今週の"ひらめき"視点

拡大BRICSと対日強硬策の背後にある中国リスク。社会の安定に向けて構造改革を

8月22日~24日、南アフリカでBRICS(新興5か国)首脳会議が開催、アルゼンチン、エジプト、エチオピア、アラブ首長国連邦、サウジアラビア、イランからの加盟申請を承認し、閉幕した。BRICSは、もともとゴールドマン・サックスが2001年に発表した自社の投資レポートの中で、高い経済成長が見込まれるブラジル、ロシア、インド、中国の4か国を “BRICs” と総称したことがはじまり。2011年、南アフリカが参加して現在の “BRICS” となり、2024年1月、上記6か国を加えた11か国体制に拡大する。

とは言え、各国の政治体制、財政、産業、発展の段階は一様ではないし、欧米との関係も一枚岩とは言えない。したがって、統一的な施策やルールづくりにおける合意形成はそもそも現実的ではない。加えてロシアを取り巻く国際情勢の変化、盟主を自認する中国の成長力低下もあって、新興国間の経済協力や開発支援についても大きな成果は得られまい。すなわち、経済的な実利およびグローバル経済に対する影響力のいずれにおいても実質的な “果実” は期待できないと思われる。

BRICSを取り巻く環境は変わった。リーマン・ショックに喘ぐ世界を救った「開かれつつあった中国」も変質した。それでも、否、それゆえに中国はBRICSの拡大を主導したとも言える。狙いは欧米主導の国際秩序に対抗するための牽制装置として政治利用だ。不動産不況、膨張した公的債務、若年層の失業、急速な高齢化、金融システムリスク、、、不透明感が募る経済状況の中、拡大BRICSを背景にG7との関係を再構築したいというのが中国の本音であろう。とは言え、安易な譲歩はないだろう。とすると懸念はそれが更なる対外強硬策に向かうことだ。

日本産水産物の輸入禁止措置は政治的な報復以外の何物でもない。問題はどこまでエスカレートするかだ。愛国的行動として免罪される日本への「嫌がらせ電話」は、言わば徹底して政権批判を封じてきた政策的成果とも言えるが、果たして国に対する無批判な同調や過剰な忖度を当の国自身がコントロール出来るのか。回避すべきは世論の暴走が国をもう一段の対外強硬策に追い込むような状況だ。矛先は日本だけではない。不景気の長期化、閉塞感の鬱積はこうした事態を助長する。対処療法で問題は解決しない。中長期的な視点に立った構造改革を望むとともに我々の側もリスク低減に向けて知恵を尽くす必要があろう。


今週の“ひらめき”視点 8.27 – 8.31
代表取締役社長 水越 孝