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【マイナンバー制度】官民連携で利用拡大を

2014年11月
主任研究員 忌部 佳史

マイナンバー法は2013年5月に成立した。正式名称は「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」であり、国民一人一人に番号を付与し、社会保障や税の諸手続きにおける共通番号として利用するというものだ。

最大の目的は、国民の所得や納税、社会保障に関する手続きなどを一元的に管理し、税負担や社会保障給付を公平で確実に行うことである。さらに東日本大震災の経験から、災害で通帳などを失っても預金の引き出しや被災者支援などが受けられるよう、本人確認手段としての役割も求められる。そのためマイナンバーの適用は、まず「税」「社会保障」「災害」の3分野と規定されている。

法人番号についても、マイナンバー法が規定している。法人番号の使い方に法的な制限はなく、汎用的な企業コードとして、自由な民間利用ができる。ほかの企業との取引記録を名寄せする作業の効率化など、さまざまな効果が期待できそうだが、企業側の関心は低い。

政府が発表した導入スケジュールによると、個人番号と法人番号の通知は15年に始まる。16年には個人番号を交付し、番号の利用も開始。17年に関連システムの運用が始まる。

自治体などのシステム改修や新規開発投資は2千億~3千億円程度と見込まれている。矢野経済研究所はマイナンバー関連のITニーズとして、以下の5分野があると分析している。
①政府系中核システム=中央政府と自治体を結び、制度の運用を支える
②自治体の業務システム=住民記録、税、社会保障業務に関わる基幹系システム
③そのほか政府系システム=国税など
④企業の人事系システム=従業員の個人番号管理や所定の手続きを行う
⑤将来の利用拡大、官民連携、民間利用に関係するシステム

マイナンバー制度は、既存の制度や手続きを置き換える「スモールスタート」を想定する。施行から3年をめどに利用範囲の拡大を検討し、必要な措置を講じるとしている。

政府が新しい国家IT戦略と位置づける「世界最先端IT国家創造宣言」でもマイナンバーは取り上げられている。

日本がIT先進国を目指すなら、官民の連携による利用拡大は不可欠だろう。例えば、IT先進国として知られるスウェーデンでは行政手続きはもちろん、レンタルビデオの貸し出し、賃貸住宅の契約などの民間取引でも利用される。日本での利用が3分野にとどまるなら、せっかくの制度も宝の持ち腐れとなりかねない。

一方、プライバシー保護の観点から多くの課題も指摘される。法律により、個人番号を含む個人情報(特定個人情報)は厳格な取り扱いが求められる。法の規定によるものを除くと、収集や保管、ファイル作成、第三者への目的外提供は原則として禁じられる。情報漏えいにも厳しい罰則を定めた。

現在のところ、医療や金融などの分野で民間活用が検討されている。社会インフラとして確立し、国民生活の利便性向上につながることが期待される。

株式会社共同通信社「Kyodo Weekly」2014年11月3日号掲載