【日本経済】破綻へのアクセル避けるために

2016年10月
取締役 矢野 元

7月の参院選、都知事選を経て、安倍政権は政策に専念するにあたり十二分の勢力を維持した。ただ、現政権誕生以来すでに3年半以上が経過しているが、政策の目玉である経済政策が「道半ば」というのは違和感を覚えざるを得ない。

先日、アベノミクス第一の矢である「大胆な金融政策」の一環として上場投資信託(ETF)の買い入れを年間6兆円にほぼ倍増し、さらに第二の矢である「機動的な財政政策」として、1990年のバブル崩壊以来26回目となる事業規模28兆円の大型経済対策を閣議決定した。これまでの歩みを振り返ると、今回の政策でも、抜本的に改善するとは想像しにくい。

「異次元の金融政策」などは別としても、なぜ経済政策が効きにくいのか。これまで行ってきた政策は、90年以前であれば、それなりに有効に機能していたのではないか。もしそれらが総じて実効性を失っているとするならば、もはや、経済政策が有効に機能するための基礎的な要件が壊れているということではないだろうか。

基礎的な要件のうち、最も大きなものが経済のグローバル化と人口構成の変化であろう。ここでは、人口問題について掘り下げてみたい。

国連が2015年に発表した世界各国の人口統計をみると、15年の国内総生産(GDP)世界上位10カ国のうち、00~15年で、生産年齢人口(15~64歳)が減ったのは、日本とドイツとイタリアのみであり、特に日本は10%減で約880万人と断トツに減っている。日本自動車工業会によると、日本の自動車関連就業人口がおよそ530万人にすぎないことを考えれば、事の大きさが想像できよう。 当然ながら、生産年齢人口は付加価値を「生産」するだけでなく、ライフステージにおいて最も消費支出が多い世代層でもある。それが10%も縮小したというのは、強烈な負のベクトルが総需要に対して作用したことを示唆する。

30年までを見通すと、日本はさらに10%、807万人も減ると見込まれる。このような進展の経済に、企業セクターが積極的に投資をするのか、結果は想像に難くないだろう。歴史的な高水準にある内部留保も、ここに大きな要因があると見るべきだろう。

一方、少子高齢化は先進国を中心に世界的なトレンドであり、ドイツとイタリアをはじめとして、フランス、カナダ、英国、米国も現在の日本の人口構成に近づいて来るものと予想される。

また中国では、00~15年で1億4千万人も増えた生産年齢人口が、その後の15年間で4500万人も減少する見通しである。さらに65歳以上の高齢者は、00~30年で1億5900万人も増加すると見られている。日本の全人口をはるかに超える規模だ。もともと社会保障制度が充実していない中国において、社会的・政治的・経済的な大きなリスク要因となってこよう。

超少子高齢化の最先進国である日本は、この問題に対して前例のない、生活慣習や社会通念にまで踏み込んだ、文字通り抜本的な対処が求められている。それなくしては、アベノミクスを含む経済政策は、金融や財政の破綻へ向かってアクセルを踏むという結果になりかねない。

株式会社共同通信社「Kyodo Weekly」2016年8月29日号掲載