過渡期にある指定金融機関制度、問われる地方自治体との“蜜月”の在り方


2016年6月、三菱東京UFJ銀行(当時)は国債の入札等において国から特別な優遇措置が受けられる「国債市場特別参加者」(プライマイリー・ディーラー)を返上した。当時は「3大メガバンクの最大手が日本国債の長期保有を経営リスクと判断した」と話題になったが、要は民間金融機関としての経済合理性を優先させたということである。
その三菱UFJ銀行が兵庫県芦屋市の指定金融機関を辞退した。

従来、芦屋市は輪番制を採用、三菱UFJと三井住友銀行が交互に業務を受託してきた。現在は三井住友が担当、三菱UFJは2019年7月1日にこれを引き継ぐ予定であった。しかし、昨年3月、三菱UFJは同市に対して指定受託の条件変更の申し入れを行う。これまで7万円だった行員派遣費用について、行員2名の人件費800万円と警備費700万円を要求するとともに1件あたり10円の口座振替手数料や市庁舎内に設置したATMの維持費を市側の負担として欲しい旨の要望書を提出した。
三菱UFJは同様の条件改訂を他の自治体にも提案、今回、芦屋市や埼玉県所沢市など要求に応じなかった約10自治体の指定金融機関を返上したという。

地方自治体の公金収納や支払い事務を一手に引き受ける指定金融機関は、公金を預金として確保できるとともに信用力の向上につながるとして、かつては指定獲得競争も起こっていた。しかし、低金利、低い手数料率、ほぼ無償の行員派遣義務などにより採算は悪化、今や銀行サイドに指定を継続するための積極的な動機は見当たらない。

27日、公正取引委員会はネット通販の大手事業者に対して一斉調査を行なう方針を固めた。国は、ポイント還元の原資を出品者に負担させるECモールのビジネスモデルが独禁法の「優越的地位の乱用」に抵触する可能性があると判断、実態把握に乗り出すという。その通りである。そして、“市場を歪める”という点においては公的セクターもまた同じである。もはや「お上」に優越的な立場を維持するだけの権威やパワーはない。民間に不当な負担を強いることが行政の合理化ではないはずだ。金融を取り巻くテクノロジーが革命的に変化しつつある中、指定金融機関制度の在り方そのものが見直されるべき時期にある。

今週の”ひらめき”視点 2.24 – 2.28

代表取締役社長 水越 孝

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