2024年の代替タンパク質(植物由来肉、植物由来シーフード、植物由来卵、培養肉、培養シーフード、植物細胞培養、食用昆虫タンパク計)世界市場規模は5,723億3,000万円
~持続可能な食料生産に寄与、食料安全保障の面からも中長期的な必要性高まる~
1.市場概況
2024年の代替タンパク質の世界市場規模(植物由来肉、植物由来シーフード、植物由来卵、培養肉、培養シーフード、植物細胞培養食品、昆虫タンパク計)は、メーカー出荷金額ベースで、5,723 億3,000万円と推計した。
世界的な人口増加を背景に、食肉需要は今後も拡大が見込まれている。一方で、畜産由来の温室効果ガス排出や、飼料・水資源の大量消費といった環境負荷の大きさが課題として指摘されており、将来的に従来の動物性食肉だけで世界の需要を賄うことが難しくなる可能性が高まっている。さらに、地政学リスクの高まりによる食料供給の不安定化や価格高騰が顕在化し、食料安全保障の強化が世界的なテーマとなっている。
こうした状況を背景に、豆類や野菜などを原料とする植物由来肉、動物細胞を培養して製造する培養肉、さらには昆虫由来タンパク質など、代替タンパク質への関心は継続している。加えて、魚介類など水産資源の持続可能な利用という観点から、植物由来シーフードや培養シーフードの研究開発も進展している。
近年ではさらに、持続可能な食料生産技術の広がりとして、植物由来卵、植物細胞培養によるコーヒーやカカオなど、新たなカテゴリーの開発も注目を集めている。
2.注目トピック
植物由来肉・植物由来シーフード市場 ~持続可能性に配慮した食料生産への関心は継続~
植物由来食品の中でも、植物を主原料とする代替肉市場は、環境負荷の低減や食の多様化への対応といった観点から、引き続き注目を集めている。畜産と比較して水の使用量や温室効果ガスの排出を抑えられるといった持続可能性の高さに加え、世界的な人口増加による食料需要の拡大、健康志向や食の多様化などが市場の拡大要因と考える。
植物由来肉、植物由来シーフードの市場拡大は欧米で先行したが、日本国内でも2010年代後半から「代替肉」が注目され始めた。食味の向上に加え、各国の大手小売店や世界的な外食チェーンなどへ販路が広がり、メディアへの露出増加や、小売向け新製品の発売や品揃えの拡充などが図られたことから広く消費者の興味を引いた。
さらに、環境問題・気候の温暖化対策、動物福祉などに対する社会意識の醸成が、消費拡大の追い風となってきた。特に若年層では、ヴィーガンやベジタリアンなど、食の多様化が拡大傾向にある。こうした消費者動向を受け、ここ数年で新しく発売された植物由来の代替タンパク製品は、肉代替、シーフード代替、卵代替、乳製品代替など多岐にわたっている。
一方で、2025 年現在の市場環境は落ち着く傾向にあるものの、近年では気候変動など環境問題が年々深刻化しており、持続可能性に配慮した食料生産への関心が高まっている。なお植物由来肉では、味や食感の改良、大豆特有の匂いや風味を抑えることで、より肉のような味や香りを再現するマスキング技術などが用いられ、食味の向上が図られてきた。日本市場でも、植物由来肉に植物由来のだしや調味料を組み合わせることで、風味や食べ応えが向上し、参入各社は製品全体としての満足度を高めるため、味やメニュー提案の工夫に取り組んでいる。
3.将来展望
畜産物の価格高騰については、食肉の価格が高騰する「ミートショック」、卵の価格が高騰する「エッグショック」などが大きな問題となってきた。ミートショックの背景には、トウモロコシなど家畜飼料の価格上昇による生産コストの増加、伝染病の蔓延、円安、輸送コストの上昇、加工や流通における人手不足等、多くの要因が影響を与えているとみられる。エッグショックについても、鳥インフルエンザの流行や飼料価格の高騰、酷暑による採卵鶏の夏バテ等が要因とみられる。
畜産物供給量の減少による価格高騰は、家計だけではなく、飲食店等の業務用でも影響は大きいとみられる。
従来より人口増加等による将来的なタンパク質不足が懸念されてきたが、今後の食料供給の課題として、気候変動の激化により家畜の生産効率が低下することで、タンパク質不足が加速する可能性がある。さらに、水産物では海洋温暖化や海水温の上昇による魚の生息域の変化等で漁獲量減少が懸念されるため、供給量を補う必要が生じることが想定される。
従来の畜産、水産に加え、植物由来肉、植物由来シーフード、植物由来卵などのプラントベースフード、培養肉や培養シーフードなどの細胞性食品や細胞培養によるコーヒーやカカオ、昆虫タンパク質などが、持続可能な食料生産に資する可能性がある。
こうしたなか、2030年の代替タンパク質の世界市場規模(植物由来肉、植物由来シーフード、植物由来卵、培養肉、培養シーフード、植物細胞培養食品、昆虫タンパク計)は、メーカー出荷金額ベースで、1兆652億5,100万円を予測する。なお、この世界市場規模における昆虫タンパクは人間の食用を含み、飼料用を含まない。また、その後も拡大基調で推移し、2035年には5兆4,716億2,000万円、2040年には43兆2,497億6,700万円になるものと予測する。
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【ショートレポートに掲載されているオリジナル情報】Aパターン
培養肉・培養シーフード
昆虫由来タンパク質
調査要綱
2.調査対象: 代替タンパク質(植物由来肉、植物由来シーフード、植物由来卵、培養肉、培養シーフード、植物細胞培養食品、昆虫タンパク)参入事業者、関連団体等
3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談及び電話・e-mail等によるヒアリング調査、ならびに文献調査併用
<代替タンパク質(植物由来肉、植物由来シーフード、植物由来卵、培養肉、培養シーフード、植物細胞培養食品、昆虫タンパク)市場とは>
本調査における代替タンパク質市場は、植物由来肉製品、植物由来シーフード製品、植物由来卵製品、培養肉製品、培養シーフード製品、植物細胞培養食品、昆虫タンパク製品を対象とする。
植物由来肉、植物由来シーフードは、豆類や野菜などの原材料からタンパク質を抽出し、加熱や冷却、加圧などを行うことにより、肉様・魚介類様の食感に加工した食品を指す。
植物由来卵は植物性原材料を用いて、鶏卵の風味、食感、見た目を再現した食品を指す。
培養肉、培養シーフードは、動物、魚介類から採取した細胞を培養し、生成される食品を指す。なお、培養肉製品は2020年12月にシンガポールで世界初の上市が行われ、その後も米国、イスラエル、香港で承認が行われたが、その他の国・地域では研究開発段階である(英国ではペット向けで承認されたが、人間の食用では承認されていない)。培養シーフードについては、2025年6月に米国で承認が取得されたが、その他の国では研究開発段階である。
植物細胞培養食品は、植物細胞を培養して、コーヒーやカカオなどを生産するものを指す。
昆虫タンパク製品については、世界市場および日本市場では人間の食品向けを対象としており、飼料や肥料、ペットフードなどの用途を含まない。
<市場に含まれる商品・サービス>
代替タンパク質(植物由来肉、植物由来シーフード、植物由来卵、培養肉、培養シーフード、植物細胞培養食品、昆虫タンパク)製品
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