プレスリリース
No.2668
2021/03/10
国内繊維産業・アパレル市場に関する調査を実施(2020年)

マスカスタマイゼーションは、在庫レスのビジネスを実現する新しいサプライチェーンのあり方として期待、さらに衣料の単価アップにつながり、輸出型ビジネスにも適する

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内の繊維産業・アパレル関連市場を調査し、各分野ごとの動向及び市場の展望を明らかにした。

1.市場概況

経済産業省「工業統計表」より、2009年と2018年の国内繊維工業の事業所数、従業員数、製品出荷額の推移を比較した。我が国の繊維産業は、この10年間も減少傾向が続いている。2018年の出荷額は2009年比97.8%とほぼ横ばいだが、従業員数は同79.5%、事業所数は同64.6%と大きく減少している。6,067この10年間で、約6,000の事業所が減少し、約6万3千人の従業員が繊維工業から離れ、出荷額では約866億円が失われている。但し、出荷額に関しては若干ではあるが、ここ10年で減少ペースは落ちている。

繊維工業は、かつての日本の主力産業で明治期においても、また戦後の復興期にも日本を支えた重要な産業であったが、近年は衰退を続けている。1990年代からの繊維製品の海外への生産移転が国内繊維産業の縮小に拍車をかけている。出荷額は2007年と2008年と前年を超えて回復基調だったが、海外移転、景気低迷という二重苦によって縮小が続いている。
また、ここ数年は「国産」を明示する繊維製品が増加し、「J∞QUALITY」といった取り組みが行われているが、織り・編み、染色整理加工、縫製、この3つがすべて日本で行われる必要があり、ハードルが高く効果には疑問が残る。今後、コロナ禍による影響が懸念される。

2.注目トピック

アパレル産業におけるDXの方向性

アパレル業界は、大量に発生する不良在庫という課題を解決し、在庫適正化をはかっていかなければならない。

生産段階においては、見込み生産の精度を高くすれば大量生産体制から脱却することになり、不良在庫を最小化できることになる。精度を高くするには、最終消費者の購買動向(ネットとリアル)を迅速に把握する必要がある。
生産・物流の両面で、クイックレスポンスによる細やかな供給が必要である。少量だけ発注し、売れ残りが出そうであれば生産をストップし、さらに売れることが見込まれれば短期間で生産を行い納品することで、在庫の適正化を図ることが可能だ。こうした取り組みは、生産拠点をASEAN諸国から中国に戻すといった単純なことでもある程度カバーできるが、それを成長戦略とするには限界がある。生産段階におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)、販売におけるDX、そしてサプライチェーンを一気通貫させるDXを行うことによって、より見込み生産の精度が向上する。消費者の動向をみて、資材の生産をコントロール出来ることが理想である。

また、在庫レスのビジネスモデルであるマスカスタマイゼーション(個別オーダーを大量生産するシステム)も製造点数がそのまま販売点数となることから、在庫レスと同義とされる。しかし、マスカスタマイゼーションは見込み生産における問題解決にとって有力なものであるが、急速な広がりを見せることは難しい。

3.将来展望

国内の繊維産業、アパレル市場はバブル経済崩壊の1990年代初頭に生産拠点を海外にシフトしたことで、脆弱化している。海外に生産拠点をシフトしたことで、輸入品が急増し、現在は輸入依存型のマーケットである。このような輸入依存型のビジネスモデル、サプライチェーン体制から、今後どこに活路を見出せばよいか。

国内のアパレルマーケットは、ハイエンドマーケットと価格訴求型のマスボリュームマーケットの二極化が進んでいる。今後、ますます少子高齢化が進み、国内アパレル市場は中・長期的にさらに勝ち負けが明確になると考えられ、アパレルメーカーは国内のみの展開では生き残っていくことは困難になる。したがって、国内市場に活路を見出せないとすれば、海外にビジネスの場を求めていくと考えるのが自然である。

財務省「貿易統計」によると、国内の繊維品の輸出金額で最も多いのは、衣料とその他で構成される二次製品で4,020億円(2018年)、次に織物である。繊維品の二次製品の輸出金額は右肩上がりに伸びているが、そのうちの衣料のシェアは低い。輸出総額の約8%、二次製品のうちの約18%に過ぎない(2018年)。この衣料の輸出シェアの拡大が、国内のアパレルメーカー、小売業の目指す方向であろう。
日本製のアパレル製品を海外に輸出開発していくことが、企業と国内産業の再活性化につながる。国内の生産能力は20年前と比べると、3分の1の水準にまで落ち込んでいるとすれば、生産数量を増やすよりも、生産金額、製品の平均単価を押し上げることが重要である。それにはマスボリューム向けの製品ではなく、エンドユーザーのニーズや好みに対応した一点物の製品が適している。

現在、徐々に増えてきているマスカスタマイゼーションは、デジタルテクノロジーを活用して受注生産を効果的に行う取組みであり、在庫レスのビジネスを実現する、新しいサプライチェーンのあり方として期待されている。また、衣料の単価アップにつながるだけでなく、輸出型ビジネスにも適している。その取組みは産業の在庫レス化に寄与するだけでなく、環境負荷の低減、サスティナビリティの観点からも注目されている。
日本ではまだ意識が高いとは言えないが、欧米の環境に対する負荷軽減意識、持続可能な社会に対する意識は高く、ムダを廃したマスカスタマイゼーションによる製品は受容されやすい。むしろ、これからはこのように環境に配慮した製品でなければ、海外で顧客を獲得することは難しくなる。マスカスタマイゼーションへのシフトは国内繊維・アパレル産業のあるべき姿、すなわち適正在庫、在庫レスのビジネスモデルに向かわせるだけでなく、海外市場にビジネスオポチュニティを求める輸出型ビジネスに向けた確実な一歩となろう。

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    調査要綱

    1.調査期間: 2020年9月~12月
    2.調査対象: 国内の繊維産業・アパレル企業
    3.調査方法: 当社専門研究員による直接取材、郵送アンケート調査、ならびに文献調査併用

    <繊維産業・アパレル市場とは>

    本調査における繊維産業・アパレル市場とは、繊維全般(織物、編物、染色整理、紡績、合繊繊維、不織布、産業資材)および衣料全般(紳士服、婦人服、ベビー子供服、学生服・作業服、スポーツウェア)、小売業(百貨店、量販店、専門店、無店舗販売など)、問屋(生地問屋、製品問屋)、アパレルメーカー、商社、貿易、その他(寝装寝具、インテリア)などを対象とした。

    <市場に含まれる商品・サービス>

    紳士服・洋品(紳士服、下着類、シャツ、ネクタイ、靴下など)、婦人・子供服・洋品(婦人服、子供服、下着類、ブラウス、靴下など)、その他衣料品(スポーツウェア、作業服、呉服、反物、寝装具類、インテリア、和装小物など)、身の回り品(靴、履物、和・洋傘、かばん、トランク、ハンドバッグ、裁縫用品、装身具(宝石・貴金属製除く)など

    出典資料について

    資料名
    発刊日
    2020年12月25日
    体裁
    B5 788ページ
    価格(税込)
    143,000円 (本体価格 130,000円)

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