2020年度の惣菜市場は、コロナ禍、消費者の購買行動の変化で販売チャネルの明暗が分かれる
1.市場概況
女性の社会進出や晩婚・未婚化等による単身世帯・共働き世帯の増加に伴い、調理の簡便化需要を満たす惣菜市場は拡大傾向にある。2019年10月の消費増税には、惣菜やテイクアウト商品は軽減税率制度(税率8%)の対象となったことで、外食から惣菜・中食への持ち帰り、家飲み需要へのシフトを狙った商品が投入されるなど惣菜市場は好調に推移してきた。
しかし、2020年初頭からの新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言を受け、国内の人流が抑制された結果、店舗は休業・時短営業を余儀なくされた。消費者の購買行動も大きく変化したことで、惣菜の各販売チャネルの明暗は大きく分かれることとなった。例えば、小売・量販店や外食チェーン店のテイクアウトが好調となった一方、百貨店やショッピングモールなどの店舗は休業や時短営業となり、また、オフィス街や繁華街、駅ビル・駅ナカなどの店舗は人流抑制や在宅勤務により客数の減少にさらされている。
こうした影響から、2020年度における惣菜(中食)市場は、小売金額ベースで前年度比97.9%の8兆9,749億円となった。
2.注目トピック
食品スーパーにおけるコロナ禍の消費の変化
小売・量販店の惣菜販売では、従来、バイキング方式による、匂いやシズル(sizzle)感を前面に打ち出した販促が行われていた。しかし、2020年以降は、新型コロナウイルス感染予防の観点から、商品に覆いがない状態での惣菜販売やトングの共有がネックとなり、パック詰め形態での販売に移行した。試食販売やイベントなどの販促活動も自粛しなければならない状況が続いている。
こうした中、食品スーパーでは、客単価が向上しているケースもある。前述した厳重な感染対策が安心して買い物できるという考えに繋がり販促効果をもたらしたほか、外食への支出が惣菜に回るなど消費者の購買行動の変化も影響していると考えられる。惣菜市場全体としては未だ厳しい状況にあるが、こうした一部の販売チャネルではコロナ禍での新しい生活様式に即した対応が功を奏したと言える。
小売・量販店における2020年度の惣菜(中食)市場規模は、小売金額ベースで1兆4,640億円(前年度比101.0%)と推計した。
3.将来展望
2021年度以降、小売・量販店やファストフード店のテイクアウトでは、好調なトレンドが継続する見通しである。また、苦戦を強いられてきた惣菜専門店、コンビニエンスストア、百貨店、給食弁当業などにおいても、コロナ収束後の展開に備えて店舗を一定数維持するほか、別業態での事業化の可能性も模索するなど回復に向けた取組みが展開している。
今後の人流の回復に伴う販売復調を見込み、2025年度の惣菜(中食)市場は小売金額ベースで9兆6,215億円(2020年度比107.2%)になると予測する。
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調査要綱
2.調査対象: 惣菜・中食関連企業、官公庁、関連業界団体ほか
3.調査方法: 当社専門研究員による面談面談(オンライン含む)、電話による取材、ならびに文献調査併用
<惣菜(中食)市場とは>
本調査における惣菜(中食)とは、外食と内食(自宅で食べる手作りの家庭料理)の中間に位置する調理済み持ち帰り食品であり、和風惣菜、洋風惣菜、中華惣菜、米飯(弁当など)、給食弁当、調理パン、ファストフード、調理麺など日持ちがせず購入当日~数日の間に消費する調理済み食品を対象とする。
なお、冷凍食品、冷蔵食品(チルド食品)、レトルト食品、レンジ食品など、比較的保存性の高い食品を除く。
<市場に含まれる商品・サービス>
和風惣菜、洋風惣菜、中華惣菜、米飯、給食弁当、調理パン、ファストフード、調理麺など
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