2040年度の国内風力発電市場規模は約1兆2,800億円に達すると予測
~着床式洋上風力発電の大幅な拡大と浮体式洋上風力発電の運転開始、陸上風力発電の増加によって市場規模は2025年度見通しの4倍以上に拡大予測~
1.市場概況
陸上風力については、FIT制度の認定を取得し新設された発電所が順次運転を開始することによって、累計導入容量は増加傾向である。加えて、古くなった発電所についてはリプレースが行われているが、4MW未満の比較的小規模の発電所はリプレースに適さないことから廃止される例も見られている。
洋上風力では、2025年度に比較的大規模の発電所の運転開始が予定されているほか、「海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律」(以下、再エネ海域利用法)やそれ以外に基づく海域占有によって、洋上風力発電所の案件形成が行われている。特に、再エネ海域利用法に基づく公募による比較的大規模な案件では、2028年から2030年までに運転開始することを予定しており、この期間に国内の洋上風力発電の導入容量は大きく増加すると考えられる。
また、中型風力については、FIT制度に移行認定を行って運転を開始した発電所の調達期間が2027年度にかけて終了することで、国内の累計導入容量は減少傾向である。小型風力については、2018年度以前に認定されたFIT制度による導入が継続しており、累計導入容量は増加傾向にある。
2.注目トピック
風力発電に関する政策動向
2025年2月に第7次エネルギー基本計画が閣議決定され、国内においては2040年度の風力発電による発電量は440億~960億kWh程度になる見通しとされた。2050年カーボンニュートラル達成を見据えた2040年度の姿に向け、洋上風力発電(浮体式も含む)に対して政府による案件形成目標、産業界による具体的な数値目標を記載した洋上風力ビジョンや、風力発電導入を促進する施策である再エネ海域利用法、FIT/FIP制度等の政策動向を整理した。
洋上・陸上を問わず、新設の50kW以上の風力発電所については、FIT制度の適用は2024年度(浮体式洋上風力発電所を除く)で終了しており、今後はFIP制度を前提とした運用が必要となる。FIP制度の下で発電事業者は供給先を自由に選択することが可能となるが、同時に発電量の計画値と実績値を一致させるバランシングの義務が課せられ、FIT制度と比較してより発電事業者としての役割が強く求められることとなる。
3.将来展望
2025年度の国内風力発電市場規模は2,935億円を見込む。風力発電の導入容量は2028年度頃までは主に陸上風力の増加によって拡大する見通しである。洋上風力発電は実証事業が既に行われているが、2028年度以降は着床式洋上風力発電所の運転が開始され、洋上風力発電の占める割合が増加し始める。その後、浮体式洋上風力発電の運転も開始され、2039年度には国内風力発電の導入容量のうち、洋上風力発電の割合が陸上風力発電を上回る見込みである。
こうしたことから、2040年度の風力発電市場規模は1兆2,848億円(2025年度比約438%)に達すると予測する。
※なお、2025年8月に洋上風力発電の落札事業者の撤退が公表された案件については、事業者の再公募が行われて予定通りに運転開始することを前提として、推計している。
また、本調査では、立地別[洋上風力(着床式)、洋上風力(浮体式)、陸上風力]に各年度の風力発電量を予測し、それぞれの発電量にLCOE(均等化発電原価)を乗じ合算して、風力発電市場規模(中型風力、小型風力は含まない)を算出した。
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【ショートレポートに掲載されているオリジナル情報】Aパターン
洋上風力発電の動向・課題
中型風力発電の動向
小型風力発電の動向
調査要綱
2.調査対象: 風力発電関連事業者(発電事業者・発電設備メーカー)
3.調査方法: 当社専門調査員による直接面談(オンライン含む)、ならびに文献調査併用
<風力発電市場とは>
本調査における風力発電市場は、立地別[洋上風力(着床)、洋上風力(浮体)、陸上風力]に各年度の発電量を予測し、それぞれの発電量にLCOE(均等化発電原価)を乗じ合算して、市場規模を算出した。
なお、洋上風力発電は海域に設置され、アクセスに船を要する風力発電設備を、陸上風力発電は定格出力1,000kW以上かつ、陸上に立地する風力発電設備を対象とし、中型風力発電(定格出力20kW以上1,000kW未満の風力発電設備)、小型風力発電(定格出力20kW未満の風力発電設備)は含まない。
<市場に含まれる商品・サービス>
洋上風力発電(着床式、浮体式)、陸上風力発電
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