ゴーン氏、失脚。しかし、日産、三菱自はかつての経営体質への退行を許してはならない


26日、三菱自動車工業は臨時取締役会を召集、カルロス・ゴーン氏の会長職と代表取締役の解任を決めた。
2004年、三菱自は2000年のリコール隠しに続き、新たな品質不正が発覚、当時、提携関係にあったダイムラー・クライスラーから支援を打ち切られた。この時、同社は三菱グループによる全面支援のもとで再建をはかったが、2016年には燃費不正問題が発覚、3度目の経営危機に陥る。三菱自が国交省内で「不正の事実」を公表したのが4月20日、三菱グループ各社が追加支援に逡巡する中、5月12日、日産は資本提携に正式合意、10月20日、2370億円の出資が完了、三菱自は危機を脱する。果たして当時の三菱グループにこのスピード感での投資判断が可能であったか。

その日産は1990年代末、国内シェアが3位に転落するなど販売不振が常態化、2兆円を越える有利子負債を抱え、経営破綻の危機にあった。1999年3月、仏ルノーが6430億円の出資を表明、もはや選択肢がなかった日産はこれを受け入れざるを得なかった。その後の経緯はご承知のとおり、ルノー傘下で生産拠点の再編、資産売却、人員削減、系列子会社や取引先の見直しを断行するともに車種の整理、新車投入など営業面でのてこ入れをはかった。結果、国内販売は2位を回復、有利子負債は2003年に完済、日産は“日産”として存続した。

ゴーン氏が逮捕されて一週間、日本中がこの話題で溢れかえる。ルノーとの経営統合を巡る陰謀説からクーデター説に至るまで、識者と称する人々が声高に持論を語る。テレビはリストラで職を奪われた元派遣社員の方を登場させ、ゴーン氏の人間性と高額な報酬に疑義を投げかける。

犯罪であれば罰せられて当然であり、巨大なグローバル企業グループを築いた“創業者”としての「驕り」があったことも事実であろう。しかし、それらと報酬の妥当性とは論点が異なるし、ここへきて逮捕容疑そのものに対する異論も出始めた。
真偽は分からない。司法に委ねるしかないだろう。しかし、唯一明確なこと、それは日産と三菱自、かつて両社を破綻寸前まで追い込んだ「責任の所在が曖昧な経営、問題を先送りする経営、身内の論理に閉じた経営」に再び立ち戻るならば、世界で戦い続けることは出来ない、ということだ。

今週の”ひらめき”視点 11.25 – 11.29

代表取締役社長 水越 孝

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