エンタメ市場を中心としたVR導入、その現状と今後の可能性

2018年1月
研究員 高澤 宏允

VR技術の展開領域

2016年に入り、主にエンターテインメント市場への導入で世間から一気に注目を集めたVR技術は、既存市場の活性化や新たな顧客層の獲得など、市場発展に貢献する技術として期待され、その活用方法が日々模索されている状況にあります。

現在の展開領域は、主にアミューズメント市場、家庭用・PCゲーム市場、スマホゲーム市場、複合カフェ市場といったゲームを中心としたエンターテインメントコンテンツを扱う市場のほか、フィットネスや不動産、観光・旅行、小売・流通、行政など、一般消費者向けにサービスを展開する市場へと広がっています。現在、最も導入が進んでいる市場はその注目度と同様にアミューズメント市場やゲーム市場など、ゲームコンテンツへVR技術を利用している市場ですが、それ以外の市場についても導入が検討され、実験的な活用も始まっています。

ゲームコンテンツ以外での活用事例

フィットネス ライド型バイクとVR映像を組み合わせたトレーニング専門スタジオフィットネスジムでのVR体感トレーニングマシン
不動産 物件の内見や部屋の装飾、家具の配置転換などをVR映像で表現し、現地に行かなくても確認できるサービス
観光、旅行 VRで観光地の景観を疑似体験できる誘客ツール
旅行者と旅行に同伴していない者がVRによって旅行先の景観を同時体験できるサービス
ファション VRによる疑似試着サービス
バーチャルショールームによる商品販売
行政 VRで観光スポットや現地イベントの疑似体験ができる誘客ツールを活用した観光振興

エンターテインメント市場以外では、既存のサービスに付加価値をつける、新たなサービスとして提供する、既存サービスのプロモーションとして利用する、といった活用方法が活発になってきており、特にプロモーションツールとしての活用は各自治体でも取り組みが始まっています。この様に、今後様々なサービスや製品での採用が増えていくでしょう。

アミューズメント施設への導入が進むVR技術

前述のとおり、目下、VR技術の展開先として最も注目されているのはアミューズメント施設でのVRアトラクションです。

VRデバイスの開発とともに早期から研究開発が行われていたアミューズメント施設向けのVRアトラクションは、元々体感型ゲームがベースとなっているため、VR技術との親和性の高さが注目されていました。2014年頃から映像制作会社やソフトウェア開発会社が中心となって様々なVRアトラクションの研究開発が行われており、本格的な市場への導入がスタートする前から技術展示やプロモーションとしてイベントなど各所で出展が行われていたことも、アミューズメント施設への導入が進んだ大きな要因となったと言えます。

アミューズメント施設での導入事例

2017年12月時点では主に下記の様な導入事例があります。

主な参入企業と導入事例

参入企業 施設導入事例
バンダイナムコエンターテインメント VR専門施設「VR ZONE SHINJUKU」の開業、既存アミューズメント施設へのVRアトラクションの導入。
セガグループ 自社アミューズメント施設「クラブセガ」へのVRアトラクションの導入。
アドアーズ 自社アミューズメント施設「アドアーズ」へVR専門フロア「VR PARK TOKYO」の設置。
ハウステンボス 「ハウステンボス」内でのVRコンテンツ専用エリアの開設と都内でのVR体験施設「SHIBUYA VR LAND」の展開。
イオングループ 常設VR体験施設「VR CENTER」の開設とショッピングセンター内アミューズメント施設にVRコーナーを設置。
サンシャインシティ 「サンシャインシティ60展望台」へVRコンテンツを設置。
ユー・エス・ジェイ 「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」内にて期間限定でVRアトラクションを設置。
富士急ハイランド 「富士急ハイランド」にてジェットコースター型VRアトラクションを設置。
コニカミノルタプラネタリウム 商業施設内にVR空間を体感できる集団体験型VR施設「VirtuaLink」を開設。

上表のように、大手を中心としたアミューズメント施設運営事業者によって導入が進められている状況にあり、テーマパークにおいても施設内のフロアを改装してVR専用コーナーを設け、施設のもつコンセプトやイメージにマッチしたVRアトラクションの導入を進める動きが活発化しています。近未来型シューティングやホラーを題材としたアトラクション、施設の眺望を活かしたアトラクションなどはその代表的な例と言えるでしょう。

VR技術の展開における課題と今後

VR技術は、エンターテインメント市場以外でも様々な市場で導入が始まっていますが、さらに、幅広い市場での導入や一般消費者への浸透を図るためには、解決しなければならない問題もあります。

VRデバイスや関連製品については価格が高額である点、デバイスの使用による「VR酔い」以外にもデバイスの使用によって子どもが斜視になるリスクも懸念されています。それに対し、2018年1月5日には一般社団法人ロケーションベースVR協会が両眼立体視機器を使用した施設型VRコンテンツの利用年齢に関するガイドラインを自主規制としてリリースするといった動きもあります。また、当初最も期待されていた家庭用・PCゲーム市場、スマホゲーム市場で大ヒットと呼べるようなタイトルが登場していない点も市場浸透のボトルネックと言え、VRでの体験性と本来のゲーム性の丁度よいバランスを見出すべく、ゲームメーカー各社が研究を重ねている状況です。こうした課題の解決はVR技術の今後の発展に必要不可欠なことだと言えるでしょう。

いずれにしても、現在はまだVR技術が市場に導入されて間もなく、ハード面での技術的な研究もさらに進められている状況です。今後、課題の解決に向けた取り組みや運用ノウハウの蓄積が進むことで、VR技術の展開領域や活用手法は飛躍的に拡大・発展するものと考えられます。