調査結果のポイント
第1章 高機能フィルム市場の展望
次の市場のための製品開発と環境対応が新たな拡大と成長を呼び込む
工業用フィルム市場は空前の成長期に突入も
「足元の波に乗った既存品の拡大」は先細りの懸念
(図・表)主要な高機能フィルムの市場規模対前年増減率推移(2019年~2022年予測)
「今」のニーズへの即応だけでなく「次」の競争力確保に向けた開発を目指せ
性能、品質、コストに加え「環境」がフィルムの新たな競争軸に加わる
調達面からユーザーのSDGsに貢献し新たなビジネスチャンスを掴め
第2章 PETフィルム市場の徹底分析
主要PETフィルムメーカー8社の生産能力は2020年には140万t/年に迫る規模まで回復
スマホ、ICT関連製品、車載電装品など川下製品の拡大で各社ともフル稼働が続く
(表)PETフィルム主要メーカー 生産体制
(図・表)主要メーカーによる地域別PETフィルム供給能力推移
コロナ禍でもプラス成長実現の2020年に続き、2021年は前年比109.5%の急成長を見込む
光学用は偏光板需要の成長で副資材向けとPVA保護フィルムが好調
(表)工業用PETフィルム 主要用途別需要量推移(主要8社合計)
(図)光学部材用PETフィルムの需要動向
(図・表)主要メーカーによる光学部材用PETフィルム市場規模推移
(図・表)主要メーカーによる光学副資材用PETフィルム市場規模推移
スマホ拡大の反動が懸念されるも、5GやCASE対応の進展で
2021年以降の一般産業向けは拡大が期待される
(図・表)主要メーカーによる粘着・離型用PETフィルム市場規模推移
(MLCCリリース含む)
(図・表)主要メーカーによるMLCC離型用PETフィルム市場規模推移
(図・表)主要メーカーによるDFR用PETフィルム市場規模推移
(図・表)主要メーカーによる電気・電子用PETフィルム市場規模推移
東洋紡、TAKのライン増設に加え三菱ケミカルによる中井工業の子会社化など
各社で加工体制強化に向けた取り組みが進展
(表)主要PETフィルムメーカーの加工体制
B to Bの工業用フィルムでも環境対応は避けて通れない課題に
回収・リサイクルシステムの構築やPETボトル再生樹脂使用などの取組みが活発化
(表)主要メーカーによる工業用PETフィルム販売量及びシェア推移
東レ株式会社
MLCCリリースフィルム、DFRを中心に成長
光の指向性制御やメカニカルリサイクルフィルムなど独自の開発を推進
国内外で約40万t/年の生産能力はフル稼働に近い状況が続く
三島拠点の開発専用機が稼働、開発~量産にかかる時間の大幅短縮を実現
販売量全体の20%を占める光学向けは2021年以降横ばい~微増での推移を見込む
HMDやHUD向けにナノ積層フィルムPICASUS®の提案を開始
MLCCリリースフィルムはスマホに加え車載電装品の拡大で好調に成長
DFRは2020年、2021年と前年比10%前後の伸びを確保
PICASUS®シリーズは金属光沢だけでなくUVカットや光の指向性制御など
ディスプレイ周辺用途での採用に向けた製品開発が本格化
コンバーターからフィルムを回収し再びフィルムに戻すメカニカルリサイクルシステムを構築
2,500t/年規模の生産体制を整え2020年より本格運用スタート
三菱ケミカル株式会社
シリコーンコート加工品や高付加価値グレード中心に安定的な事業展開を推進
ASEAN地域での工業用グレードの需要拡大に応えインドネシアで新規ライン増設
工業用PETフィルムは2020年に懸念されたコロナ禍の影響は見られず二桁成長
光学用、DFR、MLCCリリースフィルムを中心に2021年以降も堅調に推移
2021年にコンバーターの中井工業を連結子会社化
