【食文化】和食の国際競争力

2015年3月
理事研究員 加藤 肇

海、山、川の豊かな自然に恵まれた日本は、それぞれの地域に根差した多様な食材が用いられ、素材の味わいを生かす調理技術や調理道具が発達している。茶道、華道、仏教などの伝統と文化が京料理に代表される日本料理を発展させ、2013年12月にユネスコの無形文化遺産に“和食”が登録された。

一汁三菜を基本とする日本の食事スタイルは理想的な栄養バランスといわれる。だし(うま味)を上手に使うことで動物性油脂の少ない食生活を実現し、日本人の長寿、肥満防止に役立っている。すしに代表される和食は欧米でも人気を呼んでいる。

食事の場で、自然の美しさや四季の移ろいを表現することも和食の特徴といえる。季節の花や葉などで料理を飾り付けたり、季節に合った調度品や器を利用して季節感を楽しむ。

日本の食文化は年中行事と密接に関わって育まれてきた。自然の恵みである「食」を分け合い、食の時間を共にすることで、家族や地域の絆を深めてきた。日本の食文化“和食”は、日本を語る上で不可欠なものとなっている。

国税庁の「平成25年酒類の輸出動向について」によると、13年の酒類の輸出金額は251億円となり、現在の品目分類で比較可能な1988年以降で最高を記録した。10年前(2003年)の110億円から約2.3倍の増加だ。特に清酒は03年の39億円が13年には105億円まで伸び、約2.7倍となっている。酒類全体の伸び率は、11年が対前年比106.6%、12年は108.5%にとどまったが、13年は121.6%と高い伸びを示した。

13年の輸出金額を国(地域)別に見ると、米国、韓国、台湾の順だ。上位3カ国(地域)の輸出金額の対前年比は米国(126.9%)、韓国(122.5%)、台湾(125.5%)と堅調に増えている。4~10位グループでは、フランス(141.9%)、英国(141.5%)、ロシア(154.7%)が高い伸びを示した。

13年の清酒輸出金額は対前年比117.6%となり、北米(米国、カナダ)、および東アジア(香港、韓国、台湾、中国)が堅調だった。14年も日本酒の輸出は順調に拡大しており、米国、韓国、台湾、香港などがリードする形で欧州やアジア向けが拡大している。

発展途上国の経済成長やフードチェーンの拡大により、食のグローバル化は世界的に進行しつつある。フレンチやイタリアンに代表される欧米の食文化とともに“和食”は健康的で安全な“食”として世界的に支持されている。

“モノづくりニッポン”の輸出産業としては、自動車や電子部品など先端工業製品が一番に思い浮かぶ。その一方で日本の食文化と切り離せない清酒が、欧米先進国や、中間層が育つアジアで競争力を高めている。まだ本格展開には至っていないが、職人の手作りによる和菓子や、みそ・しょうゆなどの発酵食品が“和食”と共に輸出産業になる日が間もなく訪れよう。

品質へのこだわりや高い安全性に裏打ちされた“和食”が、国際競争力をつけて世界を制覇することも夢ではない。

株式会社共同通信社「Kyodo Weekly」2015年2月16日号掲載