【中小企業】起業の現状と課題

2015年2月
理事研究員 大仲 均

少子高齢化の進展、産業構造の変化に伴い、日本国内の中小企業の数は年々減少を続けている。企業数、事業所数ともに国内の99%以上を占める中小企業が市場から退出することは、日本経済の失速にもつながる。起業の活性化は、この現状を打開する一つの策である。

自民党の日本経済再生本部が昨年発表した日本再生ビジョンは、柱の一つとして「起業大国№1の実現」を掲げており、いくつかの政策を打ち出した。大企業のベンチャー調達促進、M&Aの促進、政府・自治体におけるベンチャー調達、キャリア教育・起業家教育の推進、起業のセーフティーネットの充実、関連特区の設置、新しい法人形態の法制化などである。

2014年版中小企業白書によると、起業希望者は1997年以降減少傾向にある。特に02年以降の減少が著しく、大きな問題といえる。近年、女性の起業希望者の割合は79年以降で最も高くなっているが、起業家における女性の割合は最も低い。年齢別では、若者の起業希望者と起業家の割合が減少している。その一方、60歳以上の割合は年々高まっている。シニア層は社会経験、自己資金などの面で、起業する上での環境が若者より恵まれているのであろう。

さらに、日本と欧米諸国の開廃業率を比較すると、日本の開業率および廃業率は、欧米の半分またはそれ以下となっている。日本では産業の「新陳代謝」が進んでいない。安定を求めて企業への就職を望む傾向や、そもそも起業を職業の選択肢として認識していないなど、起業が少ない原因は多い。

しかし、ここでは特に二つの視点から述べておきたい。まず事業者収入と被雇用者収入との関係である。70年代初めから、被雇用者に対する事業者の収入比率は低下を続けている。つまり、リスクをとって自ら事業を営む収入よりも、被雇用者として得る収入のほうが大きいのである。ここに、開業率が低いことの原因の一つが潜んでいる。

次に、創業後の事業者の事業継続割合、つまり企業生存率が低い点である。一度やる気を持って起業したものの、断念せざるを得ない事業者は多い。国の支援でも、起業を後押しするものは多く見受けられるが、「再チャレンジ支援融資」のような復活型起業を支援する取り組みは、まだ少ないように思える。

起業には多くの困難を伴うが、それを成し遂げることができれば、起業家や従業員、およびその家族の生活を支えることができ、地域の活性化や社会貢献にもつながる。起業家自身にとっても、国にとっても、起業することの意義は非常に大きい。投資家が経営に関与する「ハンズオン」での支援や、起業意識醸成のための、より一層の取り組みが望まれる。

株式会社共同通信社「Kyodo Weekly」2015年1月19日号掲載