シェアリングエコノミーサービスとは

2017年6月
主席研究員 石塚 俊

シェアリングエコノミーサービスとは、「不特定多数の人々がインターネットを介して乗り物・スペース・モノ・ヒト・カネなどを共有できる場を提供するサービス」のことを指す。矢野経済研究所ではシェアリングエコノミーサービスの対象となる共有物を「乗り物」、「スペース」、「モノ」、「ヒト」、「カネ」の5つのカテゴリーに分けて調査している。

シェアリングエコノミーが注目されているのは、海外で既に普及しているAirbnbやUberなどのサービスが日本にも登場したためである。2014年3月にライドシェアサービスを提供するUber Technologiesが日本でのサービスをリリースし、2014年5月には世界中の人々と部屋を貸し借りする「個人宅の宿泊サイト」を提供するAirbnbが日本法人を設立した。

AirbnbとUber Technologiesは創業から10年にも満たない企業だが、Airbnbの時価総額は既にヒルトングループを超えており、またUber Technologiesの時価総額はゼネラルモーターズを超えているとも言われている。このような急成長企業が日本市場に参入したため、日本のメディアはこれらの企業を「黒船」などとこぞって取り上げた。そのため、民泊やライドシェアなどのシェアリングエコノミーサービスの存在が急速に認知されることになった。

国内のシェアリングエコノミーサービス市場を構成する各カテゴリーの中で最も市場規模が大きいのは、「乗り物のシェアリングエコノミーサービス」であり、2015年度は市場全体の約74%を占めている。

「乗り物」のシェアリングエコノミーサービスとは、「会員間で車や自転車などの乗り物を共有し、利用できるサービス」と「移動手段を探している人と乗り物の所有者・運転者をマッチングする相乗りサービス」がある。前者は一般的に「カーシェアリング」、「サイクルシェアリング」などと言われている。一方、後者は一般的に「ライドシェア」、「配車アプリ」などと言われている。

乗り物のシェアリングエコノミーサービスの中では「カーシェアリング」が大部分を占めており、「ライドシェア」の占める割合は国内ではまだ僅かである。「カーシェアリング」は、国内に登場したのが2002年と古いこともあり、2015年から流行したその他のシェアリングエコノミーサービスと比較すると市場規模は大きくなる。

日本の自動車業界はシェアリングエコノミーサービスの動向をもっと注視すべき

乗り物のシェアリングエコノミーサービスであるカーシェアリングは「自動車メーカー」をはじめとする既存の自動車業界に影響を与えていく可能性があると考える。具体的には、カーシェアリングの利用が増えるとその分自動車の販売台数が減少すると予測する。欧米では、都市部への車の流入規制が広まりつつあり、都市部での交通手段の一つとしてカーシェアリングサービスが利用されるようになってきている。そのため、カーシェアリングサービスが普及すると都市部を中心に自動車販売が減少すると言われている。

そのため、欧米の大手自動車メーカーは、カーシェアリングサービスの普及に伴う自動車の販売減に備えて、カーシェアリング事業への取り組みを本格化している。つまりハードの販売で稼げない分を、サービスでカバーしていこうとする戦略である。ドイツのダイムラーやBMWなどが先行して取り組んでおり、米国のゼネラルモーターズも同様な取り組みを始めている。

欧米の大手自動車メーカーのこのような取り組みは「サービスへのシフト」以外にも「車離れの若者を取り込む」ことも目的にしている。つまり車離れをしている若者にカーシェアリングサービスによって車の利便性を認識してもらい、将来的な車の購入につなげたい、という考えである。

欧米の大手自動車メーカーが積極的にシェアリングエコノミーサービスに取り組んでいるのに対して、日本の大手自動車メーカーは、将来的な車の販売減を懸念してか、あるいは既存の販売店からの反発を意識してかは不明だが、海外自動車メーカーと比較するとカーシェアリングサービスへの取り組みに関してまだ積極的とは言えない。

日本の大手自動車メーカーは、シェアリングエコノミーサービスが将来的に普及した時の影響を考慮し、シェアリングエコノミーサービスにもっと積極的に関わっていくべきである。なぜなら、この分野を競合他社に先に押さえられてしまうと、ハードが売れなくなった時にサービスへのシフトが進めづらくなる可能性があるためである。また前述したような車離れをしている若者に自社の車を利用してもらい、新たな購入につなげていく、といった取り組みが進めづらくなる可能性もある。

現状はシェアリングエコノミーサービスの市場規模はまだ大きいとは言えないが、将来的な自動車販売に与える影響を考慮すると、日本の自動車業界はもっとシェアリングエコノミーサービスの動向を注視しておくべきと考える。