プレスリリース
No.2008
2018/10/12
地域エネルギーマネジメント事業に関する調査を実施(2018年)

2030年度の国内地域エネルギーマネジメント事業における設備・システム構築市場規模を350億円と予測
~電力自営線を使用するスマートコミュニティ事業で省エネとBCPを実現~

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)では、国内の地域エネルギーマネジメント事業を調査し、事業者の現状と戦略を分析して、同事業における設備・システムの構築市場規模推移を明らかにした。

地域エネルギーマネジメント事業における設備・システム構築市場規模推移・予測
地域エネルギーマネジメント事業における設備・システム構築市場規模推移・予測

1.市場概況

地域エネルギーマネジメント事業では、平常時にはCEMS(Community Energy Management System)によるエネルギー需給の最適管理制御を行なって省エネやCO2排出削減を行ない、非常時(電力系統停電時)には電力自営線を使用して自立的に電力供給することにより地域内の各施設のBCP(事業継続計画、以下 BCP)に貢献する。地域エネルギーマネジメント事業ではエネルギー供給のための設備・システムとして、再生可能エネルギー発電設備やコージェネレーション設備、電力自営線、熱導管、CEMS等が導入・構築される。それらの設備導入には初期コストがかかるが、省エネ運用によるエネルギー費用の削減効果により、設備投資費用は回収できるとともに、その後は経済的メリットが継続する。
地域エネルギーマネジメント事業における設備・システムの構築市場規模(当該年度中に竣工[完成]した設備・システムの導入・構築費用ベース)は、国内でスマートコミュニティ事業が立ち上がり始めた2012年度には20億円であったが、2017年度には150億円になり、2018年度には200億円になると予測する。

地域エネルギーマネジメント事業が成立するためには、対象となる地域内においてエネルギー需要が集中しており、低コストのシステムでエネルギーの供給と融通ができることが必要である。CEMSはICT・クラウドのシステムであるため、対象となる施設・設備が分散して配置されていても問題ないが、地域内のエネルギー(電気、熱)需要施設が分散していると、エネルギー供給・融通のための電力自営線や熱導管の敷設コストが距離とともに大きくなり、地域エネルギーマネジメント事業が経済的に成立しなくなる。



エネルギー需要が集中するケースとしては、以下の3つのパターンが考えられる。
①地方自治体において、複数の隣接する公共施設等に、地産地消の再生可能エネルギー等による電力を供給する(地方・郊外)
②都市部の再開発プロジェクト等において、隣接する複数の縦方向に集積した高層ビル等に、コージェネレーションシステム等による電力と熱を供給する(都市開発)
③工業地帯等においてエネルギー需要の大きい隣接する複数の工場に、コージェネレーションシステム等による電力と熱を供給する(工業地帯:工業団地、コンビナート等)

2.注目トピック

特定供給の規制緩和により市場が立ち上がる

電力自営線による特定供給については、もともと、工業団地・コンビナート内等において自家発電した電力を他の工場や子会社等に供給することを認める制度として存在していた。従来の特定供給の制度では、供給者の発電設備により需要の100%を満たすことが必要であり、電力会社(一般電気事業者)等のバックアップを得ることは不可とされていたが、2012年10月に規制が緩和されて、需要の50%以上を満たす供給であれば許可されるようになった。これにより、自家発電設備において、託送受電によるバックアップ電力を得ながら複数建物に電力供給できるようになり、地域エネルギーマネジメント事業の市場を立上げ拡大させる契機となった。

3.将来展望

FIT(再生可能エネルギーの固定価格買取制度)に依存しない再生可能エネルギー普及の1つの方向性として地産地消があり、地域エネルギーマネジメント事業はその方向性に沿っている。
また、都市部や工業地帯等では、施設群においてエネルギー需要が集中していることから、分散型電源としての天然ガスコージェネレーションシステムを導入して、面的に熱電併給する方法が有効であり、これも地域エネルギーマネジメント事業が伸びていく理由の一つである。
現状では、電力系統の連系枠が限られている場合が多く、再生可能エネルギー発電の電力を逆潮流させない前提で多くの地域エネルギーマネジメント事業のシステムが構築されている。また、現在は未だ、既存の電力系統を他の電力事業者が地域を区切って使用することはできない。しかし、電力事業改革が進む2020~2025年以降には、これらの規制が緩和されていくことが期待されており、そうなれば地域エネルギーマネジメント事業は大きく拡大する見込みである。
国内の地域エネルギーマネジメント事業における設備・システム構築市場規模(当該年度中に竣工した設備・システムの導入・構築費用ベース)は、2018年度の200億円から、2020年度は250億円、2030年度には350億円に拡大と予測する。

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    調査要綱

    1.調査期間: 2018年5月~9月
    2.調査対象: 地域エネルギーマネジメント事業者、地方自治体、コンサルティング・エンジニアリング事業者
    3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談、電話・e-mailによるヒアリング、ならびに文献調査併用

    <地域エネルギーマネジメント事業とは>

    本調査では、スマートコミュニティ(あるいはスマートシティ)事業の中で、電力自営線を使用して、地域の需要に合わせて管理制御したエネルギーを供給する事業を地域エネルギーマネジメント事業と定義した。
    電力自営線は地域エネルギーマネジメント事業者が自ら設置・管理する送配電線であり、電力系統停電時においても自立的に電力供給が可能となる。

    ※参考資料:地産地消電力事業に関する調査を実施(2016年)
    https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/1562

    <市場に含まれる商品・サービス>

    地域エネルギーマネジメント事業

    出典資料について

    資料名
    発刊日
    2018年9月21日
    体裁
    A4判 155頁
    価格(税込)
    165,000円 (本体価格 150,000円)

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    マーケティング本部 広報チーム
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