プレスリリース
No.3418
2023/12/14
偏光板・部材フィルム世界市場に関する調査を実施(2023年下期)

2023年のLCD-TFT/AMOLED向け偏光板の世界生産量は前年比114.3%の56,465万㎡を予測
​~2023年の偏光板世界市場は第3四半期まで好調を維持したものの、第4四半期から始まったTVパネルメーカーの生産調整により物量ダウンの見込~

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、2023年下期の偏光板及び部材フィルム世界市場を調査し、製品セグメント別の動向、将来展望を明らかにした。ここでは、偏光板の世界生産量予測について、公表する。

偏光板の世界生産量推移・予測
偏光板の世界生産量推移・予測

1.市場概況

2023年の偏光板世界生産量は前年比114.3%の56,465万㎡になると予測する。

2022年は巣ごもり需要の終了、景気悪化によるディスプレイ不況が到来し、偏光板の世界生産量は大幅に減少した。2023年は初頭から大型TVパネルの生産量が拡大し、ディスプレイパネルメーカーから偏光板メーカー各社へのオーダー量が増加し、偏光板需要は2023年第2四半期(4~6月)から第3四半期(7~9月)にかけて好調を維持した。中国TVパネルメーカーのみならず、台湾・日本のTVパネルメーカーの生産が拡大したことも好材料となり、大型TVパネル向けを手掛ける偏光板メーカーはフル稼働まで生産が回復した。実際のTV製品販売動向とは異なる動きであるが、2023年第3四半期(7~9月)まで65インチ以上の大型TVパネル生産量は拡大し、回復したことで2023年の偏光板の世界生産量は拡大する見通しである。
しかし、その後10月より供給過剰による単価下落を防ぐために、中国TVパネルメーカーを中心としたTVパネルメーカー各社がTVパネルの生産調整に入った。そのため、TVパネル向けを手掛ける偏光板メーカーは各社により稼働率に差はあるが、2023年第4四半期(10~12月)の平均稼働率は第3四半期比約2割ほど低下する見込みである。

2.注目トピック

中国偏光板メーカーの増設レースは止められず、2024年よりとうとう偏光板業界の再編へ

偏光板業界では、最終的に「生産能力=価格競争力」となる。中国偏光板メーカーのShanjin(杉金光電)とHMO(恒美光電)は生産能力を拡大することで競合他社の撤退を促している。
2024年時点でShanjin、HMOの2社の偏光板生産能力は4億㎡を超える見込みである。後倒しになっていたShanjinの計3ラインが2024年より本格的に稼働するほか、HMOは昆山拠点で3,000㎜幅の偏光板生産を検討しているため、2024年にはこれら2社の生産能力だけで偏光板需要の7割強をカバーできる見通しである。

中国偏光板メーカーの増設レースは止められず、2024年より偏光板業界の再編が本格化すると予測する。過激な競争環境に置かれた他の偏光板メーカーが必死にShanjin・HMOに対抗しているなか、一部の偏光板メーカーでは2024年より生産ラインの閉鎖や一部のLCD TVパネル向け事業の縮小などを選択している。また、ボリュームゾーンであるLCD TV向け市場ではなく、当面、中国偏光板メーカーが参入できない高付加価値な偏光板の販売に注力するのも一つの選択肢である。

3.将来展望

2023年11月のブラックフライデーなどの年末年始商戦イベントでのTV製品売れ行きが、2024年の偏光板市場の立ち上がりに影響する見込みである。

2024年は前倒し需要が見込まれる中国春節などの大型連休向けの在庫調整や、パリオリンピックなど大型スポーツイベント向けでの需要回復次第では早い段階で生産量調整が終了する可能性があるものの、現状では2023年第4四半期(10~12月)から2024年第1四半期(1~3月)の後半まで、TVパネル・偏光板双方での生産調整が続くと予測する。
TVパネル以外、IT系(モニター、ノートブック、タブレットPC)パネルや中小型パネル(スマートフォン等)の需要は2022年の大幅な減少後、2023年も回復していなかった。これらの用途向けも2024年からコロナ禍の巣ごもり特需以前の需要水準に復帰する見通しである。

こうした状況のなかで、新製品発売に向けたTV製品やTV向けパネルの先行生産シーズンである2024年第2四半期(4~6月)から第3四半期(7~9月)に向けて、偏光板の需要は拡大を予測する。 また、ボリュームゾーンである65インチTVパネルの他、2023年下期(7~12月)より本格化した75インチや85インチパネルの生産拡大が偏光板面積の拡大に貢献することもあり、2024年の偏光板世界生産量は前年比104.2%の58,825万㎡に成長すると予測する。

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Aパターン
  • セグメント別の動向
  •  2023年もShanjinのM/S約5%上昇へ 2024年以降も日系偏光板メーカーのシェアダウンが続く
  • 注目トピックの追加情報
  •  2022年に既に在庫確保のリスクを学習、Over-Supplyの状況を避けるため、 2023年第4四半期よりパネル側の生産調整へ
  • 将来展望の追加情報

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    調査要綱

    1.調査期間: 2023年9月~11月
    2.調査対象: 偏光板メーカー、位相差フィルムメーカー、PVA保護フィルムメーカー、表面処理フィルムメーカー
    3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、ならびに文献調査併用

    <偏光板市場とは>

    偏光板とは、特定方向に偏光又は偏波した光だけに限って通過させる板であり、ディスプレイ向けに使用される偏光フィルムをさす。偏光板は全てのディスプレイに使用される主要部材であるため、ディスプレイ市場が拡大していくに伴い偏光板市場も成長していく。 本調査における偏光板市場とは、TFT-LCDパネル向け、AMOLEDパネル向け、PM-VAパネル向けの偏光板のほか、TN-LCDパネル向け、STN-LCDパネル向けを加えて、メーカー生産量(万㎡)ベースで算出した。

    <市場に含まれる商品・サービス>

    偏光板、主要部材フィルム(位相差フィルム、PVA保護フィルム[保護側:Outer側]、表面処理フィルム等)

    出典資料について

    資料名
    発刊日
    2023年11月20日
    体裁
    A4 136ページ
    価格(税込)
    220,000円 (本体価格 200,000円)

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    マーケティング本部 広報チーム
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