アナリストeyes

健康増進・予防とかかりつけ薬局

2019年1月
主任研究員 生貫 彦三郎

政府は2018年12月21日に、平成31年度予算を閣議決定した。一般会計総額は101兆4,564億円と7年連続で過去最大となり、当初予算として100兆円の大台を初めて超えた。歳出のうち国債費と地方交付税交付金等を除く一般歳出は、前年度比5.2%増の61兆9,632億円である。このうち、社会保障関係費が同3.2%増の34兆587億円で、一般歳出の55.0%を占める。
社会保障関係費の財源は税金であるが、国民は税金以外にも各種の社会保険料(医療保険、年金保険、介護保険など)を納めている。国家予算の社会保障費と国民から徴収した保険料の合計が社会保障給付費として、国や地方から給付される年金・医療・介護などの金銭やサービスとして国民に給付されている。
2016年度の社会保障給付費の総額は前年度比1.3%増の116兆9,027億円で、これは1人当たり92万1,000円、1世帯当たり227万4,100円の負担である。社会保障給付費の対国民所得比は、2000年度の20.5%から2016年度には29.8%に上昇している。

超高齢社会が進展する中、社会保障関係費の抑制が国家財政健全化の重要課題の一つであるが、国民にとっても個々の負担の面から社会保障給付費の動向は大きな関心事である。政府は様々な形で医療費の削減に取り組んでいるが、「経済財政運営と改革の基本方針2017」(いわゆる骨太方針)では、社会保障に関する改革の取り組みの一つとして、健康増進・予防の推進を挙げている。
健康増進・予防の推進と言えば、健康食品やサプリメントなどを利用する人も多い。手軽に摂取できる食品を通じて、健康の増進・予防を図ろうとする意識は高まっている。数ある商品の中からどの商品を選択するのかは、個々の目的、嗜好、予算などから決定されていると思われる。しかし、食品であれば自分で選択できるが、これが身体の不調に対する手当てなどになると自身では判断できず、医薬品や健康に関する専門的な知識や情報を持つ専門家の手助けが必要となる。

医薬品や健康に関する専門家は薬剤師で、医薬品や健康などヘルスケアの専門店が薬局、ドラッグストア、薬店などと呼ばれる店舗である。調剤機能を持つのが薬局(物販も行う店舗もあれば、調剤機能のみの店舗もある)、セルフサービスで物販を中心とするのがドラッグストア、物販のみでセルフサービスではないのが薬店といったイメージを持つ人が多いと思われる。
ドラッグストアでも調剤機能を持つ店舗は薬局に分類される。また、薬局には薬剤師が常駐しているが、ドラッグストアや薬店には薬剤師が勤務する店舗もあれば、登録販売者という薬剤師とは異なる資格者のみが勤務する店舗もある。店舗タイプは様々で、店舗名や外観では区別がつきにくい場合も多い。
2017年度末で全国に薬局は59,138軒、ドラッグストア・薬店(正式には店舗販売業、薬種商販売業と言う)は26,670軒、合計85,808軒で、人口約1,500人に1軒の割合である。

厚生労働省は、薬局が患者等のニーズに応じて充実・強化すべき機能の一つとして、健康サポート機能を挙げている。健康サポート機能とは、処方箋を持参する患者への調剤だけではなく、健康相談への対応や、受診勧奨・関係機関を紹介するなど国民の病気の予防や健康サポートに貢献する機能である。
国は医療機関に通う患者に対して、かかりつけ薬剤師・薬局を持つことを薦めている。どこの医療機関を利用しても、処方箋を持参する薬局を決めることで、医薬品の飲み合わせだけではなく、医薬品や健康に関して疑問や困ったことがあった時、体質や病歴を理解してくれた上で相談に乗ってくれることがメリットとされる。かかりつけ薬剤師・薬局を持つことは、医療機関に通う患者だけではなく、医療機関に通っていない人にとってもメリットがある。健康や医薬品について、いつでも気軽に相談できる言わば行きつけの薬局を持つということである。
行きつけの店として飲食店を持つ人は多いが、他にも理容室や美容室、ブティックなど決まった店を利用する人も多い。こうした行きつけの店では、自分の好みに合った商品やサービスが提供されるが、それと同様に薬局では自分の健康状態や体質に合った商品やサービス、情報が提供される。
地域住民を対象に健康相談会や健康フェアなどを開催する薬局が増えているが、薬局を利用したことがなく、処方箋がないと薬局に入り難いのであれば、ドラッグストアでも良い。薬局かドラッグストアかは問わず、気軽に相談できる店を見つけることが重要である。また、健康相談する店と日用品を購入する店を使い分けるなど、目的に応じて店を選択するのでも良い。自分に合った店を見つけるためには、どの業種でも同様であるが、数多くの店を利用してみることである。利用する中で自分に合わなければ、別の店を探せば良い。気軽に相談に乗ってくれる店を見つけることは、自身の健康増進・予防を図る手助けになるのではないだろうか。