三菱ケミカルが蓄積してきたフィルム製造技術とのシナジーで事業の高付加価値化に期待
東洋紡株式会社
2021年4月に旧TFSを吸収合併し東洋紡として一体化
互いの強み・得意分野を掛け合わせ市場でのポジションを一層強化
2020年の犬山新ライン稼働とTFS合併で国内3拠点、海外1拠点の147,000t/年体制に
つるがではシリコーンコート設備が稼働、加工能力は合計6,300万㎡/月に達する見込み
PETフィルム販売量の半分近くを占める光学分野は2020年、2021年見込みと2ケタ成長続く
主力の「コスモシャインSRF®」は2020年に前年比135%の急成長を遂げる
離型フィルムの主力はMLCC向け、超平滑グレード「コスモピール®」と
コスト競争力の高い「ピューレックス®Ⅱ」でハイエンド~ミドルエンド領域を押さえる
PETボトル再生樹脂使用の合成紙はラベルや受像メディアを中心に実績拡大
オンリーワン製品のPENフィルム「テオネックス®」がFCV搭載の燃料電池セル封止で採用
今後は光学、電材関連での東洋紡の技術・ノウハウとのシナジーに期待
TORAY ADVANCED MATERIALS KOLEA Inc.(東レ尖端素材株式会社)
2021年後半には原反、加工品ともに増設ラインが量産を開始
工業用副資材需要急増に供給能力拡大で応える
新規ライン稼働後は亀尾の原反生産は能力全体の約70%が副資材向けに
中国・TFNの2,600mm幅加工ラインでは偏光板向けに加えMLCCリリースフィルムも生産
光学部材向けはQDシート用バリアフィルムの伸びで2021年以降はプラス成長に転じる見込み
偏光板サプライチェーンの変化とTFNの新ライン稼働開始で副資材向けの成長続く
MLCCリリースフィルムはスマホに加え車載電装品の拡大に乗り好調続く
その他の一般産業向けも概ね堅調に推移
SKC Co.,Ltd.(PETフィルム)
2019年、2020年のマイナス成長から一転、2021年以降は順調な成長見込む
韓国・米・中の生産拠点ではライン構成と生産品目を各地の需要動向に合わせて最適化
中国拠点では高付加価値グレード中心の生産・供給でローカル勢と差別化図る
光学用PETフィルムは2020年に急拡大、2021年以降は安定的な需要確保を見込む
一般産業用ではMLCCリリースフィルム原反が大きく成長
グループ内のコンバーターSKC HT&Mと連携した原反~加工一貫体制構築も視野に
Kolon Industries, Inc.(PETフィルム)
スマートフォン、IoT家電、車載電装品など川下製品需要拡大に伴い
2020年以降のPETフィルム販売量は好調に推移
コロナ禍の影響が懸念された生産設備の稼働率は2020年下期以降フル稼働を継続
国内拠点がフルキャパの中、工業用途への生産シフトを推進、2021年は光学用が急成長
TVの大型化・高精細化に伴いLCD部材用の品質がユーザーに評価される
2020年以降のスマホの急拡大でMLCCリリースフィルムが大幅な伸びを示す
端末需要拡大の反動懸念も車載やIoT家電向け需要を期待し継続的な成長見込む
南亜塑膠股份有限公司(NAN YA PLASTICS CORPORATION)
2021年6月に原反製膜及び加工の増設ラインが稼働を開始
光学用、一般産業用の離型フィルム需要拡大に対応
2019年から2年続いたマイナス成長から一転、2021年は前年比120%超えを見込む
粘着離型、ウィンドウフィルム、DFRなど主要用途が軒並み急成長
自社加工拠点では当初予定より2年遅れで新規ラインが稼働を開始
MLCCリリースフィルム需要増に対応し、2023年にはさらに2ラインの増設を予定
新科光電材料股份有限公司(SHINKONG MATERIALS TECHNOLOGY CO.,LTD.)
