増え続ける産直ショップ

2017年12月
主席研究員 清水 豊

農産物流通の変化と多様化

農産物は、工業製品と異なり、その栽培・生産が自然条件に大きく左右され、鮮度維持が困難な為、長距離輸送も難しい。更に、IT技術が普及しておらず、産地、生産者、流通業、小売業共に供給や取扱量が小規模であった少し前の時代には、卸売市場を通じて、供給者と需要者を結び付け、農産物をセリにかけて合理的な価格を形成し、商品は直ちに市場外に搬出されて小売店の店頭に並ぶという無在庫流通方式での卸売市場における現物取引は極めて有効な農産物の流通形態であった。

しかし、IT技術の高度化、コールドチェーンの普及、専業小売店が減少し、食料品スーパー、コンビニエンスストア等が主流となった現在にあって、農産物の流通も大きく変化してきている。勿論、現在も農産物は卸市場流通が中心であるが、近年のIT 技術を活用した企業間取引(BtoB)の拡大や、生産者と消費者をつなぐ流通チャネルが多様化する中で、従来からある卸市場の「中抜き」が進み、市場外流通取引も増加してきている。実際、約55%にも達する農産物流通コストの削減を武器に生産者・団体と需要家を直接結び付ける農産物の市場外流通事業に特化する企業も登場してきている。つまり、一般的に言われる市場外流通の拡大とは、このような一定以上にまとまった大ロットを主体とした流通のことになる。

古くて新しいチャネルの登場

こうした中にあって、近年、目に付く光景がある。街の周辺、帰省の途上で立ち寄る道の駅や産直ショップなどである。それも昔の簡素な佇まいの店舗ではなく、かなり大きく、充実した品揃えを持ち、中には中小スーパーマーケットなどでは到底太刀打ちできないほどの大規模商業施設クラスも多数登場してきている。大手量販店や百貨店に並ぶ、ナショナルブランドやお土産類に飽き飽きしている消費者のニーズを汲み取り、地元では有名であるが、広くは知られていないユニークな野菜や果物、農産加工品、飲料、お酒、お菓子などが所狭しと並んでいる。特定シーズンに地元だけで流通・消費されるレアなものもあり、こうした情報はSNSやインターネットで告知され、店頭に並ぶとすぐに売り切れてしまう。

少々データは古くなるが、こうした農産直売所は、2014年度末時点で全国に2万3,710事業体あり、その年間販売金額は9,356億3,000万円となっており、2011年度調査比で118%の増加傾向が続いている(農林水産省「6次産業化総合調査」)。日本チェーンストア協会の販売統計によると、会員企業である大手量販店56社(9,376店舗)の農産品販売額は、1兆2,177億2,000万円(2016年度)となっているが、比較的零細な事業の集合体である農産物直売所チャネルは、こうした大手量販店に匹敵する農産物流通における一大チャネルへとなってきているのである。農産物直売所の運営事業者は、非農協系となる農業経営体(農家個人、農家法人、会社等)から、農協等(地方公共団体・第3セクター、農業協同組合、生産者グループ等)まで幅広く参入している。

また、農産物直売所が併設されることが多い道の駅は、道路利用者のための「休憩機能」、道路利用者や地域の方々のための「情報発信機能」、そして「道の駅」をきっかけに町と町とが手を結び活力ある地域づくりを共に行うための「地域の連携機能」、の3つの機能を併せ持つ休憩施設として1993年に誕生した。制度設立後、その数は順調に拡大を続け、2016年10月現在で全国1,107駅にまで達している。

国土交通省では、2014年7月に、本格的な人口減少社会の到来、巨大災害の切迫等に対する危機意識を共有し、2050年を見据え、未来を切り開いていくための国土づくりの理念・考え方を示す「国土のグランドデザイン2050~対流促進型国土の形成~」を策定・公表している。「国土のグランドデザイン2050」の中では、「未来型の小さな拠点」を各地域に設け、日常生活の「守りの砦」となるだけでなく、ICT等を活用した高度なサービスを提供する新しいビジネスモデルを導入し、地域に合った雇用や価値を創造する拠点を整備することが挙げられている。かかる「未来型の小さな拠点」として、「道の駅」を、好循環の地方拡大の強力なツール、地方創生を進めるための「小さな拠点」と位置付け、特に優れた道の駅を選定し、重点支援する取組を実施している。つまり、単なる物販だけでなく、体験や情報発信の施設として、そして防災上の拠点として、地域の核となる施設となってきている訳である。

道の駅の設置者は、「市町村又はそれに代わり得る公的な団体」となっており、全国モデル道の駅に選定されている「川場田園プラザ(群馬県川場村)」の株式会社田園プラザ川場や、年間来場客数約360万人を誇る道の駅「富士川楽座(静岡県富士市岩渕)」の富士川まちづくり株式会社のように、自治体と関連公的団体で設立された3セク企業が運営・管理しているケースが多い。「川場田園プラザ」などの成功例では、「農業プラス観光」コンセプトに、人口約3,700人の村に年間約120万人が来訪し、そのリピート率は7割に達するという。

昔は八百屋などで野菜を買うのが普通であった。それが高度経済成長期に台頭してきたスーパーマーケット、GMS、コンビニエンスストアに席巻され、八百屋はほぼなくなってしまった。しかし、AIやビッグデータ、量子コンピューターなどが話題になるこの時代に、ふたたび八百屋の登場である。今回再登場してきた八百屋は、どこに行っても似たような街並みである地方都市の中で、地域の特性を生かした地場産物など実にワクワクしたものを私たちに提供してくれる。