中小企業の事業承継は産業活性化の好機である


「2040年に地方自治体の半分が消滅」という衝撃的な増田レポートも相まって“地方創生”に対する関心は高い。しかし、鳴り物入りではじまった地方創生交付金も結局プレミアム付き商品券や移住に際しての家賃補助など一過性の側面が強い。地方への人の流れを持続的に作り出すためには安定した雇用が欠かせない。その意味で中小企業の事業承継問題をあらためて問う必要がある。

中小企業経営者の高齢化は急速に進行している。60歳以上の経営者の割合は5割超、今後、毎年8-10万人の経営者が引退適齢期を迎える。後継者の不在も相まってM&A需要は右肩上がりである。しかし、総量的にはまったく手が足りない。そのうえ民間のM&Aマーケットの外側には更に小規模な企業が170万社ある。こうしたM&Aの空白地帯は「事業引継ぎ支援センター」や「後継者バンク」など中小機構を主体とする官の体制で対応しているが、成果は少ない。

一方、政府は「5%程度に止まる起業率を倍増させる」との目標を掲げた。つまり、新たに10万人に起業させるということだ。しかし、これは容易ではあるまい。実は起業率の低さは廃業率の低さと裏表をなす。その根幹にあるのが日本特有の「個人保証」の問題である。若い起業家にとっては「始めるリスク」が高いし、一方、高齢経営者にとっては辞めたくても辞められない状況を生み出す。

地方のイノベーションを実現させ、雇用の場を拡大させるためにも新たな発想と行動力をもった若い事業家へバトンを渡す仕組みが有効である。自治体や省庁の縦割り型の責任範囲、権益、前例の中に解決策はない。

今週の”ひらめき”視点 04.19 – 04.23

 

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