。先月末の外貨準備高は3兆1千億ドル、ピークを3割下回る。対米輸出における制約も加わって外貨流出リスクは更に高まる。

外需から内需へ、世界の工場から製造強国への道のりが不透明となる中、当局は3月の全人代を前に大規模な財政政策を打ち出すだろう。6%台の成長は維持されるはずだ。しかし、結果的に構造改革は遅れ、中間層の拡大は頭打ちとなる。資金の供給者であり年間輸入額1兆8千億ドルという“買い手”としての中国の失速は国際社会における影響力の低下を意味するとともに、権力基盤の脆弱化を招く。対外的な強面ぶりと内部統制は更に強まるかもしれない。

16日、毛沢東の元秘書で、大躍進と文革を批判し、天安門で失脚した趙紫陽の名誉回復を主張し、「棺に党旗をかけるな」と言い残した李鋭氏(101歳)が逝去した。民への不信がある限り、構造改革の成就はない。当局は無数にいるはずの市井の“李氏”たちの声に耳を傾けることが出来るか、“核心的利益”の再定義が求められる。

今週の”ひらめき”視点 2.17 – 2.21

代表取締役社長 水越 孝

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