トランプ大統領始動、世界は拡散と混乱へ向かうのか


20日、16分という短い就任演説において、「勝利はあなた方のものであり、アメリカ合衆国はあなた方の国だ」とトランプ氏は語りかけた。しかし、彼を支持する“あなた方”以外の国民が抱く懸念を払拭させる内容はなかった。演説は選挙期間中そのままの彼が、第45代アメリカ合衆国大統領として、あらためて「アメリカ第1主義」を世界に対して宣言したものであった。偉大なアメリカの実現に向けて「米国製品を買い、米国人を雇う」と語った彼は、言葉どおりTPPからの離脱とNAFTAの再交渉を表明した。

仏の歴史人口学者エマニュエル・トッドは、米国が主導したこの35年間のグローバル化を「世界の解放、エリート主義、階級への分裂、収入の格差、社会的経済的不平等が広がった時代」と捉え、その反動として「国民国家の枠組みへの回帰」がはじまった、とトランプ現象を総括、「世界は一致に向かっていない」と断じた(「グローバリズム以後」、朝日新聞出版)。
確かに、トランプ氏やサンダース氏の登場、また、英国のEU離脱も“時代の大きな流れの中での必然である”と理解すべきであろう。
暴走したグローバリズムに一定の調整は必要であり、国民国家や共同体が再興してゆく過程で民主主義の危機が超克されるのであれば、それは希望となる。

現時点でトランプ政権の行方はまだ完全に見えない。しかしながら、もしも超大国アメリカが、力を背景に排外主義の徹底を強行するのであれば、新たな差別、分断、萎縮、不正義、そして、暴力を国内そして世界に呼び込みかねない。
未来の歴史学者にとって、それは“時代の移行期における一時的な混乱”に過ぎないかもしれない。しかし、今を生きる私たち自身が“時代の必然”などと正当化してはなるまい。求められているのは時代をつなぐビジョンである。

今週の”ひらめき”視点 01.22 – 01.26

代表取締役社長 水越 孝

 

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