アナリストeyes

コロナ禍におけるゴルフ産業の動向

2021年5月
理事研究員 三石茂樹

世の中では第3回目となる新型コロナウイルス感染拡大防止を目的とした緊急事態宣言の延長に関するニュースが連日報道されている。私の調査担当分野であるスポーツ産業においては東京オリンピック・パラリンピックの開催とその是非に対するニュースが報道されており、東京での2回目の五輪開催が決定した当時には純粋に涙を流して喜んでいた身としてはいささか「肩身の狭い」思いをしている今日この頃である。

私が専門的に調査をしているゴルフ産業であるが、新型コロナウイルス感染拡大によって言うまでもなくマイナスの影響を受けてはいるものの、「若年齢層を中心とした新規ゴルファーが増加している」という話が2020年6月以降頻繁に業界関係者から聞かれるようになっており、そうした傾向は現在でも引き続いているようである。しかしながらそうした「新規参入ゴルファー」が国内で一体どのくらい創出されたのか?についての定量的な推計データは存在しておらず、私のところには「若いゴルファーが増えているというが、本当か?」「一体国内でどのくらいの人がゴルフを始めているのか?」といった問い合わせが数多く寄せられていた。そうした声を受け2021年に消費者モニターへのインターネットアンケート調査を実施した。具体的には2020年1月から現在までを「コロナ期」と定義し、

・コロナ期にゴルフをリタイアした「コロナリタイアゴルファー」
・コロナ期にゴルフを始めた(または復帰した)「コロナ参入ゴルファー」

がどの程度存在するかを推計算出した。詳細については当社より4月末に発刊された「コロナリタイアゴルファー実態調査2021」を参照頂ければ幸いであるが、今回の調査ではコロナ期にゴルフを始めた(または復帰した)「コロナ参入ゴルファー」は約60万人存在するという結果となった。ゴルフ産業関係者ではこれまで若年齢層を中心とした「新規ゴルファー参入促進」をテーマに様々な戦略立案・戦術実行を行ってきたが、華々しい効果があったとは言い難い状況が続いていたのが実情である。それが新型コロナウイルスを契機として図らずも実現されたということになる。我々の役割は以前ならばこうした調査結果を開示して「終わり」であったのだが、現在はこうした調査結果を元に「新しく創出された新規ゴルファーの継続率を如何にして上げてゆくか」「更なる新規ゴルファーが創出される好循環の仕組みを如何にして構築するか」の具体策を立案し、提案・提言するところまで踏み込む必要が出てきている。例えるならば、以前はプロ野球を観客席で観戦して好き勝手に「ヤジ」を言っていれば済んでいたものが、自分自身もベンチ入りしてチーム運営に参画しなければならなくなっているようなものである。
市場調査会社の研究員も責任を持って産業に参画する意思を以て臨まなければ、その存在価値を失う時代になっているということである。