壊して建てる時代は終わった! 住宅産業は新たな価値によって再定義される


訪日外国人の急増を背景に貸手と借手を仲介する民泊ビジネスが台頭してきた。米国発の新たなベンチャービジネスは既存業界との軋轢の中、新たなインバウンド市場を日本に創出しつつある。
私たちは、このビジネスモデルを旅館業法の問題に矮小化すべきではない。従来、住宅の価値とはまさに土地そのものであった。そして、建築物としての価値は法定耐用年数が基準となる。木造住宅であればたった22年である。人口減少社会にあって、もはや新設住宅着工戸数の回復は見込めない。一方、ストックとしての住宅は6千万戸を越え、その13.5%が空家である。民泊ビジネスの本質はここにある。すなわち、不動産としての価値を失った住宅に「稼ぐ力」を与える、ということである。言い換えれば、ストック資産の市場化であり、住宅価値のイノベーションと解することが出来よう。

9月1日、住宅関連機器大手LIXILは家電小売店や介護情報サービス会社などと組んで、住宅の管理、修繕、リフォームから子育てや介護など、「家」に関するサービスの総合仲介事業を開始した。民泊と同様、これも「家」をサービス売上の顧客単位とする仲介ビジネスである。ストックとしての家はサービスを提供する商品であり、また、売上が計上される単位となる。やがて、住宅は単なる不動産価値ではなく、お金を生み出す将来可能性の大きさがその価値を決めることとなる。
 住宅は「建てる」ことを主力とする産業から、「人が住まう」ことを支援するサービスの“場”へと変わってゆく。市場の縮小は新たな産業を創出し、新たな担い手を招き入れる。そして、高いレベルで生み出される新たな価値は、人々の生活価値観や産業の構造を変えてゆく。そこに大きな可能性がある。

今週の”ひらめき”視点 08.30– 09.03

 

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