電磁波からのエネルギーハーベスティングの動向
~Yano E plus 2018年3月号~

エネルギーハーベスティング(Energy Harvesting)とは、環境に存在する微弱なエネルギーを収穫して、利用できる電気エネルギーに変換する技術である。

広い意味では、太陽光発電、風力発電、地熱発電といった大規模な商用電力を賄えるような技術も、エネルギーハーベスティングと基本的な原理は同じであるが、見逃されがちなエネルギー源から、μW~mW オーダーのごく小さな電力を取り出す技術を、エネルギーハーベスティングと呼んでいる。

エネルギーハーベスティングを実現するエネルギー源としては、力学的エネルギー、熱エネルギー、電磁波エネルギー、室内光エネルギーなどがある。

典型的な力学的エネルギーとして、力学的エネルギーが物体に加わることによる振動をエネルギー源とする振動発電などがある。振動発電の原理としては、物体に力を加えると電圧が発生する圧電効果を利用したものが多い。

熱エネルギーを使った発電には、ゼーベック効果を利用したものが多い。ゼーベック効果とは、物体の両端に温度差があると電圧を生じる現象である。ゼーベック効果を有する半導体や金属などの材料を使って、温度差から電気を取り出すことが
できる。

電磁波を用いたエネルギーハーベスティングは、空間に広く薄く存在する電磁波をエネルギー源としている。放送・通信や無線LANなど、屋外、屋内に関わらず、さまざまな電波が飛び交っている。こういった環境でアンテナを用いて電力をハーベストする技術が開発されている。

室内光エネルギーを使う発電は、基本原理は屋外の太陽光発電と同じであるが、波長特性を、太陽光ではなく室内光に適するように調整した太陽電池などを用いることになる。室内光を使う発電は、腕時計や電卓用としてすでに採用されているが、他のアプリケーションへの応用は比較的少ない。これは、室内照明光から得られる電力が非常に小さいことが理由の1つであるが、エネルギーハーベスティングとしては十分成立する。

Yano E plus 2018年3月号