市場ニーズに合わせた生産品目の調整で生産設備フル稼働を維持
2020年はコロナ禍による工業用の減少を包装用の拡販でカバー
2021年以降の工業用の用途別構成比は光学用30%:一般産業用70%で安定する見込み
一般産業用は主力のウィンドウフィルム向けが自動車生産台数縮小で大幅減
第3章 注目される高機能フィルム市場の動向
1.Foldable端末用カバーフィルム
2021年に中国ローカルメーカーがFoldable市場に参入、市場規模が一気に拡大
主要メーカーで残るはApple、2023年以降の動向に注目集まる
(図)Foldable・Rollableスマートフォン市場規模予測
(表)Foldable・Rollable端末製品一覧
Foldable端末トップのSECは2020年発売モデルから極薄ガラスカバーを採用も
三つ折りタイプの端末では再びフィルムカバーに回帰する可能性あり
(図)三つ折りタイプのFldable端末 折曲げ方式
2021年のFoldableカバー用透明PIフィルム市場規模は30万㎡
端末1台当たりの最終コストは50~85$に
(図)Foldable・Rollable端末カバー用 透明PIフィルム市場規模
(図)Foldableスマートフォンカバーの構成
(表)Foldable端末のカバー用PIフィルムメーカーのHC処理状況
(表)透明PIフィルム価格動向
KOLON、SKIETの2社が量産品を供給中、SKC、カネカ等もサンプルワークを推進
(表)透明PIフィルム 主要メーカー各社の生産体制
アラミドフィルム、ウレタンフィルムなど
Foldableカバーでの採用を目指した新たなフィルムでのサンプルワークも進む
(表)Foldable端末カバー材料の特性比較
2.低誘電フィルム
5Gスマートフォンは2020年以降急増、端末が先行して普及
(図)スマートフォン出荷実績推移
現状の5Gでは既存PIの採用が目立つも、スマホの先の市場での採用獲得を目指し
他素材を使用しないポリマー改質タイプのMPIでミリ波対応を狙った開発が進展
(表)PIメーカー各社の低誘電グレード
(図)5Gスマートフォン 周波数別出荷状況
フッ素複合タイプのMPIやLCPは6Gでの採用を狙った開発が進む
スマートフォンの拡大が続きPIメーカー各社とも面積ベースでの販売量が拡大
ライン増設も活発化、2022年の生産能力は全社で35ライン15,720t/年体制に
(表)PIフィルム 主要アプリケーション別市場規模推移(重量ベース)
(表)PIフィルム 主要アプリケーション別市場規模推移(面積ベース)
(表)主要PIフィルムメーカー 販売量推移(重量ベース)
(表)主要PIフィルムメーカー 販売量推移(面積ベース)
(表)PIフィルム主要メーカー各社の生産体制
ミリ波領域以上をターゲットとしたLCPのサンプルワークが継続
PPS、PENなどを新たな低誘電基板材料として提案する動きも
(表)LCPフィルム 主要メーカーの動向
(表)FPC基板用低誘電材料 特性比較
3.MLCCリリースフィルム
スマホ需要の好調を受け、市場規模は2020年、2021年見込みと2年連続で大幅成長
車載電装品向けも成長、当面は需要拡大継続が期待される
(図・表)MLCC用リリースフィルム 市場規模推移
参入各社が設備増強を継続、2021年は2019年比で6,100万㎡/月分の能力増に
(表)主要リリースフィルムメーカー各社の生産体制
(表)2018年以降の主要MLCCリリースフィルムメーカー各社による能力増強
原反PETフィルム需要は2022年に100,000t/年の大台に達する見込み
薄肉化の進展で重量ベースの伸び率は面積ベースよりもやや小さく推移
(図・表)MLCCリリースフィルム用原反(PETフィルム)市場規模推移
(表)MLCCリリースフィルム用原反(PETフィルム)メーカー別シェア推移
高付加価値のハイエンド品とローエンドグレードでは価格に約2倍の開き
高レベルの表面改質コーティング技術を持つリンテックが収益性に強み
(表)MLCC用リリースフィルム価格動向
上位4社がシェア18~21%で拮抗、2位のコスモ新素材が新興ローカル向けで存在感
日本勢は日系MLCCメーカー向けでシェアを分け合う
(表)主要セラミックコンデンサーメーカーのリリースフィルム使用量推移
(表)MLCC用リリースフィルム メーカー別販売量推移
(表)主要MLCCリリースフィルムメーカーの原反調達体制
(図・表)セラミックコンデンサーメーカーにおけるリリースフィルムメーカーシェア
(2019年)
(図・表)セラミックコンデンサーメーカーにおけるリリースフィルムメーカーシェア
(2020年)
(図・表)セラミックコンデンサーメーカーにおけるリリースフィルムメーカーシェア
(2021年)
第4章 工業用高機能フィルムメーカーの展望と戦略
Kolon Industries, Inc.(PIフィルム)
Foldable端末カバーでの採用実績を着実に拡大
2021年には前年比倍増の30万㎡の出荷量をみこむ
まとまったボリュームでの透明PIフィルム量産実績を持つ唯一のメーカー
2021年の市場規模30万㎡の大部分を押さえる
端末の大画面化に伴うZ-foldタイプの登場によるカバー材料のフィルム回帰に期待
SK ie technology Co.,Ltd.
2020年より透明PIフィルムFCWの量産開始
中国端末メーカーのFoldableスマートフォンカバーで採用される
原料樹脂のフォーミュレーション、製膜、HCまでを一貫展開
幅広いニーズに対応するトータルソリューションを提供
SKC Co.,Ltd.(PIフィルム)
SKC HT&Mと連携し原反から加工までを一貫展開
多様なユーザーニーズへの迅速・確実な対応力で差別化
Foldableスマートフォンの2022年発売モデルへの採用をターゲットに
鎮川工場の量産ラインでのサンプルワークを継続
原反製膜だけでなく、SKC HT&Mと共同でHC剤やコーティング剤も開発
株式会社カネカ(透明PIフィルム)
端末カバーウィンドウをターゲットに透明PIフィルムのサンプル供給を推進
ディスプレイ用光学補償フィルムと回路基板用PIフィルムでの展開で蓄積した
製膜技術、光学設計・分子設計技術で差別化
PI Advanced Materials Co.,Ltd.(PI尖端素材)
5G対応の低誘電グレードに加え、車載バッテリー絶縁テープなど
最先端用途での需要をキャッチし成長
鎮川工場では2022年、2023年と2年連続でのライン増設を計画
用途・グレードでラインを棲み分け生産効率化を図る
2020年以降、コロナ禍による市場の変化がプラスに働き販売量は大幅に拡大
5G対応グレードはサブ6領域での供給開始、ミリ波対応品の開発を進める
株式会社カネカ
ミリ波領域の5Gに対応可能な低誘電グレードで
自動車、産業分野におけるPIフィルムに対するニーズをキャッチ
Stay Homeによるモバイル端末特需とスマートフォンの好調で
2021年のPIフィルム販売量は前年比115%の大幅成長を見込む
サブ6~ミリ波までの周波数帯に対応する低誘電グレードを開発
通信、自動車、工業・産業分野での5Gマーケットの立ち上がりに備える
東レ・デュポン株式会社
重量ベースの販売量は横ばいも高付加価値用途へのシフトにより
収益性の高い事業展開を推進
FPC、COP、絶縁テープなど高付加価値分野向け販売量が順調に成長
サブ6領域の5G対応ニーズに対し、ピュアPIによる低誘電グレード「カプトンLK」を提案
超低線膨張グレード、極薄グレード、FFC用低誘電グレード等
特徴的な独自グレードの提案を積極的に推進
ゼノマックスジャパン株式会社
フレキシブルディスプレイ基板、低誘電など
フィルムの性能・付加価値が評価される分野をターゲットに提案を推進
最大1,500mm幅の量産機は2019年より本格稼働開始、既に実績のあるTFT基板に加え
スマートフォン、5G関連での需要拡大を目指し東洋紡との連携を強化
ディスプレイのフレキシブル化の中でガラス代替のハードルの低さに強み
Foldable OLED、マイクロLED、ミニLEDなど次世代製品での需要にも期待
低誘電基板向けにフッ素複合品の提案とサンプルワークを進める
ターゲットはミリ波以上、6G対応も視野に
東レ株式会社(PPSフィルム)
独自の結晶構造・分子配向技術で改良したPPSフィルム「トレリナ」
ミリ波領域対応の5G基板をターゲットにサンプルワークを推進
Df0.002の低誘電正接に加え、Z方向の線膨張係数を大幅に抑制
250℃のハンダ耐熱性も実現し性能と使い勝手向上を両立
フィルム単体、FCCL単体ではなく、FPCとしての性能を重視した提案を推進
三井化学東セロ株式会社
主力のMLCCリリースフィルム、2020年は前年比2ケタの伸び
2021年以降もコンスタントに年間5%前後の成長を見込む
リリースフィルム生産ラインはフル稼働、将来の需要拡大に備え能力増強の検討を開始
2020年はスマートフォン端末需要に牽引され急成長
2021年以降の反動が懸念されるもMLCC搭載数増加や車載関連の伸びに期待
ミドルエンド~ハイエンド領域のニーズに最適化した製品設計と、性能・品質で差別化
COSMO AM&T CO.,LTD.(コスモ新素材株式会社)
MLCC最大手向けハイエンドから新興メーカー向けローエンドまで
幅広いグレード展開で幅広くニーズに対応
2021年3Qの新ライン稼働で生産能力は5ライン5,600万㎡/年に
5G、CASEなど中長期的なMLCC需要拡大に対応
MLCC用リリースフィルム販売量は2020年、2021年見込みともに前年比120%超えの急成長
SEMCO向けハイエンド品に加え、中国・韓国の新興ローカル勢でのローエンド需要も押さえる
東洋紡株式会社(Beverage Bottles to Film-BB2F®)
市中から回収された飲料用PETボトルを包装用フィルムに再生
エンドユーザーの企業価値向上に貢献
業界に先駆けて再生樹脂使用に取り組み技術・ノウハウを蓄積
工場端材や不良品ではなくPCR原料を使用しバージン品と同等の性能・品質を実現